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4~6月期法人企業統計からみて設備投資は下方修正で前期比マイナスに転じると予測。民間在庫変動は変わらず。4~6月期実質GDP第2次速報値は年率5%台に下方修正か―日本経済の主要経済指標予測(2023年9月1日)―

4~6月期法人企業統計・設備投資(除くソフトウェア)前年同期比+4.4%、季節調整済み前期比▲1.2%減少

 4~6月期の法人企業統計調査の全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の前年同期比は+4.4%と、1~3月期の前年同期比+10.0%から5.6ポイント鈍化したものの、9四半期連続の増加になりました。1~3月期で前年同期比+10.7%の増加だった製造業は、4~6月期では同+4.0%へと6.7ポイント増加率が鈍化しました。非製造業は1~3で前年同期比+9.6%の増加でしたが、4~6月期では同+4.6%の増加と5.0ポイント増加率が鈍化しました。
 
 4~6月期・全産業(金融業・保険業を除くベース)設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の季節調整済み前期比は▲1.2%と5四半期ぶりの減少になりました。製造業は+1.2%と3四半期連続の増加、非製造業は▲2.5%と5四半期ぶりの減少です。
 
 供給サイドのデータに基づいて算出した4~6月期GDP第1次速報値では、名目設備投資の前期比は+0.8%で、前年同期比は+6.2%と9四半期連続の増加になりました。しかし、1~3月期の前年同期比+8.4%の増加から2.2ポイント伸び率が鈍化していました。
 
 一方、法人企業統計では全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の前年同期比は1~3月期から4~6月期にかけ5.6ポイント伸び率が鈍化しました。法人企業統計の方が3.4ポイント大きく伸び率が鈍化しました。

4~6月期実質GDP第2次速報値で、実質設備投資は前期比▲0.8%程度に。ソフトウエア上方修正だが、法人企業統計弱く、第1次速報値の前期比0.0%から下方修正か

 4~6月期GDP第1次速報値で、供給サイドのデータに基づいて算出した、4~6月期の設備投資供給側推計値・名目原系列前期比は▲12.1%、また供給側推計値の情報を用いて仮置きした需要側推計値の名目原系列前期比は▲31.2%であると公表されていますが、4~6月期法人企業統計調査・全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の原数値ベースの前期比は▲34.3%となり、仮置き値より3.1ポイント悪い減少率になりました。
 
 特定サービス産業動態統計でソフトウエア開発・プログラム作成の4~5月分平均前年比は+10.2%でしたが、4~6月期の前年同期比は+11.3%と増加率が拡大しました。ソフトウエア投資の部分は上方修正要因になりそうです。
 
 総合的に判断すると、4~6月期GDP第2次速報値の実質設備投資は前期比▲0.8%程度と、第1次速報値の同0.0%(+0.02%)から下方修正されると予測しました。
 
 4~6月期のGDP第1次速報値の名目民間在庫変動・原数値は1兆7,186億円で22年4~6月期の2兆779億円からは▲3,593億円と減少でした。23年4~6月期GDP第1次速報値では民間在庫変動・名目原数値・前年同期比寄与度は▲0.3%でした。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえませんが、4項目中マイナス寄与は2項目、どちらも仮置き値で、マイナス寄与が大きな方から原材料在庫、仕掛品在庫の順になっていて、プラス寄与は2項目、プラス寄与が小さい方から、製品在庫、流通在庫の順だということです。
 
 4~6月期の法人企業統計では、原材料・貯蔵品在庫は前年同期差▲2兆1,240億円のマイナス、仕掛品在庫の前年同期差は▲1兆2,419億円のマイナスで、ともに仮置き値と整合的な数字になっています。このため、GDP第2次速報値の民間在庫変動・名目原数値・前年同期比寄与度は第1次速報値と同じ▲0.3%程度になるとみました。

実質GDP第2次速報値では、実質個人消費・実質設備投資の民需の2大項目が減少となる厳しい内容。但し、自動車輸出やインバウンド需要が強く、前期比年率5%台の伸び率は維持か

 9月8日に発表される1~3月期第2次速報値では、本日の法人企業統計の発表を受けて、設備投資、民間在庫変動、公共投資などを中心に改定されるとみられます。
 
 4~6月期第2次速報値では、実質設備投資は前期比▲0.8%程度と、第1次速報値の同0.0%から下方修正になると予測します。一方、実質民間在庫変動・季節調整値・前期比寄与度は第1次速報値と同じ0.0%程度になるとみました。
 
 また、公共工事出来高の前年同月比は4月+8.3%、5月+9.6%でしたが、6月は+3.0%に鈍化しました。このことから、6月が加味された第2次速報値の実質公共投資の前期比は第1次速報値の+1.2%から+0.7%程度に下方修正されると予測します。
 
 4~6月期GDP第2次速報値で、実質GDPは前期比+1.3%程度、前期比年率+5.4%程度と予測します。第1次速報値の前期比+1.5%、前期比年率+6.0%からは、実質民間在庫変動の寄与度は変わらないものの、実質設備投資と実質公共投資が下方修正要因になり、実質GDPは下方修正されそうです。実質個人消費・実質設備投資の民需の2大項目が減少となる厳しい内容です。但し、自動車輸出やインバウンド需要が強く、外需が牽引する形で前期比年率5%台の伸び率は維持できると思われます。


※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。