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そろそろ、ひよこのように〈875字〉

先日応募した某文学賞について中の人たち(審査員の方々)が
途中経過の感触をSNSに上げていらした。

「右ストレートで殴ってくる作品」
「やばいぐらいの名作」

……正直、自分とはまったく無縁だという自覚はある(笑)

「平均値に落ち着いてしまった作品」
「ここまで書ければ受賞できるのではないか、という無難な感覚が透けて見える」


……耳が痛い。

元々私の書く話は、どうにもこぢんまりまとまりすぎるきらいがあって
迫力や破壊力、突破力に欠ける、という認識は痛いほど持っている。

ただひとつだけ言えるのは
「このぐらいなら」を狙って書いたわけではない、ということだ。
たとえ出来上がりはそう見えても。

昨年、スランプの真っ只中にあった頃、
ある一枚の絵にどうにも惹かれて、どうしてもその絵をモチーフにしたくて書き始めた。
そして、どこに応募する予定もなかった。
ガチ公募派の私には珍しいことだ。

書き上げてからも何度も手を入れた。
ある公募に出そうかとも思ったが、方向性が違うかと出すのをやめた。
その後ご縁あって、その文学賞に応募した。

いちど作者の手を離れてしまえば
あとは読み手の自由だ。
作者が作品に込めた想いは元より、どんな事情で、どんな背景で
書いたかなど、読者(審査員を含む)にはなんの関係もない。

おもしろいか、おもしろくないか。
ただ、それだけ。

よく判っている。
自分の書く話が、自分の技量が
自分の思いのたけを他者に伝えるレベルにまったく達していないことも。
だから「平均値狙いの作品」に落ち着いてしまうのだ。

でも、今回はいいんだ。
あの話は、ああ書きたかったのだから。
あの話を書くことによって、私は再び書くことを楽しむようになったのだから。
どこの公募に出すアテもないのに、あんなに書きたいと思って書いたのは
初めてだったかもしれない。

でも心のすみで、ちょっとだけ考える。
そろそろ殻を破るときが来たんだな、と。
もっとも、どこをどうやって破るのかも判らないんだけどさ。

とりあえず、生まれる前のひよこのように
コツコツとくちばしで内っかわからつついてみるかな。

コツコツ。コツコツ。

いつかひびが入ったら、儲けもん。

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