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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(83)

前話

 目が覚めるとキアラと一緒にクルトに抱きしめられていた。暖かさが心地いい。あの日からどれぐらい日がたっただろう。こうして毎日目が覚める。
「おはよう。奥さん。娘としばらく別々だけど大丈夫?」
「大丈夫よ。クルトがいてくれるもの。起きないとね。キアラー。おきなさーい」
 そう。今日、東へ発つ。私はややふざけたふりをしてキアラを起こす。にゃ。とかなんとか言いながら寝ていたけれど私がしつこく起こしてやっと起きた。
「今日からしばらくばぁばとじぃじと仲良くしてね」
 じぃじと聞くとキアラのテンションが上がる。よほど、お父様はキアラをかわいがっているのね。いえ、甘やかしてるのね。帰ってくるたびに何か甘えることを覚えてくるんだから。
 わが子となればどうしたものか、と思う。そこへクルトの突っ込みがはいる。
「子供はまだだよ。つわりのつもないじゃないか」
「そこまで言わなくてもいいじゃないの。婚礼を上げる前に出来ちゃ、国民に示しが付かないわ」
「いいんだよ。うちの国は。多様な生き方があるからね。でも姉上が結婚したのはみんなほっとしたね」
 お披露目の時に見えた国の人の多くはおめでとう、というより、よかったよかった。やっと行ったって感じだったもの。ショートカットの姫はやはり近隣諸国でも珍しかったみたい。
「さ。キアラを預けて朝食だよ」
「わかってるわ。さて、服、服と……」
「はい。これ」
「ありがとう。クルト。向こうで着替えてくるわ」
「ちょっと待った」
「え?」
 クルトに引き寄せられると首筋に唇が当てられる。一気に体が熱くなる。
「もう。クルト、そんな時間は……あるわね」
 最後となるかもしれない魔法の時間を少しだけ味わったのだった。

「もう。これで、思い残すことは、あるか。エミーリエを愛するのは楽しいからやめられない」
 朝食の場で危険極まりないきわどいセリフをクルトが言う。手をつないで寝ていたころが懐かしい。
「おや? 奥さんはそっちがいいの?」
 ぼっ。顔が赤くなる。
「お願いだからもうきわどい話はやめて。朝なのよ」
「まだ、夜明け前だよ。東へ行くのはやめたいのに。エミーリエに会わせたくない」
 そう言ってクルトは私の肌をじっと見る。最近、前よりきれいになったとフリーデも言う。なぜかしら?
「そういう鈍感な君も好きだよ」
「クルト!」
「はいはい。今日のお母さんは神経質だねぇ。キアラ」
「にゃん!」
 キアラは一番好きなフレーバーのご飯でご機嫌だ。
「キアラ。あなたにもう会えなくなったら……」
 震える声で言うと向かいの席からクルトが手を重ねる。
「大丈夫。無事帰れるから。嫌な可能性は考えない方がいい。いい可能性を考えて」
「そうね」
 そう言って涙をふく。キアラは何を言ってるの、とばかりに私を見ている。
「大丈夫。ちょっとメランコリックになっただけよ。さぁ。朝ごはん食べなさい」
「にゃーん」
 キアラはまた何でもないように朝ごはんを食べ始めた。


あとがき
いきなり初夜から東の話になっていてえ? 翌日旅立ったの? と焦った書き手。ので一文ほど入れました。説明を。どれぐらいたったかはわかりませんが。本人も早く東を~と思っていたので速攻でラスボス編にと突入。でもまだ終わらないのよ~。剣と水晶納めるので。そこからまだどうなるかわからない。コフト国に行くのかどうかとかあって。クルトの戴冠とかあるのとかいろいろ考えてはいます。じぃじは孫をかわいがる係になるんですかね。孫も生まれるとなるとまたひと騒ぎが。猫で我慢するか? どうなるかわからないラスボス編突入の序章でした。でもすぐ終わります。ラスボス編。

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