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大学院のこと(1)(進学・留学体験談)

大学院とは何か。海外留学にメリットはあるのか。行く価値はあるのか、ないのか。どれくらいお金がかかり、どんな日々が待っているのか。

私は2017年に香港の大学院を卒業した。9ヶ月という短い在学期間だったが、ジャーナリズムを専攻し修士課程を修了した。結論から言えば、修士課程に進んだことは時間と金のムダだったが、留学生活全体で言えば、まったくのムダだったとも言えない程度に得たものもあった。ただ、私の大学院に対するイメージは、入学前と卒業後とでは、ほぼ180度変化した。

大学院に進むかどうかを迷っている方や、行くつもりはないけれどどんなところか知りたいという方、また、大学院へ進学した経験から、私と同じように何かがオカシイのではないかと感じた(感じている)方に向けて、私が大学院で体験したことを、思い出せる限り書き記しておくことにした。

ここで取り上げる「香港大学(略称:港大)」という大学は、日本では無名の大学だ(日本国内で港大のOBに出会ったことは一度もなく、またそのような大学の存在を聞いたことがあるという人にも出会ったことはない)が、中国や台湾、シンガポールなどの中華圏では、そのOB資格が絶大な威力を持つ、と言われる歴史ある学校の一つである。

ちなみに、最新の世界大学ランキング(THE World University Ranking 2023)で香港大学は31位。日本では東京大学がトップで39位にランクインしている。

世界大学ランキングのスコアリング基準には偏りがあり、この順位で大学のレベルが分かるわけではないものの、ひとまず香港大学が、それなりの体をなした学術機関であることは掴んでいただけたかと思う。しかし、そのような名門と言われる大学の修士課程に進学し、私は驚くほどお粗末な体験をした。

既に述べた通り、私は大学院に行って時間と金をドブに捨てたが、人によっては、費用および時間対効果に優れたプログラムだったと、私とは真逆の感想を持った人もいた。卒業生の満足度は人それぞれであり、得たものや失ったもの、卒業後の進路もそれぞれに違ったが、そもそもの違いは入学前の進学理由にあったのではないか、という事実を私は入学後に気づかされることとなった。

では大学院へはどんな目的を持って進学すればいいのか。向いている人とはどんな人なのか。満足度が高かった人とそうでなかった人とでは、何が違っていたのか。

私は今、その問いに答えることができる。

ただし、私に示すことのできる答えは、あくまで香港大学のジャーナリズム専攻の修士課程に限られており、他大学や他学部のことは分からないという点をあらかじめ断っておきたい。ある香港人の知り合いの言葉を借りれば、私の進学先は、

Good school, Wrong subject

であり、私はただ進むべき学科を間違えただけだったのかもしれない。
問題は専攻にあったのか、大学にあったのか、香港という地域柄によるものなのか、それとも、日本を含む世界の多くの大学で、同じような現象が同じような理由で起きているのか。それを判断する材料は私にはない。それでも、そのような”間違った” 学科を抱え込むことになった香港大学の現状とそこでの実体験を、私はここに共有しておきたいと思う。


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