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今さら聞けない! 『紅麹』 って何?

 こんにちは!Dr. 不老長寿です。
 みなさん、『紅麹』問題は最近よく耳にするのではないでしょうか? 紅麹を使った機能性食品の摂取したとされる死者が五人に登り、企業の危機管理や機能性食品に対して注目が集まっております。
 今回は、そもそも紅麹はどんな目的サプリメントとして製品化されているのか、今回の問題が起きた原因の考察について記事にしたいと思います。



1. 紅麹はコレステロールを下げる

 紅麹とは、米や大豆などの穀物にモナスカス属のカビ(ベニコウジカビ)を発酵させて作られるもので、アジアの一部の国では主食とされています。紅麹に含まれるモナコリンKという成分が、コレステロールを下げる作用があり、これを目的にサプリメントとして販売されています。

▶︎ コレステロールが高い病気である ”脂質異常症” とは

 脂質異常症とは、血液中の脂質(コレステロール、トリグリセリド、リン脂質など)が過剰な状態のことです。脂質異常そのものが悪いわけではなく、脂質過剰により組織に脂質が沈着することによる機能障害が問題となります。
 例えば、血管にコレステロールが沈着すると血管機能が低下することで、動脈硬化となり、最終的には心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる病気から、EDや薄毛などのQOLに関わる病態にまで関連します。
 診断は、基本的には血液検査で行います。

引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-004.html

 上記のように、脂質異常症と言っても脂質のどの成分が以上なのかによって投薬内容が変わります。
 脂質の最適化に共通して重要なことは、低脂肪食、体重コントロール、規則的な運動習慣、禁煙です。

▶︎ 紅麹がどのようにコレステロールを下げるのか

 紅麹は、紅麹菌が産生するモナコリンKが持つ強力なHMG-CoA還元酵素阻害作用により、肝臓でのコレステロールの生合成を抑制することで、コレステロール値を下げます。脂質異常症に対してコレステロールを下げる医薬品であるロスバスタチンもまさにモナコリンKが主成分のため、医薬品と同じ成分が入っています。
 一般的に、脂質異常症に対する治療ではロスバスタチン(モナコリンK)2.5mgから開始し、最大で20mgまで処方することがあります。紅麹に含まれるモナコリンKの量は一般的に2400mgあたり7.2mgと言われています。したがって、紅麹を薬800mg摂取すると、ロスバスタチン2.5mgとほぼ同等のHMG-CoA還元酵素阻害作用が期待できます。
 以上のように医薬品と同等の成分を含む非常に強力なサプリメントであり、その分リスクも大きいです。

▶︎ 紅麹のリスクとは

 医薬品の原料にもなる紅麹ですが、ビタミン・ミネラルのような一般的なサプリメントと比べてもちろん大きなリスクがあります。

1. 横紋筋融解症
 横紋筋融解症とは、骨格筋を構成する細胞が融解・壊死することで筋肉痛や脱力から始まり、歩行困難や腎不全を引き起こす病気です。明確な原因はわかっていないですが、HMG-CoA還元酵素阻害作用によるCoQ10の減少による筋細胞の機能障害やエネルギー代謝の障害、コレステロール減少による細胞の脆弱化、筋細胞の免疫過剰反応の促進などが示唆されています。

2. 肝障害
 肝臓で代謝されるため、肝臓に負荷がかかり重度の肝障害を引き起こすことがあります。

3. カビ毒による腎障害
 紅麹の発酵が不十分の場合、シトリニンというカビ毒が含まれる場合があり、これが腎不全を引き起こすことがわかっている。

2. 今回の紅麹問題について

 紅麹問題とは、小林製薬の紅麹の成分を含む健康食品を摂取した人が、急性腎不全を含む健康被害を生じ、複数の死者も出ている問題のことです。

 腎不全を発症したとのことで、前述した原料の紅麹の発酵不良によってカビ毒『シトリニン』が発生したためではと思われていましたが、実際に検査で同定された成分は『プベルル酸』とのことでした。

▶︎ プベルル酸とは

 プぺルル酸とは、アオカビの代謝産物であるカビ毒の一種です。毒性は非常に強く、皮下投与によるマウスの実験では、5mg/kgを2日の投与で5匹中4匹が3日目までに死亡しました。元々は、マラリアの薬として注目されていましたが、毒性が強く実用化されていないようです。今回の腎障害との関連は明らかではないが、原因となる可能性は十分に考えられます。

▶︎ アオカビはどこから来たのか

 ベニコウジカビとアオカビは、別物なので本来は混入するはずはありません。しかしなぜ今回混入したのか? 残念ながら原因は解明されておりません。
 実は、アオカビはコレステロールを下げるお薬である、プラバスタチンの原料です。もしかすると同じ原料工場で、ベニコウジキンからロスバスタチンの生成とアオカビからプラバスタチンの生成を行っていて、管理体制の脆弱性からか混入した可能性なんかも考えられそうですね。(完全に妄想ですが)
 いずれにせよ、製品として供給する前の安全管理の杜撰さが露呈した問題でした。

3. おわりに

 今回の紅麹問題は、製造過程の管理の杜撰さが露呈した事件でした。
 それに付随して、サプリメントへの危険視も叫ばれるようになってしまったのもDr. 不老長寿としては非常に残念です。

 不老長寿にサプリメントは必須です。

 ただし、それはあくまでも代謝を最適化させるために、5大栄養素を個人の状態に合わせた最適量を摂取することが土台です。正しいサプリメテーションの普及のためには、全ての人のリテラシーを向上して、医療を身近にし、しっかりと検査と連携しながら最適なサプリメンテーションを受けられる仕組みを作ることが必須です。そしてこれが、日本の不老長寿大国化に重要である一つのソリューションであることを際に認識しました。

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