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余情

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小説。 あなたに一目会うために十年を繰り返すわたしのお話し。
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記事一覧

余情 最終話〈小説〉

 あなたとはその後も、毎日会った。  あなたと私は、毎日私の額とあなたの額をくっつけた。 …

とし総子
1年前
9

余情 55〈小説〉

 病院の中の光景は、夢の中の様だった。それぞれに別の場所を目当てに、年齢も性別も関係なく…

とし総子
1年前
5

余情 54〈小説〉

 はっとして、目を開けた。  私は自分の手を見た。  やせ細った手ではなかった。  見覚え…

とし総子
1年前
3

余情 53〈小説〉

 引っ越しの当日は曇り空で、蒸した空気が肌にまとわり付いて、うっとおしくて仕方がなかった…

とし総子
1年前
7

余情 52〈小説〉

 母に連絡を入れて、今の自分の状況を説明した。彼女のことを聞かれたが、詳しくは話をしなか…

とし総子
1年前
3

余情 51〈小説〉

 私の中で、あなたが笑ってくれることがあった。やさしい笑顔で、目を細めて、うすい唇は光る…

とし総子
1年前
3

余情 50〈小説〉

 私は結局大学を卒業後、声を掛けて貰った書店で働くことにした。彼女はその頃就活の追い込みをしていたので、就職祝いをしたいという申し出は丁重に断った。  二人で暮らす部屋は、変わらずに穏やかだった。時間が合わなくなった時も、彼女のタイミングをはかった接触で、糸は適度に変化しながら繋がり続けていた。  夕食に顔を合わせては話をし、時間が合えば二人で映画を見た。お互いにお金を出し合いホームシアターを買ったので、映画鑑賞会はなかなか本格的なものになっていた。見るものも、感動作や穏やか

余情 49〈小説〉

 空は透けて、風が一陣強く吹いた。朝の講義の後、私は大学内のコンビニに寄った。彩りの柔ら…

とし総子
1年前
4

余情 48〈小説〉

 新学期は穏やかに始まった。 最近は、講義でいっしょになった数人と、大学内のカフェや食堂…

とし総子
1年前
3

余情 47〈小説〉

 お正月の間、私がバイトに出てしまう以外の時間を、彼女と私は大体いっしょに過ごすことにな…

とし総子
1年前
3

余情 46〈小説〉

 あなたがこの詩集の作者のことを、話してくれたことはなかった。どうしてこの詩をあんなにも…

とし総子
1年前
3

余情 45〈小説〉

 クリスマス当日は、私のバイトが終わってから、いつもよりも少し良いものを互いに持ち寄って…

とし総子
1年前
4

余情 44〈小説〉

 彼女のコートは、結局クリスマスプレゼントに私が半分を持つことで買うことになった。彼女は…

とし総子
1年前
5

余情 43〈小説〉

 クリスマスから年始にかけて、本屋は忙しかった。包装を頼まれることが増え、また図書券もよく売れた。大量に注文を受けた図書券の包装を、手の空いた人で黙々と進めているとき、一人のスタッフが「前にいた店では何百とか頼む客がいて、残業して包んだ」という話をしていた。そこまでの数ではなかったが、いくつもの金額、個数での注文に、混ざってしまわないようにとなかなか神経を使う作業だった。売れる本の種類も、参考書やビジネス本以外の、きれいな絵がたくさん載っている本や、写真集、子供の図鑑や絵本が