lor

1974(昭和49)年東京生まれ。

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最近の記事

中上竜志 散り花

中上竜志の「散り花」と言う小説を読んだ。これは今年の日経小説大賞を受賞した長編であるが、主人公は33歳の中堅プロレスラーである。しかし、33歳などはプロレスラーとしてはやや若い方~全盛期で、燻っている年齢では無い。 著者の中上竜志は長年のプロレスファンのようで、本作を読んでいると、プロレスの歴史上で起きた色んなシーンや出来事を下敷きにしているのを感じた。ただ、主人公含めて誰がどんなモデルになっているかは特定していないというのを、中上竜志に対するどこかのインタビューで読んだ

    • マトリックス レザレクションズ

      一昨年公開されたマトリックスの第四作、「マトリックス レザレクションズ」をamazon primeで見た。まだ有料だが、何だか半額になっていたので、ちょっと見てみるかと思って。 マトリックスは第三作の「マトリックス レボリューションズ」で、キアヌ・リーブス演ずるネオがスミスとの死闘を通じて死んだ、と言うのが私の考えだった。アメリカ映画で比較的共通するパターンであるが、主人公が命を賭けて戦い、勝利して、そして世界を救う、と言うプロットに乗っていると思う。これは仏教もそうだが

      • すべてのことはメッセージ 小説ユーミン

        世の中流行廃りはあるもので、10年くらい前に流行った「若者言葉」は、多くがダサい死語として消えて行ってしまっている。10年くらい前の映像などをテレビで見ると、流行語などを安易に使わない方が良いのでは無いかと思ってしまうくらい、かなり恥ずかしいし、とにかくダサい。因みにこの「ダサい」も若者言葉だったと思うが、これは定着している。 同様に定着している若者言葉に「ウザい」があるが、これは元々八王子方面の方言で、それが都心に若干東遷し、若者の間で流行って、全国に広がったとのことだ

        • クリント・イーストウッド ミリオンダラー・ベイビー

          随分前の映画だが、Amazon Primeでクリント・イーストウッドのミリオンダラー・ベイビーを初めて見た。 女子ボクシングの話と言うのは知っていたが、後半は自己呼吸も出来ず全身不随となった、ヒラリー・スワンク演ずるマギーの尊厳死を扱っている。こんな話だったとは知らなかったが…、見ながら、普通のアメリカ映画とはちょっと一線を画している、と感じた。 ウィキペディアを見ると、撮影コストも期間も中規模(3000万ドルで…?)の割に、興行収入は全世界で2億ドルを超えたようで、

        中上竜志 散り花

        • マトリックス レザレクションズ

        • すべてのことはメッセージ 小説ユーミン

        • クリント・イーストウッド ミリオンダラー・ベイビー

          平岡聡 〈業〉とは何か

          業は「ごう」と読む方の業で、「業が深い」とか「業火に焼かれる」とか、何ともネガティブな印象がある。ただ、「業」だけ取るとネガティブでもポジティブでも無い。業はサンスクリットの「カルマン」から来ている。カルマンは日本語では「行為」であり、これなら「作業」とか「業務」とか、普段我々が使っている言葉に直結していて、分かりやすい。 これを「ごう」と読むと途端に難しくなるが、「ごう」と読む業を使う言葉の中で、最もポピュラーなものの一つが「自業自得」と言う四字熟語で、この「業って何だ

          平岡聡 〈業〉とは何か

          オリバーストーン JFK

          コロナの影響か、家で映画を見ることが少し増えている。昨日はケネディ大統領暗殺事件の真相に迫るクレイ・ショー裁判を扱った、JFKを見た。上映時間3時間半以上に渡る大作だ。 この映画の公開は30年前の1992年で、高校2年の終わりだか高校3年の始まりだかに、映画館に見に行った。映画は人並み以下程度しか見なかったが、私は「映画は人気が下火になってから、可能な限り空いている映画館で見る」と言う主義だった。しかしこの映画に関しては、友達からまだかなりヒットしている時に行こうと言われ

          オリバーストーン JFK

          ミシェル・クオ パトリックと本を読む

          丸善のみなとみらい店の広大な店内の中で、ノンフィクションのコーナーは本棚一つ分しかない。しかし、そこに並んでいる本は、書店の選球眼の良さを物語っている、ような気がする。そこで手に取った、パトリックと本を読む、を読んだ。 この本は米国南部のアーカンソー州の、黒人生徒ばかりの底辺校で、台湾系米国人女性のエリート法学生が国語教師をすると言うもので、著者はこの台湾系米国人のミシェル・クオだ。幼い頃から学業優秀で、学部はハーバードだし、大学院もハーバードのロースクールである。この学部

          ミシェル・クオ パトリックと本を読む

          長谷川晶一 詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間

          浪人もしたので「大学受験生」を2年間私はやったのだが、それが1992年と1993年である。もうだいぶ記憶も摩耗してきているが、この2年間は世間的には皇太子(現天皇)の成婚があったり、貴花田と宮沢りえの婚約→解消、さらに1993年はJリーグ開幕およびドーハの悲劇と、それなりに色々あった。 そして、この2年間の日本シリーズは、西武とヤクルトがともに日本一を分け合った。球史に残る頭脳戦かつ死闘であり、30年近く経った今も語り継がれている。あの頃死闘を演じたチームから、ソフトバンク

          長谷川晶一 詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間

          青山文平 かけおちる

          時代は寛政期で、西暦で言うと1789年から1801年と、江戸時代のそろそろ後半だが、まだまだ開国の機運も全く無い「江戸時代ど真ん中」である。江戸時代は恐らく日本の歴史上最も何も無かった時代のように思われ、私も殆ど印象が無い。その時代を背景に描かれたこの「かけおちる」は、そんな江戸期の恋愛小説というか、人を愛するというのはこう言うことなのかな、と言う小説だった。 主人公である阿部重秀は、東北の小藩である柳原藩の、齢六十手前の執政である。執政とはその藩の職位の中における家老・

          青山文平 かけおちる

          新田次郎 武田勝頼

          新田次郎の本は特に山岳小説をよく読むが、新田次郎は武田信玄と武田勝頼の伝記小説を書いている。武田信玄に関しては、大河ドラマの原作にもなっていて、20年くらい前に読んだことがある。 武田信玄における書き様から、新田次郎は武田勝頼に対しては好意的な印象を持っていることが伺えた。武田勝頼は武田家を滅亡に導いた愚将と言うイメージが私にはあったので、これは意外だった。勿論、小説が史実と全て一致していることなどは無いが、読んでいて印象が変わったのは確かである。 新田次郎の武田勝頼

          新田次郎 武田勝頼

          溝口敦 「細木数子 魔女の履歴書」

          先日、天寿を全うしたと言って良い細木数子であるが、彼女を表舞台から退場させたと言われるのが本書、のようである。なんでこんな本を読んでいるのか…と思いながら、読み終えてしまった。 著者である溝口敦は、特にヤクザ系のノンフィクションで名高いライターである。とは言え、私はこれまで、溝口敦の著作は読んだことが無い。溝口が細木数子を扱うのは、週刊現代の編集部から連載を頼まれたからであり、元々興味があったわけでは無いようだ。ただ、連載をするのに取材を重ねた結果、これはかなりの人物と言

          溝口敦 「細木数子 魔女の履歴書」

          川田利明 開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学

          世田谷区で10年以上前、ある一人のレスラーがラーメン屋を開業した。私が好きなレスラー、川田利明である。店名は、麺ジャラスK。その川田が、ラーメン屋経営の苦闘を語った書籍を出し、買って読んだ。 タイトルが長い。 "開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学" である。 ビジネス書はあまり読まないのだが、これは川田の本と言うことで、手に取って読んだ。 数年前、台風が首都圏を直撃

          川田利明 開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学

          2017年2月19日 沈黙映画鑑賞

          映画「沈黙 -サイレンスー」を、遂に見に行った。と言うのも、そろそろ公開も終わりというタイミングに、早くもなってしまっていることに気付いたからだ。 先週夕方、会社の自販機コーナーで夕陽をバックにした富士山を眺めつつ休んでいたとき、(前に私のチームで庶務をしてくれていた)Fさんもう沈黙見たかな、とふと思って、席に戻ってからメールを打ってみた。 Fさんは映像翻訳の仕事に若かりし頃から挑んで、ウチに派遣としてやって来ていたが、もう一度チャレンジしたいと、ウチを辞めて行った人だ。

          2017年2月19日 沈黙映画鑑賞

          人間交差点

          学生時代に文庫版として買った人間交差点を、何冊か今も持っている。連載自体は1980年から1990年までだったらしいので、連載時のマンガをリアルタイムで読んだことは無い。奥付を見ると、私が今持っている小学館マンガ文庫版の発行は1994年だから、大学1年の時に買ったものだと思う。 私が買った時も既に物語的にはやや古くて、今読むと今から40年前前後の日本の状況が分かると思う。連載は連載だが、基本的には一話完結で、しかも毎回物語も登場人物も全然違うので、連載だが単作が連なっている

          人間交差点

          山田洋次 息子

          人生観に影響を及ぼす本とか映画というのは、誰にでもいくつかはあると思うが、この「息子」は私にとってその中の一つだ。1991年公開であるが、私がこの映画を初めて見たのは1993年の暮れだったと思う。大学受験浪人時代の当時、勉強ばかりしていた中で、数少ない気分転換が近所のツタヤで借りてきた映画のビデオを見ると言うもので、毎週末に最低一本は見ていた。かなり古い名作も見たりしてたため、この浪人時代は勉強以外の人間的成長が完全停止状態だった中で、映画を見る目は少し肥えたと思う。でも、大

          山田洋次 息子

          The POWERFUL and the DAMNED

          2005年から2020年まで、英国の高級経済紙であるフィナンシャルタイムズ(FT)の編集長を務めた、ライオネル・バーバーの日記的回顧録を読んだ。ページ数は600ページ弱で、かなりの大著であるが、寝る前とかにちょっとずつ読んで、ようやく読み終わった。 内容的には、筆者が編集長に就任してから退任するまでの日々が書かれている。と言っても全日書かれているわけでは無く、特に書くべきことがある日の記録が綴られている。邦題は「権力者と愚か者 FT編集長が見た激動の15年間」であり、特に

          The POWERFUL and the DAMNED