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  4-⑬ 善根

「お遍路さんはね、加奈の代わりに大変な思いをしてお参りをしてくれるんやき
、見かけたらきちんとお接待しなくてはいけんよ!」

 小学5年の加奈は、学校からの帰り道に
1人のお遍路さんを見かけた。
 〝女体山の方向から来たという事は、これで最後なのだろうか?〟
 こちらへ向かって歩いて来る背が高い細身の青年。すれ違う際、青年は加奈に頭を下げた。
 こんな雨の中巡礼の旅をしてとても疲れているはずなのに、加奈には青年の瞳がキラキラと輝いているように見えた。
 その瞳に魅入られるかのように、少女は笑顔で、そして思い切って声をかけた

「大窪寺で結願ですか?」
青年は振り向き、一瞬驚いた様子を見せたが、日に焼けた黒い顔に笑みを浮かべて言った。
「はい!これで結願です!」

 少女は母親の言葉を思い出し、赤いランドセルの中から何やら細い袋を取り出した。昼の給食で出された、2本のうちの1本•••砂糖がたっぷりとまぶされた揚げパンであった。

「もう少しですね!お接待です!」

 青年は驚きながら少女を見つめ、やがて両手で少女の大切なお接待を受け取った。そして、
「南無大師遍照金剛」と3度唱え、白色の納め札を手渡した。少女は笑顔で受け取り、サンリオのキャラクターが描かれているメモ帳に大切にしまい込んだ。
 青年は少女に名前を尋ねた。


「加奈ちゃんに良い事がありますように!」
 少女は満面の笑みを浮かべた。


 青年は大窪寺のすぐそばにある少女の自宅にお接待される事になった。
 加奈がお遍路さんの手を引いて、自宅へ接待するのは初めてであった。

 加奈が連れて帰った青年に、両親は大変驚きつつも、彼女の頭を撫でて、
〝偉いね!〟と笑い、青年を大歓迎した

 母親が、青年と労苦を共にし土にまみれ、先端にささくれた傷の花をつけた金剛杖をしげしげと見つめながら、両手で恭しく受け取った。

「洗濯をするのでこれを着てください!主人のもので申し訳ないけれど」と言った母親に、「着替えはありますから!」
と、固辞をしたものの、少女から、
「お接待やき!」と言われたので、青年はその善意に甘える事にした。

 昨日に続いてのお接待•••広々とした温かいお風呂であった。感謝の祈りを3度唱え、乳白色の湯船で思い切り足を伸ばした。

 初の巡礼は、紅葉が織りなす秋の山々を見上げながら、末枯れた古道を歩いた

 満開の桜に見送られ旅立ち、鮮やかな薄紫色の藤の花が2度目の結願を祝福してくれた。

 そして、今日もまた•••。
少女と彼女の両親の善意に助けられ、こうして無事に3度目の巡礼の旅を終えられた事に、彼は深く感謝をしていた。


 少女の両親には数度の遍路の経験があった。
 疲れ切っているであろう彼の身体を、胃を案じ、刺身等の生ものは避け、それでも栄養をつけて体力を回復して欲しいとの願いから、近所の鰻店から鰻重を注文し、具沢山の豚汁と豆腐サラダ、そして食後のデザートで、少女の大好物である大学芋が用意された。

 彼が入浴を終え、
〝お風呂お先にいただきました。ありがとうございました!〟と3人に声を掛けると、少女は満面の笑みを浮かべて言った

「一緒に食べよ、お兄さん!」

 非常に豪勢な夕食のお接待に戸惑う青年であった。


 少女の両親は10年前に遍路中に出会い
、それをきっかけに交際に発展し、結婚したのであった。

 彼が順打ち、彼女が逆打ちで、本来ならば一瞬しか交わらないはずの点に過ぎないその小さな縁は、彼女が持ち歩いていたメモ帳を落とした事で、点から線となり、繋がったのだった。

 すれ違った彼女と一瞬の挨拶を交わし
、3キロ先でそのメモ帳を拾った彼は、
〝もしや?〟と思い、元来た道を引き返し始めた。
 足摺岬の先端•••海のそばに建つ三十八番札所、金剛福寺の山門前の事であった

 彼が20分程歩いていた時、向こう側から歩いて来る彼女の姿が視界に入った。

「もしかしたらこの手帳ですか?」
 彼女は涙を流しながら頷いた。

「はい」


 2人は偶然にも父親を病気で亡くしていた。その魂の鎮魂の為に、大学3年の夏休みに遍路を行ったのだった。

 人の縁とはどこでどう繋がるか分からない•••と、改めて青年は感じていた。

 順打ちしか経験していない青年に、父親がアドバイスをした。
「もし、もう一度お遍路をする機会があるならば、次は逆打ちをした方が良いよ
!景色が全く違って見えるから!」
 母親も笑顔を浮かべ、大いに頷いていた。

 両親は、彼に何故遍路旅を続けているのか尋ねる事はしなかった。無論少女も
。その代わり、少女の両親は突飛もない事を言い出した。

「この子競馬が大好きで、将来騎手になりたいらしんよ!」

 青年の心臓がドキリと鼓動を打った。

「明日は時間なんて気にしないで思う存分寝てなさい。特に急ぐ事もないでしょう?しっかりと疲れを取らなくては!」
 父親の言葉と母親の、
「うんうん、そうしなさいな!」の言葉が決定打となり、青年はその暖かなお接待に甘えることにした。

「お兄さん、おやすみなさい!また明日ね!」少女は欠伸を押し殺しながら言った。
「うん、おやすみなさい。加奈ちゃん」

🌕ーーー🌙ーーー🌕ーーー🌙ーーー🌕

 彼は、なかなか寝付く事ができなかった。
 旅を終える事ができた安堵感はあっても、まだ気が張り詰めているのであろう
、目ははっきりと冴えてしまっていた。

 巡礼の最後にこのような素敵なお接待を受けるとは想像だにしなかった。
 数え切れぬ程のお接待を受け、善根、善意に助けられ、三度の巡礼を支えてくださった人達との不思議な出会い。

 彼は、初めて巡礼を始めたあの日から今日までに至る日々の事を思い返していた。

山々を見つめるお遍路さん。


 PS•••いつもお目に留めて頂き、心より感謝申し上げます🥲🥹次回配信は、1月31日水曜日午前8時です🕗私は1度だけ、3ヶ月を掛けて四国八十八ヶ所巡りを、お遍路さんをしたことがあります🧑‍🦯🚶🙏🙏

 大空翔馬は今どこにいるのか?
早く心の修行を終えて戻ってこい!🙏🙏

 それではまたお会いしましょう🥹🙇

          AKIRARIKA


🐴🐴〜〜〜🐴🐴〜〜〜🐴🐴〜〜〜🐴🐴

       おまけ🐴

ピンポン🔔とベルが鳴り、お届け物のお知らせ📢ターフィーショップだ🐴🐴💨

ついにメロちゃん入厩🥳🐴😍
先日、メロちゃんの母、メーヴェが彼女の妹を出産👍父はあのベンバトル👍めっちゃ可愛いかった😍🤭
兄弟仲良く🐴🍠🐴🥕🤭🤣
こ、これはあの名馬の父⁉︎
光り輝く黄金旅程✨✨
この白斑はもしや😅
やっと入厩のコントレイル🔥🔥
子供がターフを駆けるのが待ち遠しい😁
ひっつきソダちゃん🤭
来月の北海道牧場巡りに連れて行かなきゃ😅
まだかなあ😅やっぱ人気あるからねー😅
高すぎるから😢😢大きいのいいなあ🤤🤤
今週馬券当たったら検討しよう🤭
多分その時にはないんだろうなあ😢
と思った次の日、突然の⁉︎
在庫調整中からの〜🐴🐴🥳🎉
もうダッシュ💨💨で購入🎉🥳
楽しみです😊😊


 それではまた🤭🤭

         AKIRARIKA🐴

 この作品を通して、養老牧場への牧草寄付等の引退馬支援を行います。その為のサポートをしていただければ幸いです。この世界に生まれたる、すべてのサラブレッドの命を愛する皆様のサポートをお待ちしております🥹🙇