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それを優しさと呼べず

短気は損気という言葉がある。
短気なので、これがいかに的を得た金言か身を持って知っている。昔の人はいいことを言うなと思う。

短気ではない方のためにご説明させていただくと、
私は沸点がエタノールのように低くて、相手のちょっとした言葉遣いに反応してモヤモヤしてキレたり、悪意を疑ったりする。火のないところに煙を見出しまくっている。

最悪なのは、そういうモヤモヤを腹の中に収めておけないところだ。「今、口に出して言っておかないとこのモヤモヤは一生心に残る」と思って、「ねえ、それってさ…」と選びぬいた意地の悪い言葉で言い返してしまう。ほんとは、ちょっと我慢できればいずれ何とも思わなくなると分かっているのに。

言った直後0コンマ2秒くらいはスッキリするんだけど、すぐにさらなるモヤモヤに襲われ、やりとりがこじれ、最終的に友達が減る。本当に無駄が多く、損ばかりしている。

私の、数え切れないほどある怒りのスイッチの一つが「憐れみ」である。そこに、お金の問題が絡むと最悪の結果を招く。

そう、例えば。
コロナウイルスの影響で、勤務先の企業が経営困難になって、会社の社長に「もうあなたを雇い続けることができない」と言われたとき。
仕方ない、と開き直って歯を食いしばり転職活動に身を投じているとき。
「最近どう?」と、友達から―きちんとした会社に就職した正社員の友達から―聞かれて、転職中で…とLINEを返したとき。
「大丈夫?家賃払えてる?もしもの時はうちに来てね、実家に帰るより近いでしょ?祖父母がお米を余らせてるから送ろうか?」と、心配されたときに。
私の怒りはこの程度で爆発する。情けない、恥ずかしい。
それでも、怒りは本物だ。心は焦土と化し、彼女との良い思い出も全て記憶から消えて、私は呪詛をつぶやき、感じの悪いことを言う。

馬鹿にするな。誰が、あんたなんかに、金の世話になるか、食事の世話になるものか。あんたはいつからそんなに偉くなったんだ。私と変わらないくせに。私は決してあんたより劣っていたりしない。

…とはさすがに言わない。でも、「そんなことのために連絡したんじゃないから」と言って、やり取りを終わらせた。多分私から彼女に連絡することは二度とないだろう。こうして、また友達がいなくなる。短気ゆえに。心が狭いゆえに。

多分、心の広い人は、もちろん努力やセルフコントロールによるものもあるけれど、ある程度何か、揺るぎない自信や拠り所があるのではないかと思う。それが、自分の中のものであれ、外のものであれ。私も、例えば実家が油田を持ってたら、文無しのホームレス扱いをされても「でも、実家が油田持ってるからな…」と流せたと思う。

性根が曲がっている人は、拠り所を失った人なのではないか。人の優しさを悪意と取り違えてしまうのは、余裕がないからではないか。かけられた言葉を自分の中でこねくり回し、差し伸べられた手を優しさと呼べないまま、取り返しがつかないところまで来てしまったのでは。

何であれ、自分で自分をなんとかしなくてはいけない。いい大人だから。

#日記
#セルフマネジメント
#アンガーマネジメント
#短気

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