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赤もみじ ドキュメンタリー「道程」

今年9月から活動休止していた赤もみじが解散した。
そう決まったライブでたくさん笑ってきた。
笑うとは反応に過ぎず、楽しいと笑うはイコールではないのだと身をもって知るライブだった。あんなに笑ったのに、やっぱり「道程」の一連にはモヤモヤする。
終演後にそう感じないように、楽しかったと思いながら帰るために、客席でたくさん笑おうという気持ちが働いたのかもしれない。

あの場を”面白い”で締めるには、ブチギレた村田が解散を宣言する以外の筋がなかったように思う。他の選択でも勿論良かったかもしれないし、そうであってくれと思う人もいただろうけど、あれを見せられたらあれ以上はないと思ってしまう。

それは、ライブが解禁された日から2週間で計4本、YouTubeで公開された赤もみじドキュメンタリーの成果とも過ちともいえる。
何も知らされず企画に巻き込まれ続けた村田に「道程」の全てがかかっていることを客は全員わかっていた、ドキュメンタリーと謳う「道程」の手綱を握った人間が誰もいなくなってしまった状況での、漫才前の短い暗転時間はとても悲しかったし不満だった、だから吹っ切れたように笑ったのかもしれない。

※このライブのアーカイブ配信は11/27(日)23:59まで※


コンビ活動をどうしたいのか、村田からの本音を聞き出すのが「道程」の目的だった。
「道程」エピソード0扱いとして、赤もみじが活動休止とその理由を発表したstand.fmの番組がある。(「道程」でも前提とした会話が多数)

ここで話された休止理由は、阪田の村田に対する不信感と不満であり、阪田が一方的に話す流れとなった。ネタ作り・漫才を中心としたコンビ活動への向き合い方と、そもそも対話がままならない相方への不満は、お笑いのラジオから離れた場所にあったかもしれない。
それを踏襲したうえで、村田の本音を聞きたいという目的が出発点であるなら、「道程」の過程において芸人が裏側を見せる見せないの議論はナンセンスだと思う。

軋轢がある状態を改めて阪田が振り返り、村田の本音を聞き出す趣旨を語ったのが「道程」#1であり、#2~3では、村田がどのような芸人か、彼と距離の近い芸人に聞きに行く。#3の後半で初めて村田が隠し撮り映像内に登場し「道程」を知らない村田が、阪田と動いてきた作家から現状について取材される。
YouTube上の最終回#4はこれまでの情報を踏まえた阪田が、久々に村田と会話するところから始まるのだが、村田の気持ちで解散ではなく休止を選択した赤もみじをどうするか、ここで村田の口から「解散」という本音が出る。出てしまうのだ。

阪田はこれまで、解散か継続か再開か、自身の希望を話してこなかった。
活動休止も元は阪田が解散をもちかけたところから始まっていることを考えると、村田が解散を告げた段階で「道程」は簡潔するドキュメントの体をとってきたを
しかし、視聴者に疑問を残す形で目的が果たされてしまった「道程」は、方向転換の兆しを示すこともなく、村田に「道程」の存在や隠し撮り、ライブ開催が明かされる場面で終わる。

視聴者に疑問と負荷を残した状態でライブへと持越しされたドキュメンタリーは、当日ナルゲキに集まった観客に逆転劇を用意できたのか、期待と不安の空気が漂うなかライブは始まった。

結果として、できていなかった。
視聴者からすると僅か2週間で全てが完結する一連だったが、赤もみじ本人たちからしても、企画の立ち上げから終結までがかなり短いスパンであったように思う。

誰かの焦りと誰かの楽観視が混じった、不十分な状態でライブまで進んでしまったのではないか。
だから、ライブで村田が発した「お笑いから降りんな!」がキラーフレーズとなり、大ウケしたのだと思う。
自分は、軋轢をエンタメにするような共犯関係でもって無理矢理関係を修復するパッケージの真似事ではなく、降りてもいいから対話で組みあってほしい気持ちが残っていた。

一時凍結させた人間関係にトドメを指す悪手になってしまった「道程」に残る疑問は、
阪田が主導であり続けていなかったのではないかという部分で、概要欄の企画者に阪田がクレジットされていないところが気になる。
#1には<企画・構成・編集>で作家の名前があるが、#2以降は<構成・編集>となっていて、企画者自体が明記されていない。
理論武装して相方をひるませたうえで本音を出そうとした阪田と、知ったばかりの"沈黙は金"という言葉を守った村田。村田のおかげで「道程」のコンテクストは散らばることなく、ライブで爆発した笑い声は守られた。
降りなかった男によって成立したことだから、自分もあの日の爆笑だけを正義として「道程」を忘れたいと思う。R-1で笑いたいし。

雄弁は銀、一見に如かず。

※このライブのアーカイブ配信は11/27(日)23:59まで※

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