くやしいくらい春だった
片側が崩れ落ちた道路に積まれた土嚢に、カラスノエンドウが青々と生い茂っている。瓦礫の散らばった畑の真ん中で、まるまると太ったキジが声高らかに自分の縄張りを主張している。夕方になると、テント村に姿を変えたグラウンドを横目に、陸上部の中学生たちが空き地で練習を始める。
全壊した家屋の、もう膝下ほどの高さしかない1階部分を覗き込むと、台所の床に転がったタマネギが静かに芽吹いていた。
桜が咲いて花見をして、だれかの門出を惜しんだり祝ったりもして、なんとなく自分に与えられた季節をそれ