見出し画像

【連載小説】ファンタジー恋愛小説:氷晶の森の舞姫と灼熱の大地の王子第二十七話 走り出す恋

前話

「ここが氷の人魚像。氷の国の人魚と炎の国の王子様が恋をしたのに引き裂かれたの。人魚は悲しみの余り、両国がいつも相反するように、と呪いをかけたの。それ以来、氷の国と炎の国はいがみ合うようになったのよ。レオはしらないの?」
 いや、とレオポルトは答える。
「それらしい事は聞いている。呪われた王子の像もある。俺、そんな不実な王子の血を引いてるんだな」
 情けなさそうなレオポルトにユレーネは意外な事を言う。
「そうでもないのよ。私達の国々の王朝は時々、断絶されているの。血筋がまったく違う系統から王国が成り立ってることもあるわ。レオの王朝はあの呪われた王子とは違うと思うわ」
「だといいけどな」
 あの自分の父親や周りの堕落した貴族達を思うとレオポルトの心も暗くなる。いくら隣にユレーネがいてもその闇は深い。いや、ユレーネが光だ。その影でレオポルトの闇が濃くなるのだ。
「もう。本当にレオポルトの王朝と呪われた王子の王朝は違うんだってば。調べたんだから」
「調べた? そんな昔の事を?」
 レオポルトがぽかんと、口を開けてユレーネを見る。
「だって。両国の国交を元に戻すには元を辿って原因を見ないとわからないわ。血筋はちがうのに伝説が一人歩きしていつの間にか二国間で争うようになったのよ。それぞれのエレメントの性質が違うのも関わって」
「ユレーネは勉強家なんだなー。えらいなー」
 レオポルトは優しく笑ってユレーネの髪を撫でる。と。ユレーネが固まった。
「どうした? ん?」
 レオポルトはリリアーナにしてるように相変わらず優しく髪をなでている。
「じ、自覚ないの?」
「何が?」
「私達、今、いちゃついてるのよ。公衆の面前で」
「それが?」
 にっこりレオポルトは言う。まったくいちゃついても意に介さないらしい。むしろずっといちゃついていたいと思ってるようだ。
「レオって。すけべ?!」
 あまりの衝撃にレオポルトの手が滑って空を切る。転倒しかけたレオポルトをユレーネが支える。
 
 近い。余りにも近い。
 
 お互いの吐息がわかるぐらい顔は近かった。しかし、ここは公衆の面前。恋人の熱いキスを披露している場合ではない。ここは観光名所なのだ。やたらと人がいる。
 
「あー」
「えー」
 二人して離れると空を見上げる。青い空だ。雲一つない。
「ユレーネ!」
「レオ!」
 二人して向かい合う。
 レオポルトはユレーネの手を引くと歩き出す。そっと裏道に入るとユレーネの頬に手を当てる。
「今はこうしていたい」
 レオポルトはユレーネの唇に唇を軽く重ねた。柔らかく温かな人のぬくもりにほっとする。しばらくして唇を離す。ユレーネはレオポルトの胸に顔を埋める。
「お願い。私をおいて死なないで」
「ユレーネ」
 ユレーネは泣いていた。そっと。近づく戦の中でレオポルトがどれほどの危険に身を投じるかわかっているのだ。アドルフとの一騎打ちの後は簡単に国を平定できるだろう。だが、強大な権力と魔力を持ったアドルフに対するにはレオポルト一人ではだめだ。
「私も行きたい」
「行くか? 戦に」
「レオ?!」
 反射的にユレーネが顔を上げる。
 
 ごん。
 
 ユレーネの頭がレオポルトの顎に直撃していた。
「いてーな。もうちょっと乙女らしくしろ」
「なによ。乙女らしくって。これが私よ!」
 ムキになってユレーネが言うとレオポルトは微笑む。
「わかってる。着いてきてもいい。俺が必ずお前を守る。だから、セカンドキス」
 そう言ってまた唇を奪う。ユレーネは言われたことを頭の中で繰り返して何をされているかも考えていなかった。だが、しつこいキスに息切れを起こしてばこっとレオポルトを殴る。
「いてーな。それぐらい気が強かったら大丈夫だ。一緒に行こう」
「ええ! レオポルト。大好きよ!」
 ユレーネがレオポルトに抱きつく。一人おいて泣かせているよりも一緒に行って共に闘う方がユレーネにとってもいいのだろう、とレオポルトは思っていた。レオポルトは王となるが、ユレーネは氷の国の女王となるのだ。王妃ではない。女王ならば戦場に行くこともある。お互いで支え合いたい。レオポルトはそう思っていた。
「さぁ。デートの再開だ。これ以上ここにいたらヤバいぞ。国王に勘当される」
 レオポルトが手を引く。ユレーネは呆れながらも嬉しかった。一緒に表通りに出る。
 
 デートは始まったばかり。そして本当の恋も。恋が走り出した。


あとがき

いちゃついています。二次のキャラ並みに。歯の浮いた台詞の応酬がないだけましなもの。阪神戦は、今日は勝ってる。そして実況が面白い。解説とゲストがマニア。そう思いつつ、一度直したパソコンを血糖値測定の結果を印刷するのに引き出すともう漢検の受験勉強はとんでいきました。

次の話どうしようかなーと思ってるぐらいで。第二部でトントン拍子に現在進んでいます。恋愛はないけれど。結婚した後の話はあるんですけどね。露骨には書けないため、夫婦、カップル一組が少女の前で苦労してます。
あー。いちゃいちゃができない。馬鹿っぷるになるわけは行けないため、自制しております。第一部は割と健全な恋愛ですが。ニコとローレライの恋愛を書こうとして失敗中。スピンオフ書かないと。カールはとっとと結婚してるし。己の手が恨めしい。いや、カールがやばいキャラなんで。歯の浮いた台詞を言うヤツなんです。いつのまにかお留守番とかになってます。子供もいるし、妻もいるし。夫は王の帰りを待つしかないのです。ていうかそういう大臣さんです。重鎮です。お肌ピチピチとか言いながらも。カールの恋愛はもう、書けない。危なすぎて。露骨だわ。レナも出番が一回切り。可哀想に。ま、今日はこの更新だけにしときます。夜中に起きてたら「影の騎士真珠の姫」を更新しますね。ここまで読んで下さってありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?