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家族の自宅介護と住宅環境のはなし②

自宅で10年にわたる介護を経験し、建築家として感じたことを自宅介護リフォームに応用しています。


1.介護する側のQOLももっと大事にして欲しい

母は52歳で倒れ、62歳で亡くなるまで、ほぼ、自宅で家族で介護をしました。
しかし、晩年は完全な寝たきりになり、家族の肉体的な疲労と10年に及ぶ介護疲れで精神的にも摩耗され、これでは健康な家族も病んでしまう、とうことで、デイサービスや短期でのホーム利用もとりいれました。

積み重なった疲弊が、家族を苦しめ、家族間で意見が合わずにギスギスすることも頻繁にありました。

本人のQOLにばかり気を取られて、介護する側のQOLが完全におざなりになってしまった結果です。

家族がギスギスすることで、逆に母にストレスをかけてしまっては本末転倒。

家族も「人間らしい生活」を保てるようにこれもまたリフォームをしたり、行政や専門機関に頼れることは頼っていこうということになりました。


2.介護人のQOLも重要です。

家族は働きながら交代で介護をしています。
まだ施設に入るには早い、50代の母は、例にもれず、施設に入ることを拒みました。

同年代の入居者は少なく、デイサービスや、短期のホーム利用でさえも本当はいやだったと思います。
しかし、もともと看護師だった母には、介護をする我々家族の苦悩も、十分すぎるほど、わかっていました。
なので、晩年はデイサービスや、短期のホーム利用にも応じてくれました。
ほんとうに、善き病人でした。

身体が叶わなくなって、一番不便を感じているのは本人です。
失語症のような後遺症もあり、思うように言葉が出ず、コミュニケーションを取れないことに、一番困っていたのも、やはり本人だったと思います。

それでも、彼女は一度も癇癪を起したことはありませんでした。

むしろ、疲弊して癇癪を起してしまったり、言わなくていいようなどうしようもない不満を口にしてしまうのは、決まって家族の方でした。

これは、言った方も、言われた方も、とてもつらいです。

やはり、介護する側のケアも、同時に大事にする必要があると感じたんです。


3.介護人ための介護リフォーム

介護人がストレスにならない環境づくりも必要だと感じ、実践したことをまとめてみました。

■介護のために必要なスペースの確保

介護が楽になるよう、介護にストレスを感じないよう、ベッド周辺の環境を整えました。
介護ベットの導入とベッド周りのスペースの確保です。
車椅子の移動スペース、おしめ交換や、床ずれにならないように一定時間ごとに退位を変えてあげたり、ご飯を食べさせたり、介護者がベッド周辺で過ごす時間は意外と多いんです。
そのベッド廻りの動線を確保し、介護人の負担を減らすことが有効です。

■バリアフリーや滑り止めの床で安全面に配慮。

介護人は健康であっても、日々疲弊していきますし、仕事をしながらの介護であればなおさら普通に疲れがたまってます。
車いすを押すときに段差で必要以上に力が必要だったり、狭くてあちこちに車いすをぶつけながらの移動は知らぬ間にストレスになっています。
出来る限り段差を解消してあげることや、廊下や入り口の幅の確保、床の滑り止めなども有効です。

また、介護人が怪我をすることも重要な損失です。
介護人のための安全の確保も重要なんです。

■緊急ボタンの設置

母の場合は筋力がどんどん衰え、大きな声も出せなくなりましたし、自分で起き上がったり、重いものを持ったりすることもできなくなっていました。
介護人は心配なのでしょっちゅう見に行かなければいけませんでしたが、それが本人が助けを求めているときに合致するとは限りません。
緊急ボタンを手元に置いてあげて、指一本でブザーを鳴らせるようになったときは、本人も、介護人もほっとしたものでした。

■介護人もしっかり休みをとる

介護は家族で交代で行っていましたが、みんな仕事をしながらだったので、その時出来る人が出来る限りやるスタイルでした。日中はともかく、夜は毎晩父が同じ部屋で睡眠をとるのですが、毎日しっかり睡眠をとることは難しいようでした。夜中に起こされたり、朝方に起こされたりして、睡眠不足になることも多く、これも放置するとまた家族のなかでいざこざに発展しかねないので、ほかに介護人がいるときは別室で十分な休息をとれるよう、スペースを作りました。

■介護用品の整理整頓


介護に必要な用具や医療機器を収納するスペースが不足していると、部屋が散らかり、居心地も悪くなりますし、何が不足してるかわかりづらく不要な買い物を繰り返し、さらに在庫が増えてしまいます。
また、外部機関にお願いして訪問介護を受けた際に、来てくれた人が物を探せないという事態にも陥り、介護効率も下がります。
誰が見ても一目瞭然なように、介護用品の収納を確保しました。

■五感が休まる環境づくり


騒音や照明、空調など、本人も介護人も不快にならない環境の整備を心がけました。とにかく長くつらい介護は家族も本人も疲弊します。
時には母にきつい言葉を投げかけてしまって後悔した日もありました。
介護されている母もきっと辛かったろうなって思います。
とにかく、思いやりを保てるような環境づくりを考えました。

4.まとめ

わたしの経験に基づく、自宅介護リフォームは、なにも親や家族のためだけのリフォームではありません。
ご自分の加齢や老化に対応するために必要なリフォームでもあるのです。

そして、自分が実際に介護を経験して感じたのは、一人ひとりに合わせて微妙にその方法や必要なリフォームが変わってくるということです。

施設などの不特定多数が利用する場所であれば仕方がないですが、ご自宅であれば、病状や体の不具合に合わせて、必要に応じたリフォームを行うことがQOLの確保をより長く継続できる鍵のような気がしています。

建築士の目線で
宅建士の目線で
賃貸不動産経営管理士の目線で
既存住宅状況調査技術者の目線で
古家を愛するファンとして
女性ならではの細やかな心遣いで

そして、
自宅介護経験者の目線で👀

患者と介護人双方にとって必要な、介護リフォームのご提案を行っています。


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