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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:影の騎士真珠の姫 第十五話 記憶を戻す花

前話

 しばらく、フィーネペルルは不機嫌で、散歩の中でもヴァルターは無視されて無言の散歩を続けていた。
「どうしたんい? フィーネ。私は何か悪いことを?」
「してないのが問題なのよ」
「してない?」
「いいわ。この話は終わりましょう。いい加減停戦して記憶を戻す薬を探さないと」
 すくっと泉から立ち上がってすたすた歩き出す。
「絶対に根に持っているな。あれは。なんだかわからんが……」
 一人ごちているとフィーネペルルが名を呼ぶ。
「来ないの?」
「行きます!」
 はじめて会ったときのような口調になりながら後を追う。エルマもエルフィーもすでにフィーネペルルの後をついて行っている。
「薄情だな。お前達」
 ようやく追いついてフィーネペルルの横にちょこんとして座っている二匹に文句を言う。
「私の子供達だもの、当たり前ですわ」
「私との子は?」
 その問いには答えず、すっと執務室から本を取ってくると、図書室へ向かう。
 二人でページをめくる。時折二人の手が触れあう。その時、フィーネペルルには嬉しそうな微笑みが浮かんでいる。
「フィーネ……」
 ヴァルターが呼ぼうとしたとき、フィーネペルルはあるページに目が釘つけられた。
「ヴァルト! この花! 記憶を戻す薬になるって書いてあるわ。字がかすれて余り詳しく見えないけれど!」
 フィーネペルルの目が煌めいている。ヴァルターはその目を見たかったことに気づく。いつまでも見ていたかったが、ここは薬の方が先決だ。本をのぞき込む。
「ミスティック・ローズ……。薔薇、なのか?」
「そう……みたいね。どこで採れるのかしら?」
「アム……ネシア?」
「どこの国かしら?」
「確か、東の国だったかと思う。ここのエーデンローズの聖域にあるらしいね。そこは国で厳重な管理がされている。入れても、花を採取することは難しいかもしれない」
「そうなの……」
 フィーネペルルはがっかりしてうなだれる。
「フィーネ」
 頤に手を当てて顔を上げさせる。
「君は外交大使を兼ねられるほどの政治家だ。国王の親書を持って行ってみないか?」
「お父様の親書?」
「それからライアンとカテリーナ様も一緒に行こう。あの二人も良い感じだ。みんなで行こう」
「みんなで……?」
「でないと、君の貞操を守る自信がない」
 茶化すように言うヴァルターにフィーネペルルが拳を突っ込む。
「何を考えてるのよ!」
「正常な男でね。それに、一度も外へ出たことがないんだろう? カテリーナ様と一緒に成長してみないかい? 影ともう一度向き合う良い機会だ」
「影と向き合う……。いいわね。いい加減、この影とサヨナラしたいわ」
「サヨナラではないよ。受け入れるんだよ」
「いらないのに」
「それも全部、君だよ。私はその影ごと愛しているんだから」
「ヴァルト……」
 見つめ合うかと思ったが、ヴァルターが立ち上がる。
「さ。陛下に話しに行かないと」
「逃げたわね」
「何が?」
「もう! 停戦終わらせるわよ?」
「それは困る。花嫁に逃げられた花婿になる」
「もう、婚礼の式のことを考えているの?」
「何が婚礼だって?」
 二人で言い合ってると後ろからライアンが声をかける。
「ライアン様! びっくりさせないでください。そうだ。マリアの事でお話があるんですの。カタリーナと一緒に聞いて頂けないかしら?」
 フィーネペルルは優しい笑顔を見せている。それに密かに焼き餅を妬いている自分に呆れるヴァルターだ。
  
 私の影もまだまだあるのだな。フィーネに指導するどころじゃない。だが、二人きりで旅など到底できるはずもない。どうなるか、空恐ろしい。
 
「まずはライアンとカテリーナ様の許可もいるか。では手短に東屋で涼みながら話をしようか。フィーネ、カテリーナ様をお連れしてくれないか?」
「はいはい。何でもしますよ」
 また不機嫌な姫に戻ったフィーネペルルは素知らぬ顔でカタリーナを探しに行った。


あとがき

このカップルは~。しょっちゅう色ボケしてるな~。まぁ、恋愛が絡むのは最初からの設定だから、こうなるけれど。お年も結構行ってるし。そして巻き込まれるあの二人も可哀想。でも、そっちはほぼ恋愛シーンは皆無。普通に落ち着くという。主人公カップルがやばいのです。

そういや、「風響の守護者と見習い賢者の妹」もほぼ、主人公カップルは落ち着くところに落ち着いているので、危ない発言とノロケはあるけれど、恋の行方は妹に移動している。その最初の方なんですけどね。今。

今日は何を書こうかなーと思ってます。久しぶりの休日。体重計が買いたいと思ってます。オムロンコネクトの着いたヤツ。藥買いついでにさ迷ってこようかしら。インクも欲しいし。

と、いうことで、不完全燃焼にやりやすい今日は自由に過ごしてみます。

のちほど「煌星の使命と運命の絆~星の恋人達」の方を一話更新します。
あとは、Wordpressの更新を進めるかな? まだ朝顔の物語を入れた所なんです。まだまだある。プロフィールにもWordpress入れておかないと。ここ離れたらそこしかないし。

それでは、ここまで読んで下さってありがとうございました。

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