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【エッセイ】ガンギマリ徒然草

つれづれなるまま書きつらねた、まとまりのない文章がたまったので近況も兼ねてここに刻む。

・生来の飽き性

気づけば5ヶ月くらいツイッターを更新していない事に気づき、また牢屋にぶち込まれたか、と心配いただいて恐縮してしまった。
生来の飽き性がたたり、単純にツイートする話題がなかっただけで、もし入牢の沙汰が下ればその際は必ず告知をする。

最近はキメねこ本の商業流通版について出版社とやり取りをしており、いままで描いたすべてのマンガを描き直していた。たいへん良い本になると信じている。

・本屋さんなど

最近は本屋などにも近寄らないようにしている。

麻薬の売人に近づかないようにするのと同じで、強い誘惑がある場所はなるべく避ける。
Kindleのお買得情報のメールですら、衝動的にポチってしまうほど誘惑に弱い私が、そんなところへ行ったらどうなる事やら。
新しい本を買う前に、今ある大量の書物を楽しんではどうか、と言い聞かせるも、気付くと新しい本に夢中になっている自分を発見する。

また、近ごろはインターネットの話題にも心乱されないようにする修行を実践している。
油断すると、すぐに大喜利をしてしまう自分の心の流されやすさ。遁世願望ますます強くなり、文芸への逃避が加速する。

・危険地帯とその影響、ゲートウェイ・ブック理論

先日、群馬の萩原朔太郎記念館を視察しに行った。道中、古本屋を見つけ入ったがこれがやはり失敗であった。

まず目に入った本が西岡常一著『木に学べ』値段は100円。まぁこの程度なら良いだろうと買い、読み進めたがこれが本当に面白い。

法隆寺が1300年間も焼失することなく飛鳥時代のまま存在している異常性。
さらに恐ろしいのはこの建築は「設計図」を用意せずに組み立てられたのだそう。

なぜか?

ヒノキの木材は建築後も伸縮し続けるため、木のクセを見抜いてそれぞれ配置せねば将来的にガタガタになってしまう。そのため法隆寺は、飛鳥時代の宮大工が「木のクセ」だけで組んで建立した。
そうした異常技巧ゆえに、地震や台風の中でも1300年間鎮座している。そのため宮大工は「木でなく山を買え」という指針を持つ。
同じヒノキでも、生えている環境、それが北向きか南向きかによって木の成長方向などが変化するため、山を買って木のクセを見抜くところから始まるのだ。

以前、コーヒー豆ハンターの方が「ブルーマウンテン産のコーヒー豆とて、それが山のどの向きにあるかで全く性質が変わる」と言っていたことを思い出す。
自然を相手に商売する人は、まず環境を知らねば話にならない。

そんなこんなで、法隆寺の建立技術にすさまじい関心が発生してしまった。

Amazonの検索欄に「法隆寺 建築」の字を入れる、すると出るわ出るわ……面白そうな書の数々。

買うか、買わないか、それが問題だ。
最も賢明なのは、買わずに忘れる事だ。
たぶん、明日にはまた別の関心ごとが発生しているだろう。
しかしながら、今この瞬間は私の人生の中で最も「法隆寺の建立技術」に関心が向いている瞬間で、今なら多くの知恵を吸収できる、まさに知のゴールデンタイムであり、この機を逃せば次に法隆寺に関心を持てるのが5年先になるかも知れぬ、悩んだあげくにポチり、こうしてゲートウェイ・ブックの恐ろしい深淵に飲み込まれていくのであった。

しかしながら、法隆寺などの寺社建築において使われる肘木の組み方や構造がシンプルな図像として脳にインストールされた感もあり、人生の喜びがまたひとつ増えたのも事実で、本屋というのは悩ましい場所である。
やはり、本屋には近寄るべきでない。

・参考書籍

『法隆寺:世界最古の木造建築-日本人はどのように建造物をつくってきたか』

このような断面図にワクワクしない人間がいるだろうか?

『巨大高層建築の謎 古代から現代まで技術の粋を集めた建造物のおもしろさ』

スカイツリーの制震技術は法隆寺と同じ方法を採用している。材料工学的なものにも触れている良書。

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