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溝口敦 「細木数子 魔女の履歴書」

先日、天寿を全うしたと言って良い細木数子であるが、彼女を表舞台から退場させたと言われるのが本書、のようである。なんでこんな本を読んでいるのか…と思いながら、読み終えてしまった。

著者である溝口敦は、特にヤクザ系のノンフィクションで名高いライターである。とは言え、私はこれまで、溝口敦の著作は読んだことが無い。溝口が細木数子を扱うのは、週刊現代の編集部から連載を頼まれたからであり、元々興味があったわけでは無いようだ。ただ、連載をするのに取材を重ねた結果、これはかなりの人物と言うことで、当初編集部から言われていた3倍の連載数でやらねば収まりきらないことが分かり、それなりの大記録となったらしい。

溝口敦が手がけるテーマとして、ある意味最適と言えたのが、細木数子の暴力団関係の太い人脈である。と言うか、この本だけ読むと、殆ど細木数子自身がヤクザのような感じであり、これらが真実なら、よくぞ天寿を全うしたなあ、と色々通り越して感じてしまう程でもあった。

細木数子は政治ヤクザの妾の子として生まれ、子供の頃から女衒をやっていたと言う、戦後日本の混乱の一部を切り取ったような形で生涯をスタートしている。その後もヤクザと関係を深めながら、水商売で蓄財したり散財したりしながら浮沈を経験し、途中で何だか占いを囓って占い師が本業のようになり、法外な墓石販売などの霊感商法で蓄財をし、大富豪まで上り詰めたと言う巨人である。

この連載は細木数子の真実を諸々言い当てていたからか、途中で細木数子がヤクザに要請して圧力をかけてきたり、実際に訴訟に持って行くなどの顚末に至っているが、結局最終的に細木数子はテレビ番組を降板し、芸能活動はほぼ休止の状態となった。訴訟についても細木サイドが取り下げを行ったが、訴えられた講談社や溝口敦も矛を収めた形となっている。

途中から妨害を受けたからか、後半に行くに従って溝口敦の筆致にムカつき感情がかなり出て来ており、ジャーナリストとしての中立姿勢は殆ど見られなくなり、とにかく細木を断罪する書き方になっていった。と言うことで、読んでて「こんなに感情的になってる本は滅多に見たことが無いが、大丈夫なのか?」と思ってしまうほどだった。大丈夫なのかというのは、筆者の身の危険を案ずると言う意味ではなく、これはルポルタージュとして大丈夫なのか?と言う意味である。それほどの書き様だった。

細木数子の所業の中で印象深いことが、島倉千代子を骨までしゃぶったと言うことだった。島倉千代子は借金の保証人になってしまい苦労したが、そこに目を付けた細木数子が島倉を保護という形で数年「軟禁」状態に置き、高額の営業ギャラを全て手中に収め、島倉の借財を返済した後も島倉を拘束し、島倉から搾取し続けるということで、億円の桁で荒稼ぎを働いた、と言うものである。

細木数子は島倉千代子を救ったと言うことで、一時期それが世に知られたが、例えば今、島倉千代子のウィキペディアの記事などを見ると、細木数子の名前は出て来ない。あれは定期的に編集がされていると思うので、以前はあったかも知れないが、今は諸々の調査(溝口敦以外も)を通じたことから、書かれていないのかも知れない。因みに細木数子のウィキペディア記事に島倉の名前は出ているが、「細木による島倉搾取」で載っている。

その他、とにかく占いに関しては占い師である神煕玲のノウハウをそのまま書籍化しただけで、実際のところ占術家としての修行はしていないとも書いてあったが、これがどこまで正しいのかは分からない。ただ、これが正しいなら、あれだけ売れている細木本の殆どがインチキであるとなるが…まあ、細木本以外も大体そうなんじゃ。でも、これで世の中に出ていたので、これが真実かどうかが、最も重要なところなのかと思う。

あと、コロナ谷間の昨年末、仲の良い同い年の同僚鈴木さんと飲んだ際、「細木数子は、岡田有希子自殺の真相を知っているが、これを生前に公表しないと地獄に落ちると言われていたそうです。でも、結局言わなかったから、今は地獄に落ちています」と言っていた。そのニュースソースは何かと問うたら、アサヒ芸能だという。アサ芸かよ。

そうじゃなくても、多分今、細木数子は地獄に既に落ちているような気がする。

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