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ただの、美人

【ただの、美人】

私ね、来世は、ただの美人でいたいの
そう何の特技もない、ただの美人

派手なことはなくていいの
都会のオフィスで事務仕事して
そして

ただただ
美人というだけの人生

白いブラウスが時々風に揺れて
窓の外を見たりする
ペンを持った手が宙を描いたりしても

ただの美人なの

花のように


スーツを着た
ちょっとだけ年上のイケメンと結婚して
子供を産むわ、2人か3人

毎日、普通のご飯を作って
家事と育児と仕事をする

でもね、ただの美人なの

保育園に子供を預けに行ったら
ほかのママさんが
わぁ、◯◯君のお母さん、すごく美人

そう言って、私をのぞきこむわ

でも、何も秀でていない
これといった特技のない

ただの、美人なの

美人はね、柄物でも無地でも
ワンピースがよく似合うの
余計に長いネックレスもするわ

ネックレスが髪の毛に絡まっても
困った顔ひとつせず
あらあらって立ち止まるの

そんなに急がない、ただの、美人

仕事帰りには、決まって果物を買ってくわ
パインの葉は、店の人が取ってくれるから
ゴミの心配もないの

みんなの親切を一心で受け止める

それなのに、それなのによ

ただの、美人なの

茜空に向かって
子供たちと手をつないで
毎日毎日、家に帰る

旦那は決まって
子供が寝付いた頃に帰ってくるの

それでも、やっぱり私は
ただの美人

料理はそこそこ
美味しいものが食べたくなったら
旦那に言って
近くの美味しい店を予約してもらうわ

料理の腕だって
そこそこ

これといった得意なことのない
ただの、美人

能がないって言われても
かまわない

だって、ただの美人なんですもの

それが私の来世

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