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そして僕は元カノに電話した。

「あなたってほんとに急ね」


こんなタイトルだからきっと「こいつは女々しいやつだな」などと思うだろう。僕だってこのタイトルを見たらそう思う。

ただ、これは僕にとって必要なことだった。そうでなければ何か自分自身が前を向いて進めないような気がしてならなかった。こんなことで前を向けるかもわからない、でもやってみないとわからない。


若かったから、故の後悔

何が僕をこんな行動にさせたのだろう。

よくよく考えてみると、大学生時代に戻る。元カノと付き合っていた時だ。
振り返ってみれば、けんかなどした覚えもない。なんだかんだ言っても仲は悪いと思ったことはなかった。一緒に出掛けても、ご飯食べてもお互いにけなすこともない、むしろ尊重している関係だったと思う。


それなのに付き合って半年が過ぎたころ、僕は突然に別れを告げた。
お互いの進路がかなり違くて卒業後に会えるかもわからない状況になるからとか、僕に飽きが来たとか、羅列をしようと思える理由をならべて。それを「彼女のため」などと御託も言って。


でもそれは僕の彼女を思いやれていない行動だったし、若さゆえの行動だった。それでも、当時の僕は「こうするしかない」と思って行動した。
唐突なうえ、告げたタイミングが試験の1週間前だったりと最悪のタイミングだった。


僕の横で涙をする姿が脳裏に刻まれていく。それをどうすることもできないもどかしさが体中を駆け巡る。空気を読まない友達が元気よくこの状況で話しかけてくる。


「若すぎた僕だけど、謝りたい。」



-でもよく考えているんだなって思う-

大学を卒業して6年経った。この間恋人ができるわけでもなく、社会人としてこの社会の荒波をかき分けていた。それでもあの脳裏に刻まれた光景が後悔として残っている。どうにかしてやろうと思っても、心とけんかしているのだ。その思いは波のように押し寄せては引いてを繰り返していく。


そして、その波は最高潮になる。
ロックダウンで家にこもると思いが色々と駆け巡る。
ロンドンの屋根裏部屋で、僕はその勢いに任せてLINEを開いた。

「謝ろう、どう思われようと。」

連絡先もSNSも知らない。ただ知っているのは、6年も連絡を取っていないLINEだけだ。それが連絡できるのかもわからない。それだけしか頼りがもうないのだ。つながれば運がいいと思うしかない。


ひさしぶり。元気にしてる?


-久しぶり。びっくりしたけど、どうしたの?-


「まさか、つながるとは。」
そして僕は思っていた、謝りたいことを書いていった。自分が付き合っていた時の行動のこと、別れ際の行動のこと、ずっとこれを謝りたかったということ。


-ほんと急だね笑 でも私より色々なことを考えている人だなって思った。ありがとう。-


この6年間あった足かせが夏の暑さと共に溶けていくような、そんな時を覚えた。そしてそれはそれまでの経験が何か図書館の一冊として収められていく様子を見ている感じだった。


-気が向いたら電話してよ。見たことない世界にいる人と話すこともそうないし-


-ありがとう、そしてごめんね。-

2月のロンドン。またロックダウンだ。
寒い部屋の中で、夏の言葉が頭にふとよぎる。

「電話してみようか」


-ほんとあなたって唐突ね-


僕はまた唐突にLINEをしてみた。そのたびに言われるのだから、もうこんな言葉も慣れたものだ。予定を合わせて電話をすることにした。


6年ぶりに聞く声。大学卒業以来に話すこと。6年というブランクは何も感じないくらいに話というものはできるのかというくらい電話をしていた。気づいたら3時間も電話をしていた。

お互い話したいことはあったけど、やはりメインは僕のLINEのことだったし、付き合っていた時のことだった。あんなこと、こんなこと色々あったけれど、最後に彼女はこう言った。


-私こそ、いろいろと振り回したりしてごめんね。でもこんな経験をさせてくれてありがとう。私も言いたかったの。-


春の陽の光が僕の部屋の中にそっと入ってくる。僕らの冬がもう終わった。お互い前を向いて進む時がやってきた。
またタイミングみつけて電話をしようと言って。


過去は今になっても変えられる

人生の中で後悔やどうしてもマイナスに考えてしまうようなことが起きるのはしょうがないことだ。自分がしでかした悪いと思ったこと、相手を傷つけてしまったこと。
それは過去という「事実」となってずっと残るかもしれない。

でも、その「事実」は自分がどう思うかでどんな過去だったか解釈を変えることはできる。それはよかったことなのか、悪かったことなのか、しょうがないことだったのか。それを変えられるのは「今」なのだ。変えたかったら「今」変えることだ。今を変えれば、過去は変われる。そして未来が変わっていく。


僕はもう彼女に後ろめたい思いをすることなく、前を向いて生きていける。この先、僕が他の人と付き合おうと、彼女が別の人と付き合おうとこれらの出来事を糧にして進んでいける。きっと彼女もそうだと信じている。
この出来事という「事実」をどう解釈するか、それはお互い自身なのだから。


過去は変えられないという人がいる。
でも僕はこういいたい。


過去は変えられる。それは「今」からその過去をどう思うかだ。


こんな元カノと会えたことが僕にとっては感謝だ。さぁ前を向いていこう。


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