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アイデンティティの迷子

Photograph: _jasminewhoジャス
Model : Koyoi Tsujii

「あなたはどんな人ですか?」

この質問に対してすぐに答えれる人がどれだけいるだろう。よりも、この質問に対して何を答えにすればいいか分かっている人はどれだけいるだろう?

相手の反応を気にしたり、1番伝えたい事が言えなかったり、肩書きをたくさん並べたり、過去の栄光を自慢したり。

でも本当のアイデンティティってそんな簡単に知る事なんてできない、と思う。というよりも、簡単にアイデンティティが決まるなんて嫌だ。

まぁ、ヤリたいだけならIT企業で働いてます、とか、商社マンです、とか、アーティストです、とか適当に言えばいいけど。

普段、人には自分の話なんてしないけど、感覚で生きてる僕の頭の中を「文章」で召し上がれ、どうぞ。

あなたは日本人

ニュージーランドで生まれ育ったにもかかわらず「日本人」といわれる5歳〜15歳。人はカテゴリーで分類したがる生き物なのがちょっと難点。

親とかその友達には確か「ニュージーランドで産まれたからニュージーランド人だね」って言われてた気がする。この時点で完全にアイデンティティーの迷子。生まれてまだ初期段階なのに。

本当はみんなと同じニュージーランド人として扱われたかったのが本音だけど、見た目から違うし、弁当で持っていくのはおにぎりだし、「同じ」ニュージーランド人というカテゴリーに入るには無理があった。今はいろんな国からの移住が増え、様々な文化や食が受け入れられてるが、当時は日本人というのは珍しく、学校にも2人、3人しかいない時代だった。

その時僕は小学校3年生ぐらいで、ちょうど学校に馴染み始めていた頃だった。休み時間になると、手持ち無沙汰になる僕はいつもの様に一人で遊べる遊具を探す。すると、近くにいるクラスメイトが人差し指をこちらに向け、「やーいやーい、中国人ー!」と言い放った。

その途端、僕に背を向けて走る彼に向かって、「ぼくは日本人だー!!」と大きな声で言い返していた。

次の瞬間、僕は認めてしまったと気づいた。

あ、やっぱり日本人なんだ、と。

僕はニュージーランド人

大学に関しては、海外思考の強い大学だったため、海外生まれの日本人、ハーフ、日本語のうまい外国人など、僕と似たような境遇の人たちがたくさんいてすぐに仲良くなれたし、一緒に過ごすのが人生最大に楽だった。あの時間は小学校の頃に習った、類は友を呼ぶ、ということわざの素晴らしい例としてかなり体現できていたと思う。

さらに、日本ではニュージーランド人として扱われており、ずっとニュージーランド人になりたかった僕にとってはそれも心地がよかった。

「ニュージーランドで生まれました」は自己紹介の定番で、後半になると「STAP細胞はあります」ぐらいの力強さで強調していたかもしれない。他己紹介でも「実は彼、、」と紹介してもらえるのも嬉しかった。

どやぁ!っていう気持ちは少なからずあったし、今思うとかなりダサいけど、バットを持った野球少年みたいに、それしか振り回せるものがなかったんだと思う。どこかでそんな自分が嫌だったのはあって、その肩書き以外のものを作ろうとしてもそれに勝てるものは無かったから、悔しかったけど、それを振り回すしか無かった。

肩書きで収まるのはもったいない

名前と誕生日を覚えるのはかなり苦手で、名前はただの文字だし誕生日はただの数字なのに、と言い訳してしまうのは悪いくせだと自覚している。

名前と誕生日に加えて、アイデンティティといえば、職業、というのもあるが、これも、今の仕事に満足じゃない人が多いご時世なのに、聞いても無駄じゃん、と思ってしまう。

一般的に言うと、会社員だったら名刺に書くのは信用がありそうな肩書きがいいし、有名人だったら俳優とか歌手とかわかりやすいほうがいい。

でも僕からすると、あなたみたいな素晴らしい人が、その肩書きで収まるのはおかしくないですか?と疑問に思う。

じゃあ何がアイデンティティになるのか?を考えたところ、本当の自分を知ってもらう必要があるな、みたいな面倒くさい答えがひょっこり顔を出した。すぐ引っ込んだけど。

そして、やっとこさたどり着いた答えは、あなたが過ごした時間、場所、経験、感情があなたのアイデンティティになる。

「過ごした」ということは、全て過去に積み上げてきたものがアイデンティティになるのと、今過ごしている時間は過去になっていく事を踏まえて、これから過ごす時間でアイデンティティを作れるという事にもなる。

将来の夢はオリンピックに出る事です、と掲げている少年のアイデンティティは、今までオリンピックに向かって努力を積み重ねて来ている時間、場所、経験、感情がある少年という事。

あきとという人間のアイデンティティは、ニュージーランドで日本人として生まれ、様々な国での孤独、いじめ、所属のむずかしさ、価値観の違いに悩んだ時間、場所、経験、感情がある1人の人間という事。

ただ、これは僕のアイデンティティのほんの一部。


あなたのアイデンティティはあなたが決めれる。他人があなたをどんな肩書きで呼ぼうが、どんな性格なのかを決めつけていようが、あなたが今から起こす行動で好きなように変えれる。


さいこう。


最後まで読んで頂きありがとうございます。



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