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日曜の朝5時、ベルリンのクラブへ 〜お弁当持ってベルグハイン編〜(Lv.6)


日曜日の朝5時に起きて、火曜日までパーティーへ行こう

インスタをするする見ていたら、アフターパティー用サプリメントの広告が出てきた。その名も「Happy Tuesdays」。え、「Happy Mondays」の間違いじゃなくて??

https://happytuesdays.com/products/happy-tuesdays-rave-recovery-packs

いや、ベルリンではこれが正しいのだ。ベルリンのクラブカルチャーを理解して、正しくマーケティングされた良いネーミングだ。だって、良いパーティーの山場はいつだって日曜日の夜中から月曜日にかけてなんだもんね。もちろん金曜日とか土曜日の夜から行くのもアリだけど、いろんな要素を鑑みると、日曜日の朝5時とかに行くのが最も間違いない。
で、月曜日の昼くらいにクラブを後にし、そっから誰かんちでアフターパーティー。火曜日になる前に、くったくたになって帰るんだ。このサプリメントはその瞬間の活躍を狙い開発されている。ほえぇぇ、頭が上がりませぬ。

リュックにパスタつーめて♪いざ、ベルグハインへ

ベルリンのクラブと言えば、まずはベルグハインが圧倒的な存在だ。約10年前、当時エレクトロニックミュージック誌の編集ライターをやっていた私は、ありがたいことに東京のクラブ関係者の皆さまにはそれはそれはすごく良くしていただいていて。そんなもんだからすごく勘違いしていて、「まー入れるよねん!」と高を括り(今思い返すとひどく浅はかで愚かだ)、鼻歌混じりでベルグハインに行ったんだ。
幸い30分くらいしか並ばなかったけど、いざ私たちの番になり、バウンサーと目が合ったのを合図と受け取り、準備してきた一言、「ツヴァイ、ダンケ(二人です、ありがとうございます!)」だけを言わせてもらったら即、「ナイン、ダンケ(ダメです、ありがとう)」と言って帰り道の方向を指差された。

ベルリンに越してから約1年間、トラウマを克服できずにベルグハインを避けてきた。ドイツ人だろうが入れない人は入れない。氷点下の真冬に7時間並んだって入れない人は入れない。彼の判断基準は、彼のみぞ知る。そんな感じで「世界で一番神に近いバウンサー」が門番をつとめるクラブ、それがベルグハインなのだ。

だからこそ、一旦入れたらもうそこは楽園か、はたまた終焉地か。6時間と言わず12時間、いや24時間、帰れないからお弁当持っていく人も少なくない。イタリア人の友人はパスタ詰めていくらしい。

女子にとっては幻の「スナックス」

ベルグハインがオープンするのは土曜日の夜。併設しているパノラマバーがまず先に金曜日の夜にオープンし、さらにもうひとつ併設しているラボラトリーでも、たまに「スナックス」というゲイパーティーが同じく金曜日?木曜日?から開催されている。

でね、この「スナックス」、当然私は行ったことがない(入れない)んだけど、こんな噂を聞いたことがあって。ベルグハインよりも何よりも、スナックスの後のトイレ掃除がこの世で一番やばいと。
参考までに、例えば日曜日の午前中時点のベルグハインのトイレをわりと控えめな言葉で描写すると、まるで梅雨時期の月曜の朝の通勤ラッシュ中の東横線車内みたいな感じ。床はびしゃびしゃで、汗と酒と下水の臭いが入り混じる。大きく異なるのは、全員ほぼ裸体ということと、そこがトイレであるということ。個室のドアが開くと大体6人くらい出てくるけど、中で何してるかはおおよそ予測がつく。
だけど「スナックス」に関しては、想像もつかない。行ったことのある人以外にとっては未知の世界だけど、とにかくパーティー終了時のトイレの空気がこの世のものとは思えない臭いをしているらしい。わはは。

ベルグハインのオープンと共に解き放たれるドア

で、土曜日の夜中だか日曜日の朝だか(忘れた)に、パノラマバーとラボラトリーとベルグハインとを隔てるドアがそれぞれ開放されるんだ。それはすなわち、「スナックス」でいろんなものにまみれ、すでに境地へと達しつつあるワイルド(訳:野生味溢れる)な人たちが、まるで新たな水源を求める大群のバッファローのように、ベルグハインへとマイグレートしてくるのだ。私は「スナックス」がやってる週末には、ベルグハインに行ったことがない。

知りたいなら行くしかない。でも知らなくてもいい。

ちょっと楽しくなってきちゃって若干ふざけちゃったけど、全部本当の話。文字通り臭くて汚くて暗くて奇しいけど、ただそこにいる人たちの笑顔はめちゃくちゃ眩しいんだ。人間って美しいんだ。こんな場所があるなんて、世界は本当にでっかいなぁ。

これでも、私よりももっとずっと前からベルリンに住んでベルグハインに通ってきた人たちは、「前はもっとスペシャルだったんだよ」と口を揃えて言う。これでも、エントランスだってだいぶ緩くなったらしい。やっぱり天下のベルグハインだって、コロナの時期にあと少しで閉店のところまで追い込まれた。どんなに偉大なものだって、時代とともに変わらざるを得ない。

次行った時に入れるかわかんないし、これを進化というか後退というかわからないけれど毎週末変わっていってるし、いつかスン、と突然なくなってしまうかもわからない。だけど普通に仕事してたらまぁ普通は月曜日も火曜日も仕事あるから物理的になかなか行けないし、行けたとしても行くか迷う。何度か行けたから、仮にこの先二度と行く機会がなかったとしても悔いはない(笑)。そうだね、これを読んで「行ってみたい!!!」ともし強く思ってくれた人がいたら、その時はぜひ全力で行くことをおすすめします。しっかりごはん食べてからね。


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