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【再掲載小説】ファンタジー恋愛小説:最後の眠り姫(33)

前話

 しばらくすると、ヴィルヘルムが文句を言いながらクルトと戻ってきた。
「幼礼婚なんて古くさいことしなくていいよ。フリーデと僕は運命的な出会いなんだ。周りが反対してでも婚礼をあげるよ」
「まぁまぁ。エミーリエが一生懸命調べてくれているんだ。ヴィーも古文書読むの手伝ってくれ。あと、ヴィーがいないと殺される」
「誰に?」
「エミーリエに」
「何か? クルト様」
 私はにっこり笑って指の関節をポキポキ鳴らす。
「ふーん。関節を鳴らすようなことをしたんだ。僕もしようかなー。僕が誰だかわかってるよね?」
「ごめんんさい。おじいさん。ちょっとした出来心なんだ」
 クルトが大げさに謝る。
「おじいさんって、年寄りじゃないよ。わかったから、今度手を出したら、知らないからね」
「はい。おじい様」
 クルトが余りにも恐れているのが面白くてけらけら笑う。
「いくらヴィーがおじい様でも、おじいさんって呼ぶほど年を取ってないわよ」
「だってー。殺されるもん」
「よくわかったね。兄上」
 じとっ、とヴィルヘルムがクルトを見る。
「ほら」
「さっさと調べるわよ。ヴィーはもう少し時代を遡ったこっちを調べて」
「わかった。姉上」
 ヴィルヘルムはちょこん、と椅子に座るとページをめくり始める。
「何? このユイノウって。コンブ?」
「ああ。遠い東の島国の伝統だよ。男性側が女性側に縁起物を送るんだよ。それが婚約したってことになる。僕はもうフリーデに結婚を申し込んだんだからいいじゃないの?」
「それで、周りが納得すると思う?」
「思わないけど、姉上が決めればツルの一声だよ」
「何? そのツルって」
「渡り鳥の事だよ」
 私とヴィルヘルムが会話しながら調べ物をしているとクルトは違う本を見ていた」
「クルト! 何読んでるの? 婚礼衣装大全集? ちょっと。着るのは私よ。クルトが決めることじゃないわ」
 さっさと決めそうなクルトからぶんどる。
「もう。姉上も兄上もふざけないで。僕も調べようがないよ」
「じゃ、新しく作るしかないわね。特別令でも出して議会にとおすのよ。法律で決めた儀式をすれば誰も文句言わないわ。さぁ、法律を作るのは……」
「作るのは?」
 クルトが戦々恐々と私を見る。
「クルトの仕事ね。皇太子なんだから」
「法律で何決めるのー? 俺、儀式なんて知らないよー」
 クルトが悲痛な声を上げる。
「じゃ、考えて作るのね。もう、あんな襲い方しないなら協力してあげるけど?」
 ちろん、と見る。
「しません。しません。婚礼が終わるまでは『ちゅー』と言います」
「よろしい。なら、執務室よ。法律の作り方は知ってるんでしょ? 私がヴィーと一緒に儀式を作るわよ」
 三人が席を立ったその時だった。カロリーネお姉様が飛び込んできたのだった。


あとがき
筋書きも考えずよくここまで辻褄があったこと。と言っている私は最近、Kindle化する作品の編集で昼夜逆転。また眠くなってきた。さすがに明日は出勤なんで用意もいる。更新だけにしようっと決めたのでした。昨日で阪神のホームグランドオ試合は終了。クライマックスシリーズで一度戻ってきてくれるらしく頼もしい。しかし、最近、阪神負けすぎ。がんばれ。という私が頑張れ、です。ちょっと動くだけでだるおもー。執筆も編集に時間を取られて忘れぎみ。それに今やってるのは過激な内容が多々あるのでそれとなく匂わせで終わらないと行けない。さすがに「愛撫」は入れたらいかんでしょ。全年齢を対象にするとなれば。15Rぐらいの作品を普通に変えることをしていて、大変でした。よくこれで出してたこと。前作から題名を変えたのですが溺愛ぶりは解る物の。溺愛ってもっと過激なのかしら、とも思ったのでした。次はユメです。もう少しお付き合いください。ここまで読んで下さってありがとうございました。

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