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ガラスペン、はじめました。

出会いは突然に。

ガラスペンを買った。
一応言い訳をしておくと、店に行った時点では全く購入するつもりはなかった。ただ、運命の出会いをしてしまったのだ。

2022年夏。
筆者は悩んでいた。今の仕事が自分に合ってない気がする。

その頃の筆者は、仕事の悩みを文房具を買うことで慰めるという刹那的な行為をしていた。その日も、仕事でなんか嫌なことがあった日だったと記憶している。内容までは記憶していない。
とにかく、仕事を早めにあがって文房具店に行ったのだ。自分への慰めとして万年筆のインクを買うために。

インクは小瓶のものなら数百円から買える。慰めとして時々買うのにはちょうどよかった。その日も、万年筆のインクの取り扱いが豊富な最寄りの文具店に赴いたのだ。目的はパイロットの色彩雫の「紫陽花」というインク。青寄りの紫で、爽やかな色なので夏な気分に良いかなと思って購入しようと思っていた。最寄りのその店では、色彩雫の小瓶が単体で買えるのである。

入店し、目的のインクを発見して手に取る。このあたりはカジュアルな店だ。
インクのずらりと並んだ棚に、様々なメーカーのインクが並んでいるのを眺める。ついでに万年筆の洗浄キットがお手頃で売られていたのでそれも手にとった。
そしてなんとなく、視線を上に上げたとき、目が合って(?)しまった。運命のガラスペンに。

「銀河」と書かれた文字。星をイメージしたであろうシルバーのラメが入った美しいガラスペンが、高級感ある黒い箱に収められてガラスケースの中に展示されていた。
ガラスペンは「いつかは……」とは思いつつも使いこなせないだろうと思って手を出していなかった筆記具だ。筆者は万年筆にとても満足していたし、お気に入りのボールペンも持っているし、これ以上新しい筆記具なんて必要ないと思っていた。あと、万年筆以上に書き心地の良い筆記具なんてないと思っていたのもある。
とにかくそのペンは工芸品、芸術品としての美しさを兼ね備えていた。
しかも「銀河」
宇宙大好きな筆者のハートに瞬時に刺さったのは言うまでもない。

その後数分、インクと洗浄キットを手に店内をうろついて、他のペンやノートを眺めつつ、ガラスペンのことを考えていた。値段はペンとしてそこそこいい値段がする。ちょっと衝動買いするには考える程度だ。
しかし、これは運命の出会いかもしれない。ガラスペンは職人のハンドメイド。一回出会いを逃して、また次にこの文具店を訪れる機会があっても、その時まであのガラスペンが残っているとは限らない。

そうして自分への言い訳を完了して、店員さんに話しかけて銀河のガラスペンを見せてもらうことにした。もう、店内の他の品物は目に入っていなかった。
ガラスペンは細字でとても繊細だった。
手作り感ある軸の中に細かい銀色のラメが入っており、しかも暗闇で光る蓄光のつぶつぶも入っているらしい。なんてロマンのあるペンだろう。

即決し、数分後には筆者はガラスペンとインクの入った袋を手に文房具店をあとにしていた。

ガラスペンの使い心地は?

あくまで万年筆を日頃使っている筆者の感覚だが、やはりというかなんというかカリカリとした下記味だった。
音がガラスっぽくて面白い。万年筆はあんまり音が出ないが、高いガラスっぽいカリカリした音が出るのはガラスペンならではだろう。
筆者の購入したものは軸の内部に装飾があるもので、外側は至ってシンプルなため、重心や持ったときの感覚は普通のペンだった。悪くない。

ペン先にくびれている部分があって、そこに指を置くとちょうどよい角度でペンを当てる事ができる様になっている。
そして見た目にも心地よい。
銀色のラメの効果で、光があたった部分がキラキラと煌く。そして、明かりを落とすとペン内部がぼんやりと光を発するのだ。これが子供心みたいなものを刺激してとても楽しい。徐々に目がなれてきてペンが光ってるのが見えるようになるのも、本物の星空っぽい。

ガラスペンは繊細なのでガラスのボトルに入っている万年筆インクから直接インクを取る際、ペン先をぶつけると危険なので100均でプラスチックの化粧品を入れる小さいケースを買った。インクをボトルからこの容器に移して、そこからペンにインクを取るようにすることで、インクを付ける際の不注意でペンを破損させることが避けられる。
また、水の入れ物も100均で買った。調味料を入れるようのプラスチックの使い捨て容器。特筆すべき点は蓋がついているので、蛇口のある場所から机に移動するまでの間にうっかり水をこぼす心配が少ない。これでペン先を洗って、インクを手軽に変更することができる。なるほどこれは万年筆にないメリットだった。
筆者はお気に入りのインクがほぼ固定されてしまっていて、新しいインクを買っても結局パイロットのBBに戻るというのを繰り返している。したがって、BB以外のインクの減りは極端に遅かった。

それが、このガラスペンを買ってことで変わった。
ペンと同時に買った色彩雫もそうだが、その他の手持ちのカラーインクも色々と使うようになった。
以前の万年筆記事で書いた「ジャーナリング」を、ときどきガラスペンでもするようになった。ブルーブラックばかりのノートがカラフルになった。もともと保存用でもないので、遠慮なく染料インクを使えるのは、ジャーナリングのメリットかもしれない。

さて、以降では冒頭以外で一切出てこなかったガラスペンの画像を貼っていこう。制作は福井のガラス工房、スタジオ嘉硝さん。

インクをつけた状態

軸はもちろんのこと、ペン先も細く繊細で美しい。

下記味は最初カリカリしていると書いたが、購入してしばらく使っていると慣れたのかペン先が摩耗したのか、多少なめらかな書き味になった気がする。長文筆記にも耐えうる筆記感である。

というわけで今回は筆者初のガラスペンとの出会いと第一印象を書いてみた。今後しばらく使っていって、また変わるかもしれないし、ペンが増えるかもしれない。
すでにもう一本ガラスペンが欲しくなっている。今回購入したペンが細字のため、もうちょっと字幅が太いガラスペンがあったらいいなーと思うようになったのだ。

なので近々ガラスペンは増えるだろう。ガラスペン、案外たのしい。
ガラスペンは安いものなら1000円程度から買えるため、万年筆なんかに手を出しづらいと思っている人にもぜひともおすすめしたい筆記具だと思った。

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