見出し画像

適切な支援

高速道路を降りて施設に近づくにつれ、異様な数のトンビが周回していて気味が悪くなった。ヒッチコックの映画「鳥」のように襲ってきたら怖いなと想像してしまうほどの大群だった。
その施設は、県立の障害者施設で、病院も併設し、かなり重度の障害者の方が入所している。

障害の重さと支援の必要性は、必ずしも一致しない。
手帳の等級が重いからと言って、支援の必要性も高まるかと言うとそうではないし、手帳の等級が低いからと言って、支援の必要性が低いとも言えないのである。
だから、手帳とは別に、「障害支援区分」が存在する。必要な支援の度合いを決めるもので、障害認定区分調査と医師の意見書を元に、審査会にかけて決定される。

今日は、3人の方の認定調査のために施設に来た。
管理棟で会議室に案内される。
寮を管理している担当者が、調査対象者の記録を元に調査に答えてくれる。
可能であれば、先に本人に会ってから調査する方がイメージが沸いて、調査しやすいのだが、感染症対策のため、面会は短時間で寮の玄関先に限られており、聞き取り後に設定されていた。
3年前の調査結果を元に聞き取る。
注意しなければならないのは、一見、問題行動が見られなくなったことを「支援の必要なし」と判断してはいけないことだ。施設で生活されている方は特に、環境や介助者の毎日の対応によって、問題行動を防止している可能性が高い。
問題行動がなくなったのではなく、毎日、問題行動が起こらないように環境設定して介助にあたられている場合は、「毎日支援が必要」という判断になる。


「お母さんは、良く気がつくから、ついつい先回りしすぎてしまうんです。それは、晴海ちゃんにとっては楽だけど、困ってからの
手助けの方が良いんです。」
ついつい、癇癪を起こされないように、先回りで次の要求を満たしてきた。そうすれば、周りに迷惑がかかることもないし、普通の親子に見える。
支援の度合いは適切でなければならないという趣旨のアドバイスだったのだなと、認定調査をやるようになってから気付いた。
「支援の必要がない」
「見守り等の支援が必要」
「部分的な支援が必要」
「全面的な支援が必要」
段階を追って、支援の度合いを増していかなければならない。
最初は、支援なしの状態がよく、その次が見守り、声かけ、手をかけて一部支援、全面的に支援と、支援の度合いを増していく。
母子間では、本当は、見守りや声かけでも出来るところ、全面的に支援してしまっていることがある。それは甘やかしであって、支援ではないのだ。その見極めは意識しないと難しい。


最後に、調対象者の住む寮の玄関で、挨拶程度の会話をする。3人とも、栄養状態はよさそうで安心。やっぱり、手足の拘縮の度合いや、コミュニケーション能力は、会ってみないと分からないものだ。
不気味なほどトンビが飛び回ってはいるけれど、入所者にとっては居心地のよい施設のようでよかった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?