アキノヒ

テニスのデータ分析の記事を書きます。趣味です。

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最近の記事

ATP2020シーズン序盤の選手データ振り返り

コロナウイルス流行に伴うツアー中断が長引いているので、いったんここまでの大会のデータを整理し、シーズン序盤の選手の調子を測ってみました。 選手ごとに去年との開きが大きいスタッツ数種類を紹介したうえで、講評を加えています。 ジョコビッチ 1stサーブの強化とネットプレーの向上でラリーを短縮。省エネ志向でポイントを短くしようという意図が感じられますね。2ndサーブは速くなっただけでポイント獲得には結びついていない模様(というか逆効果では?)。 短いポイントが増えて集中する

    • スタッツでわかるATPツアーの勝敗の分かれ目

      前回の記事ではどの選手がどんな分野に秀でているのかを紹介しましたが、その元となったのはもちろん試合ごとのスタッツです。今回はその試合ごとのデータを選手別ではなく、勝者と敗者ごとにまとめてを比較することで、試合に勝つために必要な条件を探りました。 イメージとしては、IBMスラムトラッカーの“Keys to the Match”と似たものを作る試みです。 集計対象利用したデータは前回同様、2019シーズンのGSとマスターズ、ファイナルズのうち、詳細なスタッツが収集できた計87

      • ATP2019シーズン スタッツ賞

        2019年シーズンが終わったので、今年1年間かき集めたデータをもとに、ATPツアーレベルの選手たちがどんなパフォーマンスだったのかを発表します。 集計対象集計対象は今季GS4大会とマスターズ9大会のうち、詳細なデータが収集できた計875試合。いずれの大会も棄権試合は除外した。ランキング対象選手は、集計対象の試合が7試合以上ある84人。7試合を基準としたのは、GS4+MS9の13大会中、平均して過半数で1試合以上戦ったことになるため。各大会の集計対象試合は以下のとおり。 グ

        • 錦織に欲しい1stサーブの精度はライン際何cm?

          《結論の先取り》 錦織が1stサーブを収めるべきライン際の範囲 - 最低限:70cm - 推奨:50cm - 理想:30cm 肘の手術を行い、錦織にとっての2019年シーズンは終わりを迎えました。もちろん残念な出来事ではあるものの、その分ほかの選手よりも早く今季分のデータが確定したため、ツアーの通常シーズン終了を待たずに分析を始められます。 データには色々なものがありますが、今回は錦織が勝つために必要なサーブの精度はどの程度なのか、具体的な水準を探りました。 1stサー

        ATP2020シーズン序盤の選手データ振り返り

          荒れすさんだズベレフはダブルフォルトの夢を見るか?

          2019年、突如としてダブルフォルト界に現れた新星、A. ズベレフ。重圧下での崩壊に定評のあるディミ豆腐、経験に裏打ちされたDF劇を披露するベルダフォスコ、大型新人ダフォバロフなど錚々たる顔ぶれを横目に、瞬く間に頂点へと駆け上がった。 放たれたボールがどこへ飛び去るか本人にすら定かではない不確実性、そしてそれが常態化するという再現性。二つの特性を兼ね備えた2ndサーブのフォルト率は今季ツアー・ワーストワンに輝き、4回に1回に近い頻度でDFを記録している(2ndサーブあたりD

          荒れすさんだズベレフはダブルフォルトの夢を見るか?

          グランドスラムのデータでわかるサーフェス特性 (4)ラリーとエラー編

          Q. 芝ではウィナーが決まりやすいから、その分エラーは少ないよね? A. そんなことはない。ウィナーは変わらず、UEが減ってFEが増える。 これまで過去3回の記事で - サーブが最も強力になるのは全豪で、芝で特に有効なわけではない - ネットプレーの成功率は芝でもクレーでも一定 - ウィナーの頻度はサーフェスの種類に左右されない ということを示してきました。なら、エラーはどうなのか? という検証が今回のテーマです。 UE頻度はサーフェスによってバラバラ大会ごとのエラ

          グランドスラムのデータでわかるサーフェス特性 (4)ラリーとエラー編

          グランドスラムのデータでわかるサーフェス特性 (3)ラリーとウィナー編

          Q. クレーではウィナーが決まりにくいって本当? A. 半分はうそ。半分は本当。 クレーはラリーが続きやすいからウィナーがなかなか決まらない。だから粘り強さが大切だ。――クレーシーズンになるとよく聞く言葉です。 でも、それって本当でしょうか? ウィナーの数を数えてデータに基づいて言っているのか、それとも試合を観ている中での印象にすぎないのか……。もし印象だけでそう決めているとしたら、この記事が答えになるでしょう。 「決まりにくさ」は2つの意味がある「ウィナーが決まりに

          グランドスラムのデータでわかるサーフェス特性 (3)ラリーとウィナー編

          グランドスラムのデータでわかるサーフェス特性 (2)ネットプレー編

          Q. 芝ではネットプレーが有効って本当? A. うそ。1回あたりの成功率はどのサーフェスでも同じ。 芝ではネットプレーを取り入れる選手が増え、サーブ&ボレーを目にする機会もハードやクレーに比べて明らかに多いですが、本当に有効なのでしょうか? もしかしたら「芝と言えばネットプレー」と思い込んでいるだけで、実はほかのサーフェスと変わらない(あるいは逆に低い)かもしれません。 何をもって有効と呼ぶか?有効かどうかを調べるには、そもそも何をもって「有効」と呼ぶのかを決める必要が

          グランドスラムのデータでわかるサーフェス特性 (2)ネットプレー編

          グランドスラムのデータでわかるサーフェス特性 まとめ

          この記事で本当かどうかわかること - 芝ではサーブが強くなる? - 芝ではネットプレーが有効? - クレーではウィナーが決まりにくい? - 芝ではウィナーが決まりやすい? 全米も終わり今年の四大大会のデータが揃ったので、それらを比較することで、各大会のサーフェスがどんな特徴を持つのかを検証しました。利用したデータは、各大会公式スタッツのうち、ちゃんとしたデータがある466試合。各試合には勝者と敗者がいるので、選手数はのべ932人に上ります。 今回はトピック数が多いので、複

          グランドスラムのデータでわかるサーフェス特性 まとめ

          グランドスラムのデータでわかるサーフェス特性 (1)サーブ編

          Q. 芝ではサーブがより有効になるって本当? A. うそ。ハードの全豪と同等以下。 芝ではサーブの有効性が高まり、エースも決まりやすくなる――。テレビ中継で解説者も口にしますが、今年のグランドスラムのデータを比較しても、ウィンブルドンにそのような事実は確認できません。 どんな方法で検証するの?エースに関しては調べるのは簡単で、サービスポイントに占めるエースの割合(エース率)がウィンブルドンだけ他の3大会より高ければ本当です。 「サーブの有効性」というのは曖昧な表現です

          グランドスラムのデータでわかるサーフェス特性 (1)サーブ編

          ナダルの全米優勝は“最初の2球”で決まっていた

          ナダルの全米優勝の決め手は最初の2球だった——。と言っても、試合開始から最初の2ポイントで優勝が決していたというオカルトじみた話ではありません。3球目以降のラリーになったポイントではなく、その前の2球、つまりサーブとリターンが勝敗の決め手になっていたという意味です。 ナダルもメドベージェフ(メドベ)も優れた守備力を土台とする選手で長いラリーに強いのだから、ロングラリーこそが勝敗を分けそうな気もしますが、公式スタッツの数字を紐解くと異なる試合の姿が浮かんできます。 トータル

          ナダルの全米優勝は“最初の2球”で決まっていた

          サーブもリターンもだめな錦織がそれでもトップ10にいられる理由

          前回の記事では、今年の錦織はサーブもリターンも平均以下のパフォーマンスであることを示しました。 ここで当然、疑問が湧くはずです。「サーブもだめ、リターンもだめ。それでどうしてトップ10にいられるのか?」 単純にランキングだけの話をすれば、「グランドスラムでベスト8以上に勝ち残ってポイントを稼いでいるから」ですが、それでは答えになっていません。 というわけで今回は、錦織を支えているのはどんな能力で、それはツアー全体でどんなレベルなのかを、今季のデータから探っていきます。

          サーブもリターンもだめな錦織がそれでもトップ10にいられる理由

          錦織圭はサーブもリターンも並以下である

          *要旨 錦織のサーブとリターンは…… - 1stサーブがへぼい → そのとおり - 2ndサーブは甘い、叩かれすぎ → 実は健闘してる - リーチが短いから1stリターンは苦手 → 平均よりちょっと悪い程度 - 2ndリターンがすごい → 明らかに下手 つまり伸びしろたっぷり 今季の錦織はデータを見る限り、サーブとリターンを単品で評価すると明らかにパフォーマンスが低く、トップ10で最低どころかツアー全体で見ても下位に位置する出来です。 サーブは弱点だけど、リターン

          錦織圭はサーブもリターンも並以下である