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『友達と私の放課後』るか

と「今日なんか予定ある?」
わ「いや、ないけど」
と「じゃあさ、押上行こう!」
わ「え、押上!?なんで???」

 返答はないままぐいぐい身体を押されるようにして学校を出た。というか押し出された。
 声をかけてきた友達は学校にいて用があれば話すし何度か遊びに行ったこともある仲ではある。けど、遊びにって言ったって学校から最寄駅に行く間にある某ハンバーガーチェーンに行ったりカラオケに行ったことがあるくらい。2人じゃなく何人かで。それに押上って行けないわけじゃないんだけどちょっと遠いから放課後に行こうとは思わないんだよね。スカイツリーが出来てからやたらテレビでも見るようになったけどなんだかんだ行かない。そんなところ。友達とも押上行こうなんて話になったことない。
 そこに行くのになんで私を誘ったのか、、、

わ「押上になんかあるの?」
と「なんもない。なんもないけど急に行きたくなったんだよね。」 

 押上に着くと行きたい喫茶店があると言って歩き始めた。場所も知っている風だから大人しくついていく。

と「わ!なにこれ!!ホテル???
  こんなおしゃれな建物できたんだねー。」
わ「ほんとにおしゃれ。
  ってか前もこの辺来たことあるの?」




 駅から5分くらい歩いたところにそのホテルはあった。押上といえばスカイツリーとソラマチしか知らなかった私には外を歩くこと自体意外だったし友達が地図アプリも使わずに歩けていることも、以前のことを知っているようなことを言っているのもすごく意外だ。

と「私ね、このへんで産まれたんだ。」
わ「そうなの!?」
と「小5くらいまでかな、住んでた。」
わ「じゃあ、たまに来るの?」
と「ううん。引っ越してからは初めて。
  家族とも押上の話ってしたことない気がす
  る。なんでだろ。」
わ「引っ越したのはなんか理由があったの?」
と「特別な理由なんてないよ。ただ押上より今
  住んでるとこの方が安かったってだけ。」

 駅から少し歩くと商店街に出た。
 少し上を見ると至る所に「キラキラ橘商店街」と書いてある。



わ「この商店街可愛い名前だね。
  お店も結構やってるし。こんなとこがある
  なんて全然知らなかった。」
と「こんなとこ知らないよね。テレビとかには
  意外とよく出てるんだけど知られてないん   
  だよ。昔はもっと人が多かった気がするけ
  ど思ったよりお店残ってて安心した。新し
  いお店もあるね。」

 そう言いながら友達はキョロキョロと見回しながら歩いてる。

 商店街を抜けて右に曲がってすぐのところに目的の喫茶店はあった。ほんとに昔からやってそうな見た目。こういうのが趣があるとかっていうのかな。

わ「なんで喫茶店なの?
  カフェとかの方が好きそうだけど。」
と「小さい頃このお店の前よく通っててなんと
  なく思い出したから来てみたかっただけ。
  初めて来た。」
わ「そうなんだ。ま、私珈琲好きだから全然い
  いけどね。」



わ「あ!ホットドッグもある!!
  私ホットドッグのセットにしよ。夕方って
  やっぱお腹空くよね〜。」
と「私は、、、
  ウインナーコーヒーにしよっかな。」

 誰もいない店内。日曜日の夕方喫茶店に来るにはちょうどいい時間な気がするけど静かだ。落ち着いてていい感じ。喫茶店ていいな。今度家の近くにある喫茶店も行ってみよう。

と「実は今日押上来たのは行きたい公園がある
  からなんだけどあとで行ってもいい?
  子どもの頃よく行ってた滑り台があるん
  だ。今思うとすっごい高いの。高さが。昔
  はこれが当たり前だと思ってたけど他の公
  園であんなに高い滑り台見たことないから
  珍しいのかも。」
わ「滑り台!?
  いいけど滑り台のためにわざわざ押上まで
  来たんだ!高いって言ったってどのくらい
  高いの?」
と「3mはあると思う!!
  話してたってしょうがないからとりあえず
  行ってみようよ!絶対楽しいから。」
わ「わかったよ。滑り台なんてすごい久しぶ
  り。恥ずかしいから小さい子たちいないと
  いいな。」

 現実はそんなに甘くなく、公園には親子連れが何組かいて他にもいくつか遊具があるものの滑り台が1番人気みたい。隙を見て行かないとダメだな。

 滑り台は確かにでかい。すごい見上げる。ここから見えるスカイツリーもなんかいい。

 先に友達が滑りにいく。駆け足。


 動画を撮るように言われているからスマホのカメラを起動して合図を待つ。

 きた。

 真ん中のワンクッションが怖そう。

 はやっ!!

 って思ったけど怖がってブレーキかけちゃってる。

 真ん中のところはやっぱり怖そう。

 すっごい笑ってる。

と「あれー!?こんなに怖かったかなー!?!?思わずスピード抑えちゃったけど楽しいわー!!」
わ「そう?すごい怖がってそうだったけど...」
と「やってきなよ!!やってみればわかるっ
  て!!!」
わ「いや、私はいいよ。」
と「せっかく来たんだからやっといた方がいい
  って!今なら人もいないし今のうち!!」

 そう言いながら(物理的に本当に)背中を押されて階段を登ってしまった。
 実際上まで来てみるとやっぱり高いし滑り台の傾斜も急な気がする。けど、ここまで来ちゃったし引き返せないか、、、

わ「じゃ、じゃあ行くよー!」

 傾斜の1番上のところにお尻をついて手を離す。

 あっという間。
 真ん中のところ少しジャンプしたような気もするけど速すぎて一瞬すぎてよくわからない。怖いと思う間もなかった。

 楽しい。
 気付いたら私も笑ってる。

わ「え!楽しい!!
  滑り台ってこんな楽しかったっけ!?」
と「でしょ!!
  だから言ったじゃん!!」
わ「もう1回やろうかな」
と「ふふ
  行ってきなよ!
  押上なんてあんま来ないでしょ?」
わ「そだね。行ってくる!」

 結局それから3回も滑っちゃった。私の方が楽しんでるな。

 ソラマチの方まで戻るともうイルミネーションが始まってる。しかも今週末はポッキーの日らしい。そういうの全然気にしたことないな。まだ少し早いけど当日SNSに載せる写真を撮って欲しいみたい。

 私はSNSもやってないし写真も普段ほとんど撮らないからダメだしなのか指導なのかわかんないけど色々言われながらも何枚かようやく納得の行くものが撮れたらしくて満足したみたい。

と「今日は色々付き合ってもらってありがとう!」
わ「滑り台は私の方が楽しんじゃったし今日は一緒に来れて良かった!こちらこそありがとう!!」
と「それなら良かった!
  帰り気をつけてね。また明日。」
わ「うん。また明日。」

 結局なんで私を誘ったのかとか滑り台のために押上来た理由とか聞こうと思ったこと聞けなかったな。

 まぁ、いいか。楽しかったし。

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