うたかたじゃない日々

上村彰子 ライター/翻訳者。カルチャー、社会、教育問題をテーマに執筆活動中。著書:…

うたかたじゃない日々

上村彰子 ライター/翻訳者。カルチャー、社会、教育問題をテーマに執筆活動中。著書:『お騒がせモリッシーの人生講座』(イースト・プレス)、『大人は知らない 今ない仕事図鑑100』『世界で学ばれている性教育』(講談社)など。翻訳書:『モリッシー自伝』(イースト・プレス)。

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上村彰子の「うたかたじゃない日々」

うたかたとは、泡沫。水面に浮かぶあわ 。 はかなく消えやすいものの例えでもある、情緒ある日本語だ。フランスの作家ボリス・ヴィアンの「日々の泡」(L'Écume des jours)という小説タイトルを、「うたかたの日々」と最初に訳したのは伊東守男氏だろうか。素晴らしい翻訳だ。 日々、いろいろなことが起こる。素敵な音楽、本や映画、人。いろいろなものに会う。「うたかた」は素敵な言葉だけど、日々のいろいろな出会いや思いが、あわのように消えていってはもったいないと思った。 SNS

    • コロナ陽性と「高野さん」

      先々週、コロナで陽性となり、いろいろと予定は狂うわ、毎日変わる体調に戸惑い不安だわ、嗅覚障害や切り裂かれるような喉の痛みなど、今までなったことのない症状に驚いた。ネットでいろいろ調べてたら一時的な記憶障害も起こるという。それはないな、と思っていたらある人の名前がどうしても思い出せず、「これか?これなのか!?」と思った。 思い出す必要のない人の名前である。たぶん、もう死ぬまで会わない人だ。それなのにまったく思い出せないのが、死ぬほど気持ち悪い。 なぜこの人の存在を思い出した

      • 井上荒野「生皮」を読んで

        5月25日、朝日新聞の文芸時評で、文芸評論家の鴻巣友季子さんの書評を読んで、井上荒野『生皮』(朝日新聞出版)をすぐ買った。小説教室で起きた性暴行を描いた作品だ。興味を持ったのは、鴻巣さんが、被害者だけでなく、「暴行者自身にでさえ」感情移入する瞬間があった、「精神的な八つ裂きのような苦しさを伴なう読書だ」と書いていたからだ。 井上荒野自身が鴻巣さんにツイッターで「『共感した』って褒められると私は何かに負けた気がするのでwとても嬉しいです」とレスを返していた。井上さん、ご安心く

        • the原爆オナニーズ TAYLOWさん ドキュメンタリー映画『JUST ANOTHER』舞台挨拶 トーク全内容

          11月3日、the原爆オナニーズのドキュメンタリー映画『JUST ANOTHER』上映の後、名古屋より駆けつけたタイロウさんの舞台挨拶がありました。この昼13時からの回は、満員に。 自分の覚書のためにも、トーク全内容をまとめました。聞き手はスペースシャワーの、この映画のプロデューサーである近藤さんです。ふたりの息もばっちりでした。 大石監督の苦労とバンドにもたらした影響、この映画制作によってさらに活性化されたthe原爆オナニーズの現況、なぜこのバンドが稀有な存在なのかが改

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          【FRIDAYデジタル】the原爆オナニーズ『JUST ANOTHER』記事掲載

          2020年10月24日:the原爆オナニーズの映画『JUST ANOTHER』、東京での第一回目公開日当日、同時刻に、FRIDAYデジタルに私は書いたこの映画レビューが掲載。「迷える中年世代」に観てもらいたい一心で書いた記事。(この記事トップ写真は、HALさん撮影。記事の中で 実はこの記事、8月の終わりに『JUST ANOTHER』を試写で観て、どうしても、音楽好きや映画好き以外も目にするメジャー媒体でも情報を流でないものかと、各所に企画書を出し、FRIDAYデジタルさんに

          【FRIDAYデジタル】the原爆オナニーズ『JUST ANOTHER』記事掲載

          有明「有明ガーデン」

          2020年10月23日:「引きが強いね」とはよく言われるけど、それは運がいいということであって、わたしが強いのは運ではなくて会うべき人との出会いなんだけどな、てことはそれは運がいいってことだからあってるのかな、まあそう思いたいだけでいろいろ偶然かな、とか考えながら雨の中未来のような有明へ。そう考える、予期せぬ出会いがまたひとつあったからなんだけど。 で、有明ガーデン。オリンピックや、インバウンドや、いろんな未来を見越して大急ぎで作ったのに思った通りにいかなかった(今のところ

          有明「有明ガーデン」

          【StoryWriter】『JUST ANOTHER』大石規湖監督と私の対談記事掲載

          2020年10月23日:StoryWriterに、the原爆オナニーズの映画『JUST ANOTHER』大石規湖監督と私の対談記事が掲載されました。 監督のインタビューをとりにいったのに、終わるなり一緒に行ったStoryWriter運営の西澤さんに 「おもしろいんで上村さんの話も全部書いちゃってください」 と言われていきなり対談になってしまった💦 どゆことw 監督が撮ったこと、10代の私が聴いたこと、「今」を生きること…などなど(なぜかモリッシー話も)。 自分が書い

          【StoryWriter】『JUST ANOTHER』大石規湖監督と私の対談記事掲載

          大手町「M&C Cafe 丸の内オアゾ」

          今日は間違えずに大手町のアポに無事到着。丸善で仕事で使う本を買った後、カフェでランチしながら打ち合わせ。丸善と言えばハヤシライス。創業者早矢仕有的氏が考案して元祖と言われてるけど、日本各地に「元祖ハヤシライス」があって不思議。 小さい頃に日本橋丸善の屋上の小屋みたいなレストランでも食べたことあって、その時はピンとこなかったけど、今日は久々おいしかった。 濃厚さと甘さのバランスがいい感じ!ほぼ真っ黒。肉肉しくない(ほぼ液体)。そこが個人的に好み。

          大手町「M&C Cafe 丸の内オアゾ」

          大手町「立食い寿司 根室花まる 丸の内オアゾ店」

          信じられない。朝、打ち合わせに行ったらお相手がいらっしゃらず。。。あれー?と思ってスケジュール見たら、日にち一日間違えており呆然。 せっかく来たのにただでは帰りたくない、、とゾンビのように歩いてたら目の前にあらわれたのは「根室はなまる」の立ち食い!!8月にできたのは知ってたけど、ちょうど行列もないしこれは「入れ」というお告げでは…と勝手に解釈して朝からヤケ立ち食いしてきた。 根室はなまるは、15年くらい前の会社員時代に札幌出張で行って、北海道の回転寿司のクオリティーの高さ

          大手町「立食い寿司 根室花まる 丸の内オアゾ店」

          堺正章「さらば恋人」

          筒美京平氏逝去にあたり、テレビでずーっと筒美ソングがかかっていた。名曲は数あれど、my一番好きな歌謡曲歌手堺正章の「さらば恋人」がかかり、改めてメロディーも展開もすごいと思った。 https://m.youtube.com/watch?feature=youtu.be&v=rOggtqn0N_o 歌手としての堺正章を好きな理由は、声が一瞬細そうだし悪声ぽいのに、独特の色艶と深みがすごいとこ。張ってもいいし、俳優しながら戯れにぼそぼそドラマ挿入歌で歌うような歌でも味もだせる

          堺正章「さらば恋人」

          人形町「芳味亭 人形町本店」

          父の仕事関係でお世話になった真田広之似70代の元名編集者紳士が、私の訳した『モリッシー自伝』を読んでくれた。まったくモリッシーファンでもなく、読み進められるか不安だったそうだが、出てくる固有名詞に興味のある名前も多かったそうで、急にひきこまれて、まさかの読破してしまったそう。丁寧な感想のお手紙をもらって、文通のような感じになり、「コロナが落ち着いたらお会いしましょう」と言ってくれていた。コロナは落ち着いてないけど、その方の地元の人形町にお招きいただき、ランチをした。 連れて

          人形町「芳味亭 人形町本店」

          『JUST ANOTHER』~the 原爆オナニーズTAYLOW氏×大石監督対談

          「Bollocks」51号に、映画『JUST ANOTHER』公開を控えた原爆オナニーズTAYLOWさんと大石規湖監督対談が掲載されたとのことで購入。 編集部コメントで、「TAYLOW氏は未来から来た人」という推察があって笑ってしまった😆 私も10代の頃から大好き原爆オナニーズ。速すぎて早すぎて、常に未来人みたいな人TAYLOWさんが展開し続けて38年💥、稀有なバンド。 そのバンドのありのままの姿と生きるパンク哲学を、『JUST ANOTHER』で大石監督は、ノーギミッ

          『JUST ANOTHER』~the 原爆オナニーズTAYLOW氏×大石監督対談

          「戻り川心中」

          雨だからなんか本貸して、と言ったら息子が貸してくれた、連城三紀彦「戻り川心中」。2015年の「このミステリーがすごい」1位の名作ということで、すすめてくれた。すすめてくれた、というと気前よく聞こえるけど、ミステリー本コレクターの息子は、文庫本であろうと指紋や折れ、反り、角落ち、を気にしてくるので、読むのに緊張を強いられる。。 けれども読むなり、ミステリーうんぬん以前に日本語が美しすぎてどっぷり世界観に浸れてしまった。地の文章も、連城三紀彦が作中歌人に詠ませる短歌も、オールカ

          「ガチガチの世界をゆるめる」-「弱さを誇る」という新しい価値

          本日、私が取材した「ガチガチの世界をゆるめる」の著者、澤田智洋さんのインタビュー記事がFRIDAYデジタルに掲載された。 こちら、「百万年書房」から9月に発刊されたばかりの本だ。この澤田さんへのインタビュー依頼が、媒体出版社さん経由で百万年書房北尾さんから来た時に書いたメッセージがこちら ↓ 北尾さん おはようございます。このたびは!澤田さんのインタビュー担当させていただきありがとうございます!ご著書のゲラを読んで、おいおい泣いてしまいました。自分もイギリスで透明人間化し

          「ガチガチの世界をゆるめる」-「弱さを誇る」という新しい価値

          Tame Impala “The Slow Rush”

          昨日から、眠くて、だるくて、驚くほど何もする気がなくて。疲れがたまっているからか、気圧のせいか、考えてもよくわからないし、わかったところで「やる気」はやってこない。 そういう時どうするか、思い切りその沼に沈む。沈みの同伴に選んだのは、今年2月にリリースされたテーム・インパラのこのアルバム。 サイケデリックなトロ・イ・モワ、のようなサンダー・キャットのような気持ちのいいアルバム。日本盤の(大好きな)大鷹俊一さんの解説によるとこのアルバムでキーワードになっているのは「時」。

          Tame Impala “The Slow Rush”

          『アウェイデイズ』

          2020年9月9日:いよいよ来週10月16日に、新宿シネマカリテで公開。 1979年、ポストパンク時代のイギリスを舞台にした映画『アウェイデイズ』を試写で観てきた。毎週末、サッカースタジアムに通う労働者階級の北部の若者の物語がエコバニ、女医ディヴィジョン、ウルトラヴォックスなどのポストパンクにのって描かれる。まあ、あばれるあばれる。サッカー観に行ってるけど、「観に行って」なんか、いないだろ😆 「ここにいたくない」「このままじゃダメだ」という焦燥感、鬱屈をすべて野蛮なエクスト

          『アウェイデイズ』