見出し画像

みんな札幌においでよ

2023/07/09

 よく晴れて暑い日だった。
 文学フリマ札幌に行った。

 先日行われた文学フリマ東京が過去最高の参加者1万人超で、それは喜ばしいことだけど、その規模になると、もともと人気のサークルにますますお客さんが集まるだけでそうじゃない書き手のブースは埋もれてしまい、気軽に参加して誰もが楽しめるイベントではなくなってしまったという声も聞かれます。難しいよね。そういう声にはすごく共感する。でも盛況じゃないと続かないし、シーンも変えられないし。
 根本的な解決策ではないけど、私は提案したい。
 みんな札幌においでよ。
 広々とした会場で、ひとつひとつのブースをじっくりと見て回れるよ。

 東京の文フリ(いちど行ったことがある)と比べるとのんびりした雰囲気だけど、それでも、何百人もの人が何か書いて、個人や団体で本を作って、誰かに読んでもらいたいと願っていることによる、磁力みたいなものは漂っているように感じる。
 中には、私より才能がある人もいくらでもいるに違いない。それを感じると背筋が伸びる。凍る、かもしれない。
 がんばらないといけないな、と思う。
 頼まれなくても勝手にやる人がいちばん強いのだ。

 夜は中華料理のお店でビールを飲んだ。


2023/07/10

 吉田秋生『詩歌川百景』3巻を読む。
『海街diary』に引き続き、地方の温泉街に住まう人々の複雑な人間関係をゆっくりと紐解いていく物語。大量の巧みな台詞で「人生のすべて」が描かれていて、毎巻読むたびに、感嘆と、充実した疲労のため息がこぼれる。
 キャリア数十年のレジェンドが、エンタテイメントの最前線にいる。
 マンガ以上に小説がそうかもしれない。
 そのジャンルのいちばんのベテランが、すごい量の仕事をしておられて内容も素晴らしいと、いち読者としては嬉しくて幸せだけど、後進の作家としては困ってしまうのだ。
 がんばらないといけないな、と思う。(2度め)

 修理に出していた革のサンダルが戻ってきた。
 バックストラップの金具が壊れたのを取り替え、すり減った踵も張り直してもらった。
 NAOTというイスラエルのブランドのもので、上品でかわいい造りだけど、ガンガン日常遣いできるカジュアルさも備えている。これまであまり靴を大事に履き込むということがなかったので、ひとつの靴とじっくりつき合っていくのは楽しい。
 そんなふうに、折に触れて読み返す、長くつき合ってもらえる本を書けたらいいと思う。
 がんばらないと(3回め)

この記事が参加している募集

文学フリマ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?