2021/12/4 ホテルニューアカオ再訪

ホテルニューアカオ営業終了。
今年4月に泊まったばかりの自分にも衝撃的なニュースだった。

何せこちらはニューアカオに泊まったことから昭和の観光ホテルの面白さに目覚め、伊東のハトヤホテルや下田の黒船ホテル等を巡り始めたばかりなのだ。

この趣味はどうやら急がないと先がないらしい。

以前からリリースされていたが、
営業終了の報と同時に注目を浴びることになった地域アートイベント、ATAMI  ART GRANT。
図らずもこの地方芸術祭がホテルニューアカオのラストイベントと思われた節がある。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000076648.html


実際のところ、ホテルニューアカオの建物がどうなるかについて正式なアナウンスはない。新オーナーのインタビューの切り取りで取り壊されるんだという悲観的なコメントがついたり、かつてニューアカオについて取り上げたライターの人がアートイベントで有効活用されるようです、というコメントもあった。関係者でない我々にしてみれば現段階でその去就についてはわからない、というしかないだろう。

というわけでホテルニューアカオの最後のお披露目、になるかもしれないイベントに日帰りで行ってきた。

宿泊しないのにアカオロイヤルウィングの無料送迎バスを使っていいものかという疑問がまずあったが、Twitterを見ていたら普通に利用可能とのこと。

が、土曜の10:20のバスに乗ろうとしたら列ができていて、見事に定員オーバー。二十分後のバスを待つことになった。自分の乗り込んだ回のバスも満員で、乗り込めなかったバス待ち客を尻目にこの客みんな宿泊客だったら、いや最後のイベントという名目だからこんなに集まるのか、と微妙な気持ちになった。

ロイヤルウィング側には初めて来たが、エントランスに新オーナーのこれからの意向を示すアートギャラリーがあり、これをインテリア的な感覚で買う富裕層もいるのだろうが、投資目的には向いてなさそうだなと思った。

今回のアートイベントについて語ることもできるが、この日ニューアカオを訪れた客の大半と同じように建物目当てで訪れた自分には、それを評価するのは難しい。

つい先日まで生きられた場であったこの建物が突如死に体となり、その体温を残したままアートイベントの背景となってしまったわけだ。

あの日営業を行なっていたホテルに誰にも指図されることもないまま、まるで宝探しのように写真を撮りまくっていた自分には、今日のように作品のインストラクション通りに館内を巡るのは窮屈すぎた。墓荒らしの分際で図々しいが、追悼くらい好きにやらせてくれ、というのが正直な気持ちだった。

作品を展示する作家にとっても、想定以上に建物目当てに押し寄せた客相手では厳しいだろう。いずれにせよ唐突すぎて、アート作品の会場として静かにその存在を主張するには未だ生々しすぎる場所だった。

この無造作にかけられたタオルの有り様も作家による造作だろうか。
今年の4月頃、この豪華な空間でセルフのフリードリンクが振る舞われていて、
漫画喫茶のように使い倒したのを思い出す。

ユネスコ世界ジオパークに選ばれた錦ヶ浦を望めるこの特等席も本当に無くなってしまうのだろうか。
感傷的すぎるサウンドインスタレーションに当てられて、ついもの悲しくなってしまった。

ここを降りて大浴場に向かったんだよなあという記憶が生々しい。
大浴場の横にある食事処でビールジョッキを交わしていた夫婦の光景がよぎる
先日まで稼働していたゲーム機の群

宿泊した時には見ることのできなかったプールも作品会場に。

同じサウンドインスタレーション(映像作品でもあるが)なら、感傷的な客へのノイズになるくらい大音量を流していたこの作品のように毅然としていてほしかった。
Vaporwave的な

なんだかんだでインストラクション通り開放されている場所を一通り巡り、ロイヤルウィングから続く道を通ってアカオの外観を撮影して帰りのバスに乗車。どこでお金を落としたらよかったのか。なんらかの売上に繋がる導線を貼っておくべきだったのでは。

先日訪れた時はド定番すぎて敬遠したカットも撮りまくってしまった。


かつてあった観光ホテルを調べてみるとすでに廃業になったか、リニューアルされて無味無臭な和モダンホテルになってしまっていることが多い。

こんな立派なホテルを潰すなんて、と怒る側には回らない。
ホテル側にも色々あるんでしょう。
一泊泊まったくらいででかい面するのもおこがましい。

やっぱり行きたいと思ったらすぐに行かないとダメ。
この国にあるものは不動産だろうがなんだろうがすぐに無くなってしまう。
ヴィーナスフォートも無くなるし、葛西臨海水族館だって今の姿のまま残ることは難しいそうだ。

行きたくなったらすぐに行け。
優先順位は自分で決めて、行き違いで出会えなかったらそれが定め。
なかなか寂しい趣味ですね。

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