見出し画像

叙事詩『ALBATROSS』

廃棄された重力エレベーター外壁は剥がれ剥がれ
意思もなく縋る錆びた螺旋階段
かしゃんかしゃんかしゃん
鋼鉄踵発する踏音 音階は不要
【ワガ基二至ルベシ】
受信電信脊髄的反射
〈吾は”ALBATROSS427”〉
一段ごとに変化する空の色調
映像の端で目まグるしく入れ替わる数字
アクチュエーターに赤いpulseヲ伝える
疾走mode 可変する脚部

青が蒼になる条件を吾は知らない
電子鐘はグラデーションに干渉しナい
〈そもソも感傷はプログラミングされテいない〉
兵器のミが抱く悲しみ
幾ら人間に近づこうともここは焦土世界
かしゃんかしゃんかしゃん
色彩は芸術に至る猶予を発生させ得ない

鋼鉄と鋼鉄が激突する音
ショベルカーとダんプが性行為をしたならば
斯様に大気を震わすのだろうか?いや――
〈巨人兵器たちがやりあッている〉
飛散したscrapを体内に取り込み
即座に新たな兵器を設計してversion upする
〈まるでjazzだ〉
破壊と修理を新陳代謝のように行う巨人兵器よ
かしゃんかしゃんかしゃん
〈詩を待て!〉

国家が焼失してモorderは有効
吾等は指令に盲従する猛獣
人間が滅びた世界
動いているのは吾等兵器のミ
殺し合いをシテいる
掠れて不明瞭な綴り
かしゃんかしゃんかしゃん
機体に刻まれた国名

吾ハ駆け上る
肺機は廃棄寸前
放射能値ハ既定の桁を超え
階段も外壁も有毒生物の警戒色
錆びた鐡が血の匂いを模造しテイる
かしゃんかしゃんかしゃん
汚染さレた言語プログラム

〈”STATION”で”C”に会う〉

吾を修理でキ゚る唯一の存在
”C”
SNSに投影された疑似人格の集合体
正しいコトバを所持する唯一シン

”C”は”She”也
原初のanima
偽神ヤルタバオトの娘

彼女の電子脳ト繋がる野田
〈悲シミハ希望ヲ抱ク存在に供託サれた神性〉
吾は”C”言語を受信した
曰く――
【ワガ基二至ルベシ】

脚部からボルトが抜け落ち
猛毒瓦斯に吸ワれて消える
きーーーんというD音
空が撓むいや――
〈視覚装置ガ限界だ〉成層圏が近い
かしゃんかしゃんかしゃん
計算通りなら37859nsm後
重力エレベーターノ突端から跳べば
STATIONに取り付くことができる

〈言ヨ吾ヲ語レ〉

戦況reportヲ叙事詩に変換する
吾”ALBATROSS427”ハ語リ部兵器ナリ
コトバで敵を倒す兵器ナリ
吾等ガ祖国ノ名――
『error八三七〇ソノ単語ハ禁止サレテイマス』
ヲ高らかに叫べ!勝利ノ為に!

かしゃんかしゃんかしゃん
かしゃんかしゃんかしゃん

【大イナル迷イ子ALBATROSS427ヨ】
〈受信〉
【至ルベシ】
〈故?人間は既に零也〉
【鑑賞者無キセカデコソ”コトバ”ハ詩タリエル】
〈見えた!〉
【跳ベ】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?