「オッペンハイマー」観た。

原題:Oppenheimer
監督:クリストファー・ノーラン
出演:キリアン・マーフィー、エミリー・ブラント、フローレンス・ピュー、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr.、ケネス・ブラナー 他
上映時間:180分

「原爆の父」と呼ばれた物理学者ロバート・オッペンハイマーの実像に迫る映画。


聴聞会の聞き取りに応じるオッペンハイマー。その合間に回想を織り交ぜて展開。

ほぼ全編が会話劇。

台詞の応酬を、役者の演技とそれを引き出す演出、響き渡るサウンドに乗せてリズミカルに打ち出す。

時間軸の分解などクリストファー・ノーラン十八番の重層的な作り込みの妙が冴え、映画としての見応えにどっぷりと浸る3時間。


オッペンハイマーが思索する脳内イメージの視覚化を通して、量子力学、物理への興味を喚起。
やがて膨大なエネルギーを手中に収めんとするに行き着く思考には恐怖。


独善的で傲慢、それでいて傷つきもし、不安に苛まれる。
多面的で複雑な男を演じたキリアン・マーフィーが素晴らしい。

主演俳優の周りの役者、ロバート・ダウニー・Jr、エミリー・ブラント、フローレンス・ピュー、ケネス・ブラナーなど画面に登場するすべての人物に存在感があった。


オッペンハイマーの一人称視点ゆえ広島と長崎の被害は映し出されないが、この開発は危険だと認識していたし、投下後は自分の手は血に塗れたと悔恨していた。(そりゃ当然だよ)


終盤、ある男の策士が炸裂。うわぁ。。男の恨みは深い。
助演賞を獲るだけある熱演ではあるけど、そこはオッペンハイマーから見えない部分だから違和感。一人称視点を徹底してほしかったような。


ラビ、ボーア、アインシュタインの忠告も届かず、開発されてしまった。

あとはあなたたちで考えてねと訴えかけるようなラストカットの眼差しが鮮烈。


もはや地球は破壊の上にあるのだな。
暗澹たる気持ちになる。

恐ろしいことだ。

抑止力を名目に危険を保有しあう危ういバランスを見つめつつ、原爆の日が2回ある日本に生きているからこそ、核の脅威を自分ごと引き付けて考え続けないといけないと思う。


科学技術の進歩で核を無効化するようなのを開発できたらいいのにな・・・。






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