見出し画像

2020年を毎月1枚の写真で振り返る(7月-12月)

1-6月の前半に続いて、7月-12月も1枚の写真で振り返ってみる。7月以降、国内各地の移動も増え始め、それに伴い新しい土地や初めましての人との協働もスタート。自分の活動がコロナ禍を経てどのように変化していくのかを考えながら2021年を迎えたい。

7月

6月下旬だったか、2019年に猿島で行った「Sense Island -感覚の島- 暗闇の美術島」で総合プロデューサーを務めた齋藤精一さんから「奈良で芸術祭を考えているんだが一緒にできないか?」と連絡が届いた。全国各地であらゆるイベントの延期や中止が決まるタイミングで芸術祭を立ち上げ開催するという逆張りとも思えるような相談に驚きつつも、面白そうな構想にキュレーターとしての参加を受諾。その月に初めて奈良県は奥大和エリアに足を踏み入れた。途中、乗り換えのために立ち寄った京都駅の閑散とした様子が印象に残っている。震災後に東京から軽自動車を走らせボランティアに向かう途中で見た、東京の不思議な静けさを思い起こすさずにはいられなかった。

8月

7月に初めて訪問した後、開催が10月3日と決まり参加アーティストの候補出しを急ピッチで実施。決まった候補者に芸術祭のコンセプトと共に招聘希望の理由を送り、スケジュールや条件などを詰めつつ全体のバランスを考えながら参加アーティストを決定していった。参加承諾してくれたアーティストの面々には、8月1週目に現地を視察してもらい、お盆を挟んですぐに最初のプラン提出を依頼した。そこから届いた内容の精査に予算や許認可の確認など、通常であれば1年以上かけて進めるプロセスを半月で突貫する超絶スケジュールでプロジェクトが動き出した。写真はアーティストの最初の視察最終日。徒歩で3-6時間かかるコースを何度歩いたのか。ビリーズブートキャンプに入隊してなければ間違いなくやられていたと思うので、ビリー隊長に心からの感謝を伝えたい。

9月

各アーティストの企画内容を詰めつつ、9月中頃に力石咲さんが現地入りを皮切りに各現場怒涛の制作がスタート。MIND TRAILは開幕までの準備期間が短かっただけでなく、吉野町、曽爾村、天川村の3エリアでの開催となったため、制作スケジュールやオペレーションを考えるのが難しかった。全体で一つの芸術祭とするためにも、各エリアに共通する作品と個別の作品をどのように組み合わせるか、コロナ対策なども考えつつ頭と身体をフルで動かし続けていたのがこの辺り。心身共に疲労困憊であったが、やはりアーティストの構想が形になり、そこに命が灯った瞬間に立ち会えるのは大きな喜びだ。その作品と来場者がどのように出会うか。制作プロセスに関わってくれた地域の人々は自分の作品として語ってくれるか。色んなことが頭をよぎりながら10月3日に向かって邁進していた。写真は9月末に行った《JIKU #006 YOSHINO》のテスト点灯の様子。金峯山寺の管長を始め吉野山の方々、吉野町の職員には本当にお世話になり色々なことが実現していったのを昨日のことのように思い出す。

10月

ノンストップで奈良での制作が続き佳境を迎える中、キュレーターとして関わった「さいたま国際芸術祭2020」の開催が迫っていた。当初3月に開催予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期が決定。一度作品を休止させるような状態で保管し、最終的に10月に開催される運びとなった。中止を決めた芸術祭も多い中で、まずは開催に向け尽力した関係者の努力には頭が下がる。特に今回は終了後に取り壊しとなる旧大宮区役所での開催となる芸術祭ということもあり、本当に開催できてよかったと思う。ただ、キュレーションしたアーティストの多くがコミュニケーションを前提にした参加型や、飲食を伴うプロジェクトを発表する予定だったため、コロナ禍によって作品の変更を迫られた。キュレーターが現場に行けない中、アシスタントとして入ってくれていた斎藤さんと、柴田さんを中心にアーティストと共に期日までに作品をまとめることができた。写真はプレスプレビューの日の一枚だが、奈良にいたため参加が出来ず。

11月

11月15日に「MIND TRAIL」が無事に終了。開催直前にGO TO TRAVELがスタートするなど、社会状況にも後押しされ多くの方に体験いただくことができた。懸念されたクラスターの発生もなく無事に開催出来たことを本当に嬉しく思う。最終日、全てのプログラム終了後に参加アーティストの菊池宏子+林敬庸の作品《千本のひげ根》に火を灯した。この地の素材で作られた作品が巨大な火と共にこの地に形を帰っていく様はとても感慨深かった。プロジェクトに関わった全ての方に感謝。

12月

2018年に富岡町(福島県)でスタートした「プロフェッショナル・イン・スクール」の活動のために現地を訪問。今年度はこれまでの活動の継続として、音楽家の大友良英さんを転校生として招聘を決定した。加えて「地域経済産業活性化対策費補助金(地域の伝統・魅力等発信支援事業)」を受け、新たなプロジェクトや情報発信の準備を進めている。その一環として1月24日には「PinSオンラインシンポジウム」を開催し、これまでの活動の振り返りと、まもなく東日本大震災から10年となるタイミングでこれからの活動について考察していく。この写真は視察中にたまたま船を洗浄中だった漁師さんの好意で、船を出していただいた時に撮影したものである。船上から福島第一、第二の原子力発電所を眺めつつ、この10年でなにが復興し、なにを復興途上と考えるのか、冷たい海風で冷える身体をさすりながら考えていた。

---
iPhoneに残る写真を眺めながら、変化の多い一年を振り返ると色んなことが思い出される。今年は例年以上に自分の周りにあるコミュニティや、運動、そしてアートに救われることご多かったように思う。急激な変化が社会に求められた2020年を経て、2021年がどのようになっていくか。目の前のことに全力でありながら、それを楽しみ新しい発見によって、自らを変化させ日々を歩んでいければと思う。

皆様どうぞ良いお年を。

サポート頂いた浄財は、アートプロジェクトのリサーチ等に利用させていただきます。