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効率よりも充実感。育児で必要な時間との向き合い方

産後、赤ちゃんとの生活で心身ともに疲弊、時間に追われる中で、いつの間にか赤ちゃんとの時間を楽しむ余裕がなくなってしまったわたし。

そんなとき出逢った一冊の本は、わたしの時間に対する考え方をガラッと変えてくれた。

育児で大切なのは、時間の効率化よりも充実感。

時間との向き合い方を変えることで、日々の生活は好転していった。心が満たされ、人生がより豊かに感じるになった。

いま、育児で心身が疲弊し、赤ちゃんとの時間がたのしめなくなっているお母さんたちへ。

効率的なスケジュール管理で自己満足感を得ていた仕事

毎日、テトリスのように次々に上から降ってくる仕事上のタスク。
大小さまざまなタスクを24時間という限られた時間枠の中に綺麗に詰め込んで、消化していく…..。

以前のわたしは、たくさんのタスクを効率的にこなすことに一種の自己満足感を味わっていた。

達成度が一目で分かるTo Doリストや、予定がびっしり埋められたバーチカル手帳は、達成度合い次第で、わたしの自己肯定感を高めたり下げたりした。

時間に追われるようになった育児生活

たくさんのタスクを効率的にこなすことに喜びさえ感じていたわたしは、妊娠・出産を機に効率重視では回らない生活に苦しみ始めた。

赤ちゃんが泣けば、家事はストップ。目の前にはいつも、やりかけの洗濯物、食べっぱなしのお皿、作成途中の書類…..。はじめての育児で知りたいこと、調べたいこともいっぱいある。けれど授乳にオムツ替え、抱っこのために両手は塞がっているから、手が動かせない。

頭だけは空いているから、常に頭の中は次々と溜まっていくタスクでフル稼働。といっても、産後の疲労と夜泣きで寝不足の脳みそは、フル回転というよりも空回り状態だ。

大切な赤ちゃんとの時間のはずが、常にやりかけの家事、知りたい育児情報のことで頭がいっぱいで、時間に追われる日々を送っていた。

「スケジュール管理」によって失っていたもの

そんなとき。「時間」がテーマの児童書「モモ」に出会った。児童書なら、産後の頭が回らない脳みそでも読めるだろうと、赤ちゃんの絵本を借りるついでに、図書館で借りた本だった。

物語の主人公は、廃墟の劇場あとに住みついた、身なりもみすぼらしい少女「モモ」。モモたちが暮らす街に、ある日、時間どろぼうたちがやってくる。

「生活を豊かにしたいなら、時間を節約するように」

大人たちはみな、時間どろぼうに言いくるめられ、せかせかと生活するようになる。


効率化優先によって、人々の仕事はただの「作業」になり、仕事に対する愛情や誇りを失っていく。
新しいモノ・コトを生み出す暇もなくなり、コピーを大量生産するようになる。大切な人との時間も、減らしてしまう。

全ては時間の効率化のため、時間の節約のため……

わたしは街の人々にじぶんの姿が重なっていた。仕事のタスク管理に追われる育休前のわたし。そして、赤ちゃんとの生活で疲弊している今のわたし…..。当時生後2ヶ月の赤ちゃんを育てていたわたしは、何か今の生活を少しでも楽にするヒントが欲しくて、隙間時間を見つけては「モモ」を貪り読んだ。

光を見るためには目があり、音を聞くためには耳があるのとおなじに、人間には時間を感じとるために心というものがある。そして、もしその心が時間を感じとらないようなときには、その時間はないもおなじだ。

ミヒャエル・エンデ (著, イラスト), 大島 かおり (翻訳), "モモ", 岩波少年文庫

心豊かに過ごした時間の積み重ねが、人生

そもそも、時間そのものには価値がない。一人、もしくは誰かと、何かをして過ごし、何を感じたかによって、はじめて価値がつく。

時間はただの概念だ。時計やカレンダーは、時間そのものではない。「時間」という概念を可視化して定量化したものが時計やカレンダーだけれど、時間を定量化してしまったことで、人々は「同じ長さの時間=同じ価値」と見なしてしまうようになってしまった。

同じ時間の長さでも、人それぞれの価値観、そして過ごした時間の中身や味わった感情で、価値は全く違う。そして自分らしく、心豊かに過ごした一日一日の時間の積み重ねが、人生となる。

時間をはかるにはカレンダーや時計がありますが、はかってみたところであまり意味はありません。というのは、だれでも知っているとおり、その時間にどんなことがあったかによって、わずか一時間でも永遠の長さに感じられることもあれば、ほんの一瞬と思えることもあるからです。なぜなら、時間とは、生きるということ、そのものだからです。そして人のいのちは心を住みかとしているからです。

ミヒャエル・エンデ (著, イラスト), 大島 かおり (翻訳), "モモ", 岩波少年文庫

心を満たす時間でわたしの人生を生きる

時間どろぼうに時間を奪われていた大人は、まさにわたしだった。

「モモ」を読み終えたわたしは、これまでの手帳を開いてみた。そこには、日々の予定やタスクがぎっちり埋められていたが、私のその頃の「心」は残っていなかった。毎日、自分なりに何かを感じ、考えて、一所懸命生きていたはずなのに。

タスクをさばくことより、心を満たす時間を大切にしよう。

わたしは時間泥棒から時間を奪い返し、より満たされた時間を過ごすことを決めた。そして、じぶんの心の動きを観察し、手帳に記録することにした。その日わたしが知ったこと、感じたこと、気づいたこと。

自分の人となり、価値観が滲み出るような時間の過ごし方を重ね、わたしらしい人生を生きたい、と思った。

より少なく、よりよく。時間の密度を高める

それからは今の状況に目を向け、必要でないことを削ぎ落とし、大切にしたいことに時間を多く割くことに集中するようになった。

具体的にしたことは、主に次のようなことだ。

1、「作業」を分ける、減らす

毎週末、やるべきことを洗い出した。同時に、いま何を一番大切にして過ごしたいか。そのために、何をやめるか、何をするかをじぶんに問い、手帳に記した。

わたしでなければダメなこと、わたしでなくてもいいことは何か。いわゆる「作業」はばっさり切り捨てた。やめるか、夫にお願いするか、それとも購入したり外注できないか検討した。

とにかく自問自答を繰り返し、取捨選択を重ねた。

2、過ごした時間の「心」を観察、記録する

じぶんの心をよく観察したり振り返り、手帳に記録した。どんなことをしたときに充実感を感じたか、充実感を得られなかったか。どんなときにどんな感情が湧いたのか。

すると、もっと大切にしたい時間、増やしたり減らしたい物事が見えてきた。じぶんの正直な気持ちにも気づくようになった。

3、じぶんの心に従い、心を満たす時間を過ごす

「育児より大事な家事はない。けれど、家族のことを常に100%でやっていると、自分のキャリアに不安と焦りを感じ、不安定な気持ちになる。」

これがわたしの心を観察することで見えてきた、正直な気持ちだった。

わたしはじぶんの正直な気持ちに従い、赤ちゃんとの時間、そしてじぶんのキャリアのために時間を割くようにした。

赤ちゃんが寝てる時間は、これまで家事や情報収集していたが、自分のための時間にした。自分がいま、一番したいことをした。勉強する、本を読む。睡眠不足の時は、無理せず赤ちゃんと寝た。

自分のための時間を過ごすことで、キャリアから離れてることの不安や焦りの解消もできるようになった。新しいことをはじめる余裕も生まれてきた。

最初の頃は、今までできていた家事ができない歯がゆさと、夫への申し訳なさがあった。昼間仕事をしている夫にも家事を負担させたり、自治体や民間のサービスを利用することに対する後ろめたさがあった。

けれど、心の余裕がないと赤ちゃんとの時間もただの苦痛になってしまう。心がなければ赤ちゃんとの時間はただの作業の時間になってしまう。少しづつ、できることから手放していった。

時間の価値を高めることは、自分の気持ちと向き合うことだった

結局、悟ったのはマインドフルネスの重要性だった。

「いま、この瞬間の目の前のことに向き合うこと。そして、いまの自分の気持ちや状態を観察すること。」

育児中はどうしても赤ちゃんや家族、家事などを優先してしまい、じぶんのことを後回しにしてしまいがちだ。けれど、そこに心がついてこなければ、それは「作業」となってしまう。「作業」なら、他人に外注しても変わらない。

今に目を向け、自分の気持ちや価値観と向き合う作業が、家族との時間、じぶん自身の時間の密度を高め、人生を豊かにしてくれると学んだ。

仕事への焦りを感じたまま、時間に追われて育児をこなす日々に疲弊し、赤ちゃんとの時間も楽しめていなかった過去のわたしへ。

一度立ち止まって、深呼吸しよう。
今この瞬間、目の前の大切な物事やじぶんの心に、もっと意識を向けてあげよう。

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