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読書後の感想|風に立つライオン

「先生、それは群れの中のライオンの話でしょ」
「群れから離れたライオンって……厳しいんですよ」

P.114より

映画に、そして歌に感動して、小説の存在を知っていつか読みたいと思っていた。それが今回実現し、読むに至った。

物語は、小説の中の登場人物達の語り形式で進む。日本人の医師島田 航一郎が恋人を置いて、内戦の絶えないアフリカの医療活動に参加。そこでの活動でいろいろな人々と出会い、様々な体験をする。彼の人柄と危険を恐れない行動は現地の患者に慕われ、良い影響を与え、やがてそのバトンは日本の東日本大震災にもつながるのだった……。

映画がとてもよく、強く記憶に残っている。ある意味悲しい結末であるにもかかわらず感動的な作品だった。俳優の大沢たかおが映画化したら主演すると著者に言っていたのは知っていたが、映画以前の原作であるこの作品自体、大沢たかおのラブコールで書かれたということを知り意外というか、感心した。

歌は映画の後に知ったのだがとてもいい歌だと思う。この歌はあとがきにあったが、大沢もそうだが多くの医師たちに大きな影響を与え、人生を左右した。モデルもいたことは知っていたが全くすごい歌である。

さて、この小説の評価だが、はっきり言って映画よりスケールが大きく完成度も高い。内容もすごくよかった。映画は航一郎の活動がメインで作られていたが、小説は彼に影響を受け大人になり医師になったアフリカの患者だったンドゥングが、日本の東日本大震災の現場におもむき患者を診て、魅力的な人物たちと交流し、航一郎の思想を受け継ぐところまで書かれている。まさにバトンをつなぎ、思わず涙ぐむ場面もあった。

アフリカの様子もそうだが、東日本大震災の様子もリアルで(ここの登場人物にもモデルがいる)、あの悲惨な津波の場面を思い返すこともあった。また、登場人物の一人、アフリカで航一郎と活動した看護婦である草野 和歌子(映画では石原 さとみが演じていた)が映画ではどうもよく設定がわからず場違いな感があったが、この小説でバックグラウンドがよくわかり、すごく美人と書かれていたので石原 さとみが選出されたのに納得がいった。映画以上に航一郎との関係や、別れたその後もアフリカで活動している様子も知ることができた。

映画で結末を知っていたが、それでも純粋で良い作品だった。読んで正解だった。ぜひ人にも勧めたい一冊。

今後の生き方の参考にしたい。まさに「風に向かって立つライオン」でありたい!


追伸
これを書いていて、なぜ内容が物語の登場人物たちの語り形式だったのかわかった。歌に合わせたんだ!!



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