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建築探訪|京都で窯に魅了される

河井寛次郎記念館


京都散策は混み合うバスを避けて、いつも自転車を借りて行きたい場所へ京都中を走り回っています。おかげでだいぶ京都の道も覚えました。自転車だと少しだけ住民目線を味わえて楽しいですし、気になったお店にもすぐに立ち寄れて利便性高くて運動にもなります。この時は東福寺から北上してこの記念館へやってきました。『河井寛次郎記念館』です。

河井寛次郎記念館
京都市東山区五条坂鐘鋳町569
10:00~17:00(入館受付 16:30まで)
月曜日(祝日は開館、翌日休館)
夏期休館・冬期休館あり
大人900円

河井寛次郎(1890~1966年 陶芸家)は明治の生まれです。どうも明治生まれの人には物事の本質に沿って生きる方が多い気がしますが、河井寛次郎も残した言葉から、その達観した姿勢と物事の本質を見抜く力、曲がったことが嫌いな性格などが伝わってきます。
京都の清水寺のそば、東山五条の民家の並びに記念館はあります。河井寛次郎の自宅であり仕事場、サロンとしても使っていた建物を記念館として一般に公開されています。今も子孫の方々に大切守られている記念館です。ほんとに取り壊さないで保存して頂きありがとうございます。

京都はどこでも道路から建物へ入ると雰囲気が変わりますが、この記念館もガラッと変わります。外観からはこんなに広い敷地とはうかがえず、こんなに立派な登り窯があるとも思えない。京都の面白さ。建築的にもとても面白いです。

右手レンタサイクルで京都市内を駆け回る。駐輪場ないのでここに停めていいそうです。
ここの雰囲気に一番マッチしている看板猫
おおらかで置いてあるものすべてが優しさを持っている。

住居スペースはおおらかで柔らかい雰囲気です。置かれているものがいいんです。愛されたモノたちというのが伝わってきます。そして吹抜があります。この時代の建物でこの1・2階がこんな風に見えるのは珍しい。住宅棟はとても優しく、あたたかな空気で満たされています。
たくさんの歴史的な建物を巡ってみて感じることがあります。それは住い手の意志は空間に染み込むものだなぁということです。悩んだ人の家はやはりどこか陰影にその雰囲気を持ち。人生を謳歌した人の家は総じて愛着に満ちていて、虚栄に生きた人は今も変わらずに見世物的な建物となる。記念館の空間は楽しいものだと思います。自然と顔がほころびます。きっと河井寛次郎さんは魅力的な方だったんでしょうね。

吹抜を囲む2階スペースが面白い


ただ、その住居棟を出て奥へ進むと、ちょっと雰囲気が変わります。静寂で凛とした空気を感じると、そこに登り窯がどんっと現れました。

すごい存在感です
炎と土を感じる
ところどころで試作釉薬が光を放つ
2室目
縄文土器を見るような原始性を感じる
遺跡のような美しさ
溶岩を見るような変質跡

この奥行15m幅4.8mのレンガ造りの登り窯を見たのは2019年です。もう5年ほども前の旅のことです。でも今もありありと思い出せるくらい強烈な体験でした。主役の陶芸作品ではなく、生み出していた登り窯がこんなにも美しく原始的で力強い。なんだか「もの派」の芸術作品を見たような感覚が今も残っています。遺跡がそうであるように、人工物でありながら年月によりそれ自体が自然へと還元されて、その境が曖昧化する魅力を見たように思います。
この窯は8室あり「鐘溪窯」というのだそうです。文化遺産になっています。当時は地域の共同窯で月1回火を入れていたとのことで、2室目が河井寛次郎が使用した窯で今も中に入れます。初めて登り窯の中に入りましたが、外の印象からするとやはり狭い、炎の通り道もこれでよく上まで火が回るものだと思いました。すごく貴重な体験でした。
この窯を見てから、河井寛次郎の作品への感じ方が変わりました。うまくいいにくいですが躍動感のようなものを感じるようになりました。きっと窯の力強さのイメージが重なるのだと思います。

京都の奥深さ


街の一角に外からはうかがい知れず、ひっそりと陶工の暮らしと情熱の跡が残っていることに京都の奥深さを感じますね。「わかりやすくない」というのも京都の魅力の一つかなと思います。こちらが歴史や文化について知識が少しつくと「実はこんなところもあるよ」という風に扉が開く。そんな京都特有の奥深さを味わうのも京都への旅の魅力だと思います。
コロナもあって間があきましたが、京都市京セラ美術館もまだ行っていないので久しぶりに出かけたくなりました。
読んでいただきありがとうございます。







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