「その光景を滑稽だと、無様だと思う」
朝の8時。
わたしはいつものように
池袋駅の有楽町線に乗る。
電車が滑り込むと、ホームドアぎりぎりまでホームにいた人間が民族大移動の如くうごめく。電車にすり寄る。
そうあれは、大海原にただようイワシの群れ。
単体は小さくても、みんなで寄せ集まれば怖くない!!!ごちゃごちゃこまいけど!
でも
うわっきもっ!
と、わたしは心のなかで思う。
自分がその民族大移動のひとつに溶け込むことは、いうまでもなく。確認するまでもなく。
この民族大移動(仮)のみなさんは、赤の他人です。
恐らく今日初めてお会いした方々です。
毎日同じ電車、同じ時刻にこの駅を利用しているとは確認はしないけれど、いちいち顔なんて覚えていないけれど、曖昧なところで毎日、初対面。
この赤の他人さんの方々とは、もってせいぜい10分くらい同じ空間にいるだけで、なんてことはない。
ただの満員電車だ。
満員電車を舐めてはいけない。
紛争、暴力、誤解、
さらには最悪なことに遅延の原因になる。
ひとひとりかふたりの力で
数万人の足に影響だと……!?
なんたる連帯責任。
ああ!仕事辞めたい!行きたくない!!
満員電車は不思議な空間だ。
あんなに人があふれているのに
物音ひとつない時がある。
有るのはそう、電車のゆれ!
連れがいるだけで、端から端まで会話が筒抜けなんじゃ……というくらい空気が沁みている場合もある。いや、澄んでいるのか?そんな馬鹿な。
そして、なんだあの空気感と一体感。
しゃべらないナイト。
素面じゃ人見知りイベントでも開催してるのか。
もしくはそんなイベントがあったら
うってつけの企画じゃないか!!
そして、ライブハウスばりの
モッシュ、ヘドバン、ちょっと調子にのりました的な髪の毛を引っ張られる!(まさに今朝されました。おのれあの女)
あの空間の核融合は、永遠の謎であり
できれば、関わりに合いたくないところだ。
それでも人はあの場所に挑む。
誰のためだ。
愛する家族のため、自分のため。
大好きな仕事の為に……!
イライラしつつも
表情をひた隠し、言葉を飲んで朝の貴重な
何10分かをひたすらひたすら我慢する。
滑稽にも無様にも
そう勘違いしながら。
でも、わたしは敢えて言いたい。
みんな、早起きしてみたらどうだろう!
会社もバカみたいな早い時間から始めて。
アホみたいな時間に帰宅する。
夜は短い。
昼は長い。
その現状を変えたい。
そんな妄想に更けながら
今日も満員電車に乗るのです。