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散文詩『僕は永遠に右折できない』

 僕は永遠に右折できない。
 片側二車線、信号機は無い。手前の2車線、右から途切れることなく車がやってくる。多少途切れたとしても僅かな猶予しかない。左折は出来たとしても右折は不可能だ。向こう側の斜線もかなりの交通量。もうすでに3年は、中央分離帯の植え込みの隙間を睨んでいる。
 手前の車線と、向こうの斜線。僕の車が右折できるタイミングは、永遠に来ない。そう、永遠に――。
  
 永遠なんて存在しない?いや、永遠は偏在する。
 注文した料理が来ない。病院の待合室で呼ばれない。自動車の違反者講習終わらない。
 政党が掲げた公約が実行される。貸した金が返ってくる。痩せるサプリの効果が表れる――あらゆるものが、永遠の向こう側にある。

 いや違う。

 違うんだ。それらはすべて、永遠に擬態しているだけだ。永遠なんて存在しない。そうだろ?

 初めて結ばれた夜、薄明りの中、お互いの輪郭を確かめ合うように触れ合い、誓い合った。でも、あれは永遠ではなかった。あんなに永遠に思えた感情さえ、永遠ではなかったんだ。

 きっとこの世界に、永遠なんてない。いっそそう信じたい。でも多分僕は、永遠に右折出来ない。そんな気がする。
 君は大丈夫?ちゃんと左折できている?向こう側で、絶望していない?

 君のいない助手席を眺める。あ、この空白は永遠だ。そして、君への愛も、悔しいけど永遠。
 ここに今、永遠が座っている。半分だけ座っている。いつまでも右折できずに、半分だけ、座っているよ。
 

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