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【再掲載小説】ファンタジー恋愛小説:最後の眠り姫 (14)

前話

私はすたすた廊下を歩く。どこに何があるのかもわからず、ただ、がむしゃらに歩いていた。するとフリーデが手を握る。
「大丈夫です。強いふりをしなくていいのですよ。エミーリエ様」
 思わずフリーデの顔を見る。優しい顔をしていた。慈愛に満ちた。やはり、お母様はカロリーネお姉様だけどフリーデに面影が重なった。
「お母様・・・」
 小さく呟くとフリーデに抱きつく。泣き叫ぶ事はなかったけれど、さっきのショックが戻ってきた。騎士の娘といえど、まだ幼い心の私。人を殺した事実は重かった。涙が流れる。
「さぁ。エミーリエ様に用意された部屋は百以上もあります。その内、一番素敵なお部屋があの部屋でしたが、劣らぬ部屋がこちらです。さぁ。夏風邪を治しましょう」
 フリーデが扉を開け放つとそこは光の世界だった。キラキラ輝く硝子や窓から差し込む光が部屋一杯にあふれいた。
「さぁ。ベッドはこちらです。こちらの方が過ごしやすいのです。空調も全自動ですから」
「全自動?」
「勝手に快適にしてくれるってだけです。なんらご心配はありません。さぁ、こちらに。その前にお風呂で身を清めますか?」
 ああ。私の手は血で汚れていたのだった。そう思い出す。
「そうね。清めたいわね。騎士の娘でも怖いものは怖いわ」
「当たり前です。いくら訓練されていても剣を何の感情も持たず扱うことなどできません。思いっきり泣いていいのですよ。ここには他人はいません。エミーリエ様の家族ばかりです」
「フリーデも?」
「はい。お姉さんになってとおっしゃったじゃないですか。剣を手で落としてその剣で賊を容赦なく切り捨てられた姫様はフリーデの自慢の妹のになりました。あれほど強い姉を持てたことを非常に誇らしく思いました」
「フリーデお姉様」
 思わず、しがみつく。そこで返り血を浴びているのだったと気がつく。
「ごめんなさい。汚れるわね」
「洗えばいいことです。さぁ、熱もお下がりのようですし、アールグレイをご用意しておりますから、こちらのお風呂で清めてきてください。寝間着はお風呂の途中でご用意しておきますから」
「ありがとう。フリーデ。ヴィーもカロリーネお姉様も」
「姉上、僕達なら大丈夫。お風呂入ってきて」
 ヴィルヘルムがにっこり笑う。泣きそうになって慌ててお風呂に向かった。
 湯船の中で自分の手をじっと見る。この手で人を切った。お父様はそれを何度もしておられた。お母様もどういうことか知っておられた。私だけ子供だったのね。そう思う掌に滴が落ちる。私はお風呂の中で唇をかみしめながら泣いたのだった。


あとがき
本にするために作った原稿の内、1~25話目を貼り付けた文書からコピペしているのですが、なんとそれに番号が二重になっていた箇所が昨日判明してこれ以降も数字がずれるという事態に。まとめたものにはいちいち打ち直しておいたけれど、これ以後が変わるとなると一話ずつ残してある原稿も番号打ち直しとなる。おそろしいー。45まであるのに。その後はまだ続きを考えていてどうしようかなーと思っていた所。

カテリーナのところで止まっている。ファンタジー恋愛というよりは恋愛ファンタジーなので恋愛者で終始するのだけど、途中、ユングらしき文書をいれておい、と自分で突っ込んだのでした。この時代まで眠らせた理由があるはずなのでそれを探っているところです。まぁ。血筋の保存もあるし。魔皇帝の血筋は正当な血筋として血眼で探されているので。その血筋と結びついた血筋が正しい血筋となるとあの世界では成り立っているのでそれが最終になるのかしら。戦争は起きてほしくないんだけどね。クルトも大変よのう。
と。ここのハッシュタグ、自由につけられなくなってます。どういうことかしら。困ってます。エンターでは終わらない。また試行錯誤します。ここまで読んで下さってありがとうございました。

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