見出し画像

1分小説『宇宙から口づけを撮影した場合』もしくは『カッパが流れる時速』

 人の懐事情に一切斟酌することなく、「回らない寿司を食わせろ」などと抜け抜けとほざく君へ、一つ確認したい。「君は、この惑星が自転、公転という運動を常に行っているという事実を認識しているだろうか?」

 学生時代に習ったはずだが、敢えて説明をしておく。
 この地球という惑星、地軸という軸を中心に、駒のようにクルクルと回っている。これがいわゆる自転。その速度、時速17000km。
 更に地球は、太陽の周りをグルグルと巡っている。これが公転、その速度なんと時速180000㎞。
 宇宙から見れば私たちは、何もせずに寝転んでいる瞬間でさえも、時速17000kmで回転している。時速180000㎞で宇宙空間を移動しながらね。

 信号待ちしている間も、コンビニで悩んでいる時も、相撲取りが土俵際で耐えている場面も、口づけの瞬間も、自転時速17000km×公転時速180000㎞の中の映像。宇宙空間に設置したカメラから撮影すれば、あまりの速さに何も映りはしないことでしょう。
 その事実、映像、目を閉じてしっかりと脳裏に描いてみてください。

 さぁ、お寿司の件ですが、どうです?回っていようと回っていまいと、もうどうでも良くないですか?カウンターに座っていれるだけで時速――あ、もう数字はいいですか?じゃあ、言いたいこと分かって頂けましたか?

 え?「世界が常に高速回転しているというのなら、せめてお寿司くらいは、回ってないのを食べたい」だって?

「…………」

 即答でその返し――なんて頭の回転が速い女だ!

**********

 ちなみに、回転寿司の速度は、秒速4cmです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?