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アルチの手~アルモノガタリ~

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私は思う
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記事一覧

記憶の力

通行止である。朝の貴重な通勤時間、東の駅へと向かう最短距離の道に立ちはだかる工事中の標識。工事をしている場所よりも、もっと手前で通せんぼしといてくれたら、時間と体力の浪費はほんのちょっとで済んだのではなかろうか?けっこうな距離をUターンしてますよ私は。

南よりの左まわりの経路をたどり、線路をまたぐためにエレベーターに乗り込むと、こちらに小走りに向かってくる一人の女性の姿が見えたので、開くボタンを

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邪な落とし穴

[1] ある物をはかる、ある者のかたる、意見、見解、考察などの、うがった見方は、時には共感を抱き、時には批判的な思いを抱かせる。後者を例えるならば、その者が、ある命題を掘り下げながら持論を1から10まで段階的に説明したとしよう。

[2] 1や2は理にかなっていると首をタテに振るも、3は筋道として腑に落ちない。4から8までは断片的には理解できるが3を踏まえたうえでの論理であり、また9では、かなり何

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夜の素顔

週末、午前中の休憩時間、シューティングゲームのコーチング動画を見ている私の向かいの席で、二人の上司がニヤニヤしながらお互いのお気に入りの女の子の写真をスマホで見せ合っている。幸せそうで何よりである。

私には対人関係が問題で職場を転々とした過去がある。社会適正に難があることは大いに自覚している。今の会社には辞めようと思うほどの敵意や嫌悪感を抱かせる人間は一人もいない。朝っぱらから、なんちゅう会話し

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必然的パラドックス

空想上の生き物、有識者。

仮に、そのヒューマノイドの理想形のひとつが実在するというのであれば、そこに数多の矛盾が生じてしまう。かつて数学者を志したこともあるこの私が理論的に検証してみよう。

かつての夢が、分数の割り算という概念の出現により、惜しくも儚く散ってしまったことは、いったい何度目の挫折の時であったろう?人生つらいことばかり。それでも己を奮い立たせて、本題を始めるとしよう。

博識、見識

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光の正体

人類の能力の限界値と真相への到達を目的とする思いの狭間で生まれた概念のひとつ。その名は真実相当性。

平日、とある動画の見過ぎで寝不足のまま、やっと乗り切り訪れた終業時刻、UFOの目撃談で見知れた顔ぶれの目を集める同僚。夜空に停空していた眩い光の正体を突き止めるべく、長机を囲んでの会話は盛り上がり、そして終わる気配を見せない。

ともに過ごした時間によって得た信頼度により、彼が嘘をついている可能性

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色鮮やかに

最近、暗いニュースばかりである。冷たい風にふるえ、星のない空におびえる、ふざける気も失せるほどに、お先、真っ暗である。そんな中、私のするべきことは何か?自分に問うてみた。この目に世界をより色鮮やかに映したい。そう願い、パソコンを改造することにした。無論、ゲームにしか使っていない。

グラボ、マザボ、電源ユニット、PCケースの交換。パーツがケースにおさまらなかった過去の失敗をもとに購入した、中身の見

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小説でも書いてみよう

ボクは喫茶店で向かいの席に座るサトウにそう告げた。彼はその内容に興味津々だ。魔法使いや変身ヒーローが悪の組織と戦うようなファンタジーな設定が彼の好みだ。しかしボクの書きたい小説はそれとは違った。何気ない日常を深掘りしてゆくような内容にするつもりだ。

彼は言う。例えば男二人が喫茶店でコーヒーを飲んでいるだけの話を誰が読みたいと思うんだい?そこで突然、得体の知れない怪物が暴れ出してヒーローがピンチを

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代弁者

人が私に求めるものと、自分のこうでありたいというビジョンには多かれ少なかれ差異があり、あらゆる場面において、どちらのニーズを優先しようとするかの決断すらも、その人間性に関わるものであることに奥深さを見い出せずにはいられない。その逆もしかりである。

三人の上司との残業時間、全員が集中して作業に取り組めば二時間前後で終わる内容。私は早く帰ってゲームがしたかった。ホームシックである。

おもむろにスポ

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ルーシー

日本を今一度せんたくいたし申候

坂本竜馬の言葉である。グローバルスタンダードを求める時代において、日本人特有の素晴らしき数多の美徳あれど、世界に指摘されて見直すべき閉塞的な島国の民の習性はいまだに存在する気がする。事なかれと見ぬふりは代表的な例であろう。

学生時代、通っていた学校にひとりだけ、外国人女性の英語教師がつとめていた。机に手をぶつけて「アウチッ!」が彼女の鉄板ギャグであった。箸転がり

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人に優しく

昼休み、定食屋で魚の定食を食べていると、私の席の隣に同じ仕事着の四人組がやってきた。その中のひとりは小柄な外国人の研修生のような青年、そしてまた別のひとりは会話の内容から、その教育係のような人物であると私は推測した。

聞き耳をたてるワケでもなく会話の全容は丸聞こえである。だって日本はせまいから。青年は教育係の男性をとても慕っているようにみえた。目はキラキラ、顔はニコニコである。

教育係の男性は

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ロンググッパイ

永遠の別れを告げようと
私は部屋を飛び出した

文明の進歩とともに新しく生まれる概念。多くの発明品しかり、入会しやすく退会しがたいコンテンツしかり、電波しかり。便利のために生まれたはずのモノゴトによる新しい煩わしさが、私に選択の意思を迫った。

スマホの契約内容の変更にともないポケットルーターを解約しようと決心。地下鉄内の電波状況にも不満があり、そのストレスも原因のひとつであった。店舗に向かうつも

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アクマで主観~アクマの主観~

とある水曜日、数年前に数ヵ月ほど一緒に仕事をしていた客から1日だけの依頼を受ける。

この日は銀行と役所への私用をまとめて済まそうと、事前に会社へ欠勤の要請を告げていたのであったが、それを理由に返上した。銀行や役所に対して私は思う。

日曜日に働けや

自慢じゃないことないのだが、私の顧客からのリピート率は非常に高い。アナタがいい、アナタじゃなきゃダメ、アナタしか見えない。彼らにそう思わせる何かが

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命の水

崇高な理念も受け手側の捉え方や判断により、その形を歪めてしまうような事象は数多く存在する。

宗教しかり、牛丼屋しかり。

とある月曜日、今週中に終わらせればいいと任された仕事に対して余裕ぶっこいていると、急にやっぱり明日までに終わらせるようにという伝達を受ける。何でも突然、決定した客側の役員の訪問により、その仕事内容が完了した状態を見せておきたいという上層部の主観的なご都合であるらしい。

知る

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旅人はゆく~宿りし者~

人は誰もが旅人である

『月曜日』

仕事を終えて真っ直ぐウチに帰るとパソコンを開きFPSゲームを夢中でプレイする。結果に直結するのでお酒はゲーム中は我慢。ゲーム終了後、シャワーと酒を浴び就寝。

『火曜日』

冷蔵庫の中のタマゴをきらしていたため、駅の改札前のスーパーへ寄り道。あとは月曜日に同じ。

『水曜日』

仕事終わりに我慢できず駅前で一人飲み。泥酔で帰宅、そのまま就寝。深夜に目覚めるもト

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