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Take it easy

とある人に「気楽に生きよう」と言われた。
「気楽に生きよう」は気楽に生きられない私にとって少し暴力的なひびきを持つ。
でもその人の言わんとしていることが私には分かるし、生き方のタイプが違う私に敢えて「気楽に生きよう」と伝えてくれるのだから、それほど大切なメッセージなのだろう。
だから私は今しばらく、この少し暴力的なひびきに殴られていたい。

◇◇◇

さて、4年前の買い物中に、あるバッグの前で引き寄せられるように立ち止まった。
そのバッグにはよく見ると「Take it easy(気楽に行こう)」と書かれている。
当時の私は「馬鹿をおっしゃい」と思ったが、なぜかそこから動けずに、ついにバッグを購入してしまった。一番苦手な言葉だった。

でもこの「Take it easy」は、あの頃の私に必要なメッセージだったのだと、今になって思う。
だって、あの頃の私には「気楽に行こう」なんて言ってくれる人はいなかったのだから。

◇◇◇

時が経ち私にも「気楽に行こう」と言ってくれる友人ができた。
私には全く似合わないし叶うはずがないと思っていた「気楽」という言葉を容赦なく浴びせてくる人である。
この友人は少し不躾なところがあるが、私はそこがとても気に入っている。
こういうことを言えるようになったあたり、私はもうその友人にかなり影響を受けている気がするが、人間らしくなったので気にするまい。
そうやってその人のような気楽さも、いつのまにか備えていたいものだ。

◇◇◇

とはいえ、何の努力もせずに「気楽になれない」と言うのはやめよう。
私は、気楽になるために何から始めるか考えた。
初めは簡単なことがいい。
そうだ、あのバッグを持って積極的に出かけよう!
どこかで少し馬鹿にしていた「Take it easy」を身に纏い、そこらじゅうを歩きたい気分だ。
それで何かが大きく変わるとは思えないけれど、しっくりこないその言葉を纏うことで、この言葉は人ごとじゃないんだと、馬鹿にすることじゃないんだと思いたい。
自分の好きな言葉だけで、好きなタイプの人だけで固めていた私の人生とも、これでさよならする。

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