見出し画像

気の合わない夫と私と映画のはなし

私には13年連れ添っている夫がいる。
交際期間は何年だっただろう。
もう覚えていない。

彼と私を結びつけたのは漫画と映画だった。

当時私には好きな人がいた。

随分と年上のアルバイト先の先輩で、初めて自分から猛アタックした相手だ。

そんな時、その会社に正社員として入ってきたのが夫だった。

私は彼になんの興味も無かったのだが、友達がセッティングした飲み会に彼が来た。

彼は全くもって好みではなかったのだが、やたらと気が合った。

映画に詳しく色んな映画を教えてくれた。

飲み会のあと彼がバガボンドを貸すと約束してくれた。

スラムダンク好きの私としては読んでみたかった漫画だ。

当時癒し系に憧れていた私は、ボサノヴァやらイルカの声やらを聞きながら眠りについていた。

彼もイルカの声に興味を持ったらしく私は漫画の代わりに彼にそのCDを貸した。

そんなこんなで私たちは仲良くなった。

その後、私の友達が彼を気に入り私はその子と彼をくっつけようと頑張っていた。

数ヶ月後、なぜだかその友達は同じ飲み会に来ていた彼の先輩とスピード交際をはじめ、私は恋焦がれていた先輩に人生初めての失恋をした。

完全にあまりものとなった私たちは数回のデートを重ね付き合うことになった。

初めてのデートはもちろん映画館。

千と千尋の神隠しを見た。

それから何度一緒に映画館に行っただろうか。
クリスマスも誕生日も事あるごとに映画館に通った。

あれから数十年たった今も私たちは映画が好きだ。

しかしあの時とは全く違う。

交際して数年経ってお互いの趣味の相違に気づいた私達は同じ映画をみることをやめた。

一緒に映画館に行き、一緒にカウンターに並び「僕はこれ」「私はこれ」と別のチケットをオーダーする。

カウンターのスタッフさんが毎度少し混乱した表情を浮かべるのを見るのが好きだ。

お互いに別々の映画をみた私たちは、また映画館のロビーで落ち合い「私のみた映画の方がおもしろい」「いや俺だ」とここでも気の合わない会話をする。

余談だがあのとき彼に貸したイルカのCD。
彼は一度も聞いていないらしい。

イルカの声に全く興味もないしそんなものを聞く意味もわからなかったけれど、私の気を引くために興味のあるフリをしていたらしい。

酷い話である。

そんな私も今となればイルカの声を聞いていた自分が不思議である。

そんな私たちだが先日久しぶりに映画館で肩を並べた。

映画『THE FIRST SLAMDUNK』

気の合わない私たちの共通の好き。

それが漫画スラムダンクだ。 

お互い別々の場所で過ごした青春時代に夢中になった漫画。

これまで夫婦で凄い連携プレーが取れた時には「いまの山王戦の桜木と流川並みだったよね」なんてハイタッチを交わすこともあった。

名言当てクイズやら実写化に思いを馳せては「絶対ダメだ!実写化反対!」なんて会話をどれだけしただろう。

映画の感想はこちらのnoteに


最近では口もほとんど聞かず、一緒に出かけることも減ってきた私達が2度も映画館に足を運び語り合う。

そんな経験をくれたのはかつて私たちを結びつけてくれた漫画と映画だった。

次一緒に映画館に行くのはいつになるだろうか。
それまでまたお互い別々の映画をみながら歩んで行こうと思う。

雨音

#映画にまつわる思い出  

ちょっとかわった女の日々のエッセイはこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?