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読書後の感想|その後の慶喜 大正まで生きた将軍

読書後の感想
読み終わった直後に書いた、新鮮でお世辞抜きだが少々ネタバレな自分用の感想を公開したい。


渋沢栄一が次の一万円札に決まり、今年はかつての活躍が騒がれた。NHKでは大河ドラマ「晴天を衝け」も放送されて大分経つ。でも、こんなことがなければ私はまるでこの人を知らず、TVにも影響され渋沢関係の本も読みその働きに感心するばかりだった。商人の力を感じた。

そんな中、渋沢は徳川慶喜と関係が深かったことを知る。大河ドラマではその慶喜についても重要な立場として扱っているが、徳川慶喜といえば大政奉還をして江戸幕府を終わらせた最後の将軍である。わたしにとっては、周囲から将軍になることを強く求められた優れた人物だったらしいが、戦から逃げた臆病者のイメージもある。しかし、その後のことはまるで知らなかった。

そんなとき本書に出会った。「その後の慶喜 大正まで生きた将軍」。「ほぉ~、これはぜひ読みたい!」と、最初は軽い気持ちで購入し読み始めると……!?

その内容は、 
プロローグ 表舞台から姿を消した徳川慶喜第一部 静岡時代の徳川慶喜
 第一章 恭順表明から静岡に至るまで
 第二章 言動を律する趣味人
 第三章 取り戻されたゆとり
 第四章 身内・知己の死と新しいものへの関心
第二部 東京時代の徳川慶喜
 第五章 修復された皇室との関係
 第六章 老いと自分史への協力
エピローグ 家範の制定と慶喜の死
という項目で、当時の慶喜の様子を記す多くの文献を参考に、著者が歴史学的な側面から分析し在りし日の様子がリアルに語られている。 

最初読む前は、物語形式でその後が語られるのかと想像したがまるで違った。上に説明した通り、歴史学的な側面から分析しつつ著者が楽しんで書いたという慶喜の様子が、時代の流れともに語られた。全体的に理解しやすくとても読みやすかった

まず気を引いたのが、動乱の時代が明治に代わり、慶喜にとって静岡に暮らした時代は「彼の仕事は子づくり」と笑い話にされるほど子供が多かったこと(最終的に二十一人つくった。これ以外にも死産した子が二人いた)。大河ドラマ中に静岡で静かに過ごしていた裏側で、やることはやっていたのである(大河ドラマ中でも急に家族が増えていたことがあった)。

その慶喜の性格はざっくばらんで新しいもの好きだった。趣味が多く、それが職業と書かれている。狩猟や写真とほか多数、時には自転車を乗り回すこともあった。だがそれは、裏を返せば政治にいっさいかかわらず穏便に過ごすことが求められてのことだったという。当時会うことのできた人もかなり少なかった。解説にあったが、四十五年も「暇をつぶす」というのは生半可な生活ではなかったのだ。

そんな状態も時が解決したのか、明治の後半で彼を束縛していた人々が死ぬと、東京に戻り皇室との関係も修復する。やがては功績が見直され公爵の爵位まで授与される。その後渋沢が中心になり慶喜の伝記をつくることになり、自ら積極的に協力した。

時代が明治から大正になると、親子でさらに自動車も所有していたというから彼らしい。著者はこれについて、明治天皇が崩御したショックから立ち直る「最後で最後の贈り物を賜った」と記していた。明治という時代の成立と終焉をその目で見届けることにもなった。そして七十七歳で大往生。


読み進めていて思ったが、新しく知ることがとても多く、徳川慶喜に対するイメージが変わった。その苦労から人生における目標の大切さを垣間見た気がする。

また、慶喜を中心に当時の出来事がより詳しく記されているので、まるで大河ドラマのバックグラウンドを語られているよう。ちょうど読みながら大河ドラマを観ると、相乗効果でどちらもより面白くなった。「晴天を衝け」は主役の渋沢だけでなく、慶喜の物語でもあったことが良くわかる。

まさに「今が旬」とはこの本のこと!!
大河ドラマもあとわずかだがお薦めの一冊。


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