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7月家計調査・実質消費支出・前年同月比は5カ月連続減少か。7月景気動向指数・一致CIは前月差下降だが、基調判断は4カ月連続「改善」継続に。 ―日本の主要経済指標予測(2023年8月31日)―

7月家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は6月から若干改善も、5カ月連続の減少か(9月5日発表)

 6月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は前年同月比で▲4.2%と4か月連続の減少になりました。季節調整済み実質・季節調整済み前月比は+0.9%で5か月ぶりの増加になりました。ちなみに名目消費支出の前年同月比は▲0.5%で3か月連続の減少です。デフレーターの全国消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は+3.9%でした。

 実質消費支出の内訳を見ると、昨年の巣ごもり需要の反動による減少で家庭用耐久財(エアコン、電気洗濯機など)が▲32.1%減少しました。携帯電話通信料で低廉な料金プランへ移行した人の増加で通信が同▲10.6%減少しました。一方、半導体不足の緩和による自動車販売の増加や、既存車のメンテナンス需要を背景に自動車等部品などが増加し、自動車等関係費が前年同月比+12.9%増加しました。新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴い旅行需要が回復し、外国パック旅行費・国内パック旅行費などの教養娯楽サービスが同+4.1%増加し、外食も同+1.8%増加しました。

 財・サービス別の前年同月比をみると、財は実質・前年同月比▲2.9%と4か月連続の減少。サービスは、実質・前年同月比▲3.2%と2か月ぶりの減少になりました。

 7月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は▲3.8%程度と5カ月連続の減少になると予測します。前月比は▲0.6%程度の減少とみました。

 家計調査で実質化に使うデフレーターである全国消費者物価指数は、日本銀行が2%の目標に使用している「生鮮食品を除く総合」ではなく、「持家の帰属家賃を除く総合」です。「持家の帰属家賃を除く総合」の前年同月比は5月+3.8%、6月+3.9%、7月+3.9%と推移しています。デフレーターは、7月の家計調査・実質消費支出・前年同月比に対しては6月と比べて影響は同じになります。

 関連の消費統計をみると、新車新規登録届出台数(乗用車)の7月前年同月比は+11.4%で6月の+23.9%から増加率が12.5ポイント鈍化しています。一方、6月全国百貨店売上高・前年同月比は+8.6%で6月の+7.0%から1.6ポイント拡大しています。また、日本チェーンストア協会のスーパー売上高の7月の前年同月比は+4.2%と6月+2.1%から2.1ポイント増加率が高まりました。猛暑で夏物需要が出ています。商業販売額指数・小売業の前年同月比は、7月速報値+6.8%で、6月+5.8%から1.0ポイント伸び率が改善しています。猛暑で夏物需要が出ています。

 景気ウォッチャー調査の家計動向関連の現状水準判断DI・季節調整値は、1月44.2、2月50.2、3月50.1、4月50.7、5月50.7、6月50.0、7月52.8と推移しています。こうした様々なデータを総合的に判断して予測しました。

※23年7月は筆者予測

7月の景気動向指数・一致CI前月差は4カ月ぶり下降の見込み。(9月7日発表)

 景気動向指数・4月改定値で景気の基調判断は景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に、それまでの景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」から、上方修正されました。その後5月と6月では速報値、改定値とも「改善」になり、3カ月連続「改善」となっています。

 景気動向指数では、一致CIを使っての基調判断が機械的に行われています。当月の一致CIの前月差が一時的な要因に左右され安定しないため、3カ月後方移動平均と7カ月後方移動平均の前月差を中心に用い、当月の変化方向(前月差の符号)も加味して行われます。基調判断は「改善」「足踏み」「局面変化(上方へのor下方への)」「悪化」「下げ止まり」の5つがあります。

  一致CI前月差・6月速報値は+0.9の上昇でしたが、6月改定値で労働投入量が前月差寄与度▲0.03で加わったことや商業販売額指数・小売業の前年同月比が確報値で鈍化したことなどで、前月差は+0.8に下方修正になりました。
 
 7月速報値の一致CIは前月差▲1.1程度の下降と予測します。一致CIの第1系列である鉱工業生産指数・7月速報値・前月比は▲2.0%の低下となりました。全体15業種のうち、輸送機械工業(除、自動車工業)、自動車工業など5業種が上昇、生産用機械工業、電子部品・デバイス工業など10業種が低下となりました。

 一致系列で、速報値からデータが利用可能な8系列では、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数の3系列が前月差寄与度プラスに、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、有効求人倍率の5系列が前月差寄与度マイナスになると予測しました。

 7月の先行CIは前月差▲1.3程度の下降と予測します。速報値からデータが利用可能な9系列では、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数の4系列が前月差寄与度プラスに、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新設住宅着工床面積、マネーストック 、中小企業売上げ見通しDIの5系列が前月差寄与度マイナスになると予測します。

※23年7月は筆者予測

7月の先行DIは55.6%と2カ月連続50%超、一致DIは37.5%と2カ月ぶりに50%割れか。

 7月の一致DIは37.5%程度と2カ月ぶりに景気判断の分岐点の50%を下回ると予測します。7月の一致DIでは、データが利用可能な8列中、商業販売額指数・小売業、輸出数量指数の2系列がプラス符号に、鉱工業生産財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の2系列がプラス符号に、生産指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、有効求人倍率の4系列がマイナス符号になると予測します。

 7月の先行DIは55.6%程度と景気判断の分岐点の50%を2カ月連続上回ると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列中、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数の5系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数、マネーストック、中小企業売上げ見通しDIの4系列がマイナス符号になるとみました。

7月・8月も景気基調判断は「改善」継続の可能性が大きい

 7月でも景気の基調判断は4カ月連続で「改善」になると予測します。景気拡張の動きが足踏み状態になって いる可能性が高いことを示す「足踏み」に下方修正されるための条件は、「当月の前月差の符号がマイナス」かつ、「3カ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差分(1.16)以上」です。一致CIの前月差は下降になると予想されますが、3カ月後方移動平均(前月差)が▲0.07程度の小幅マイナスにとどまると予測されるため、7月でも景気の基調判断は「改善」が維持される可能性が高いと思われます。

 一致CI採用第1系列の生産指数(鉱工業)の先行きを製造工業予測指数でみると、8月前月比+2.6%の上昇の見込みです。しかし、過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、8月分の前月比は先行き試算値最頻値で▲1.4%の低下になる見込みです。90%の確率に収まる範囲は▲3.1%~+0.3%となっています。

 生産指数からみて、8月の一致CIの前月差がマイナスになる可能性もあります。但し、7月の予測などが正しいとすると、一致CIの3カ月後方移動平均(前月差)のマイナス幅が振幅目安の標準偏差▲1.16になるためには、8月の前月差が▲3.0以上の大幅マイナスになる必要があると思われます。そのため8月も景気の基調判断は「改善」にとどまる可能性が大きいと思われます。
 

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。