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インタビューの師・坂上みきさんの"坂上節"に倣う 話を聞く極意


7月下旬、久しぶりにラジオで"あの声"にお耳にかかりました。
坂上みきさん!
東京FMの開局50周年記念番組で、パーソナリティとしてご出演されていて「坂上節」のご健在ぶりに感動もひとしお。
インタビューの師として坂上さんを勝手に仰いできた私は、あらためてインタビューの原点を思い出しました。

媚びず、鋭く、オシャレに引き立てる 「坂上マジック」

クールビューティな声。しっとり語ったかと思えば、ワッハッハーと豪快に笑ったり。美しいトーンのままサラリと容赦ない質問に、ゲストもうっかり本音をポロリ。
その緩急がおもしろくて、それでいてオシャレ。ラジオを何気なく聞いていた私が20年程前にすっかりハマったのが、ラジオパーソナリティの坂上みきさんでした。

美しい声、流暢な話し方、ソツない話運び、は当たり前として、チラリとのぞく毒っけというかウィットというか、小気味よい"イタズラ攻撃"が絶妙。
単に美しく上手なだけの優等生でもなく、ツッコミや毒舌、辛口を売りにしているわけでもなく、品性や知性はきちんと持ちつつ、たまに落としたり、押したり引いたり、そこにいつの間にか相手が乗せられて、短時間でもゲストの魅力を立体的に引き立てる「坂上マジック」。
それでいて、自分がけっして前面に出てこないスタンス。

私がインタビューを生業にしてから、ずっと師匠的な存在です。

褒めるより難しい"刺激"の入れ方

おもしろいものには笑う、相手を褒める、これは簡単そうでも、実は上辺でやりすぎるとわざとらしくなって、不自然です。もっと難しいのは、違和感や聞きにくいことに対して、ネガティブな空気にせずに、サラリと嫌味なく質問すること。これはなかなかセンスが必要です。

話を聞くとき、相手に不快な思いをさせてはマズイ、と怖がるあまり、結局は無難に逃げて収めてしまいがち。でも褒めてばかりでは相手は謙遜ばかりするし、媚びすぎては相手が引いてしまい、サムくて白けてしまうのがオチです。
そういうときは、引き出すべき魅力そのものも半減してしまっていることが多いです。
"刺激"をチラッと不意に入れてみるからこそ、化学反応として相手から意外性も現れるわけですが、この塩梅が難しい!

私自身もこの難しさは痛感しているからこそ「坂上節」に憧れています。

坂上さんに倣うインタビューの極意 私も実践

1.準備が大切

ゲスト(取材対象者)についての情報を丁寧に集め、自分なりに興味のわくところを具体的に質問として用意。相手の経歴やお仕事の背景を知っておくと同時に、私自身は「集めすぎて知ったつもりにならない」ようにしています。
「知ったつもり」は質問の幅を狭めてしまうので、よくわからない、なぜだろう、という余地を残して、質問項目を徹底的に用意します。

2.本番は「鮮度」 準備した10のうち9捨てる

いざ対面したときは「鮮度」も大切。相手は生身の人間なので、その場の空気感や話の流れによっては、準備してきた質問どおりにはならないし、予想外の展開になることも多々あり、準備で集めた情報が古いこともあります。
その時に、用意したものにがんじがらめにならず、潔く捨て、目の前の流れに沿っていくほうが、良い内容を聞き出せることがあります。
ただ私の経験から、どうせ9捨てるんだから、と言って準備を怠ると、流れに沿う臨機応変の判断も質問もできなくなるもの。準備あればこそです。

3.ノリよく自分も楽しむ

音のみのラジオでは特にノリの良さは、話の内容よりも優先されることもあるかもしれませんが、「自分も楽しむ」ノリも必要です。
私はラジオではありませんが、けっこう「ノリ」は大切にしています。相手に「取材されている」と感じさせず、おしゃべり感覚でノってもらうほうが、生き生きと生の言葉が出てくると思うので、私自身も仕事を忘れるくらいのノリで臨みます。

4.正直に

坂上さん曰く「おざなりはバレる」
「え~どうしてなの?」「 ちょっとこれヘンじゃない?」「 よくわからないわ」これらの"坂上節"が感じ悪くならないのは、正直に相手を知ろうとしているからだと思います。
違和感たっぷりなら褒めない、疑問なのにわかったふりしない。
正直に、それは「誠意」とも言えますが、誠意ある興味からわいた率直な疑問や指摘は、けっして相手を不快にさせないんだと思います。
もちろん人として、何でも正直に言えばいいわけではありませんが、上辺でテキトーな「おざなり」は人に伝わってしまい、心も開いてくれません。
正直に。これがシンプルで一番大切なんだと私も実感、実践しています。

※とうてい坂上さんには追い付いていませんが。

「最後に笑うのは私」な坂上さん

「憧れる人には仕事で会う」私は、坂上さんにお会いしたことがあります。トークからは、サバサバして強気なお姉さま的イメージを持つ人もいるかもしれませんが、ご本人は、とても繊細で地道で謙虚な方だとお見受けしました。
上記の「極意」からもわかるように、ご自分にあまり自信を持たず「できていないから準備しなくては」という思いで努力を重ねられてきたという印象です。自分が主役にならず、相手を引き立てるトークには、こんな人柄が裏打ちされている気がしました。

坂上さんの座右の銘が「最後に笑うのは私」。そう思えば頑張れるじゃない?と坂上さん。その反面、お会いした当時(10年程前)は「この言葉、生意気っぽく意地悪っぽく聞こえそうで難しいのよね」と遠慮気味におっしゃっていて、そんなところにも彼女の細やかさを感じました。

この言葉には、坂上さんの根底にある地道さ、でも卑屈にならずにちょっとだけ強気に前向きで、小気味よいかわいらしさがある気がして、私も大好きな言葉です!

 


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