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経営とダイバーシティの文脈について

「全社員が参加する会議でダイバーシティについて話していただけませんか。」

こんなお声がけをいただき、スローガン株式会社の全社会議でダイバーシティ&インクルージョン(D&I)についてお話させていただいた。

スローガンは、「人の可能性を引き出し 才能を最適に配置することで 新産業を創出し続ける。」をミッションに掲げ、主にこれから伸びていく成長分野への採用支援を行っている会社だ。GoodfindFASTGROWを運営している。

全社会議に向けて、D&Iに取り組もうしている社員の皆さんとも事前に打ち合わせをして準備した。

「しなければいけない」ではなく

スローガンは、ブランド力や知名度が採用の成否を決める採用市場における歪みに対してサービスを提供してきた。加えて、若い経営人材を増やすことを通じて、経営層におけるダイバーシティも推進していくことを経営方針に掲げている。

スローガン株式会社2023年2月期 第2四半期決算説明資料から引用

どのようにしたら、私の視点から、この文脈の肌感を届けることができるだろう。

「D&Iを推進しなければいけない」という表面的なメッセージとして伝わることは避けたいと思った。さらに、「経営層におけるダイバーシティ」という、人によっては遠いであろうメッセージに質感を持たせられたらいいなと思った。

こういった議論を経て、自分のエピソードを踏まえながら、素直にお話しすることにさせてもらった。

プレゼンは、以下のように構成した。

1.D&Iとは
(エピソード)D&Iに取り組む前、ゴリゴリの成果史上主義だった
2.プロダクトインクルージョンについて
(エピソード)D&Iを勉強・実践して感動したこと
3.経営とD&Iの関係について
4.今日からできること

お伝えしたエピソードは2つだ。

違和感を感じていない自分に気づくことの難しさ

私は、「ベンチャー企業における意思決定層の多様化」をテーマにしたスポンサーシップ・コミュニティという任意団体を運営している。コミュニティを立ち上げるきっかけとなったのは、意思決定層に女性が少ないことに違和感を持つようになったからだ。

しかし、つい最近まで、意思決定層に多様性がないことに違和感をもっていなかった。2014年から経営会議や取締役会に参加するようになってから、女性が1人しかいない環境に長らくいたが、それは当たり前のことだと思っていた。それまで見てきた景色がそうであったし、その同質性の高い価値観にフィットしてまっしぐらに仕事をしてきたこともあって、違和感はなかった。

しかしダイバーシティを勉強するようになり、いかに歪んだ構造の中で機会を得てきたか。いかに、それ以外のさまざまをスルーしてきたかを痛感させられた。

「経営層がダイバーシティの必要性を理解していない」という声をよく耳にするが、それもそのはずで、経営層こそダイバーシティの文脈から排除されている同質性が高い集団なのだ。

届けられるかもしれないという実感

もうひとつ、様々な問いをいただく中で、特に業績の文脈でなぜダイバーシティに取り組む必要があるかを考え続けてかた。新たな価値創出にどうつながるのだろう。

製品開発プロセスにどのようにダイバーシティを組み込み、インクルーシブなプロダクトをつくっていけるか、これを"プロダクトインクルージョン"と呼ぶ。

スローガン社向け全社会議資料から抜粋

私は、みんなのコードというNPOでも働いている。公教育におけるプログラミング教育を推進する団体であるが、テクノロジー領域もまた、経営と同じように多様性に課題を抱える分野だ。

みんなのコードでは、テクノロジー領域におけるダイバーシティの課題が共有されている。これまで男性中心の開発プロセスだったが(そもそもこの状況に違和感を持っていなかった)、新しいプロダクトや提案を作る際に、そのプロセスやチーム編成を点検するようになった。

教材開発を通じたプロダクト・インクルージョンの実践については、以下の記事で取り上げていただいている。

経営とD&Iの関係について

私は、経営とD&Iの文脈を以下のように整理している。

https://www.slideshare.net/AkikoSuginohara/ss-250878509

違和感を感じない自分に気づく必要性に気づいたこと、プロダクト・インクルージョンの開発プロセスを通じて社会課題と多様性の関係が腹落ちしたことから、従来の経営サイクルに、D&Iによる価値創造のサイクルを積み重ねられることを実感値として持つことができている。

そして、これは、やろうと思えば出来ることであり、スローガンが取り組む採用やキャリアのマーケットにまつわる歪みに気づくことが、新たな価値提供につながっていく。その可能性を信じている。

プレゼンは、今日からできることとして以下の3点にまとめた。

1. 違和感を感じない自分に違和感を持つこと
2. 構造を知ろうとすること
3. プロダクト・インクルージョンの視点

これは、私が意識し続けたいことでもある。

個人としても、2023年は、プロダクト・インクルージョンの観点でのトライをもっと増やしていきたい。


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