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ティーポット就任記者会見(全文)

2022/09/15
ガラス製ティーポット急逝を受け、15日、新たに陶器のティーポット、トキオ氏が信任された。以下、会見内容

(全文)

前任のポットへの弔辞

まず会見を始める前に、この場を借りて改めて、故・ガラス製ティーポット氏に哀悼の意を表します。
夕食どきの喧騒の中での机からの転落、あまりにも一瞬の出来事であったと聞いております。
生前、茶器の代表格であることからチャッキーの愛称で呼ばれていたそうですが、我々ティーポットが愛称で呼ばれることはあまりない事です。
それほど愛され、必要とされてきたポットだったということだと思います。

「2代目となれること光栄」

半年というのは早すぎる別れ、天はあまりにもむごい運命を強いました。
遺族の皆様、並びに関係者各位の悲しみ、やるせなさを思うと言葉がありません。
また、悲しみも癒えぬうちに、私を後任に推してくださったこと、心より御礼申し上げます。

この度2代目ティーポットとして正式に信任を賜り、身に余る光栄であるとともに、謹んでこの大任を全うする所存です。

当局の判断「評価すべき」

さて、古来より紅茶は重要なインフラでした。
悲しみの中にあっても、紅茶が停止されることはあってはなりません。
そして、周知のとおり、紅茶を淹れる上で我々茶器、とりわけティーポットは重要な役割を担います。
この記者会見の前にも、すでに私は朝食の取り仕切りを行いましたが、紅茶の安定供給は止めてはなりません。

この紅茶に対する当局の迅速な判断、柔軟な対応は、私は評価すべきだと考えております。

陶器の真髄は、保温し、守ることです。
次の時代の紅茶を取り仕切る者として、よく茶葉をジャンピングさせ、タンニンなき見事な紅茶ライフを作ります。
以上をもって、所信に替えさせていただきます。

質疑応答

ー後任人事にあたり、他候補者についての情報は開示されていないが、他にどのようなティーポットが候補となったかわかる範囲で教えてほしい。

「人事については、私は選ぶ側ではなかったのでよく知りません。ガラス製、陶器などが候補になったと聞いております。」

ー推薦があったとき、迷いはあったか。

「ありません。」

ー職務を行う上で不安な点はあるか。

「それを現時点で思うことはないと思います。私でなくてもポットならば。プロなので。」

こだわりと強み

ー他のポットに負けない自分ならではの強みは何か。

「容量と、茶葉のジャンピングからなる濃い色と味。
とりわけミルクティーに合う茶本来の甘味については、自分なりにこだわりを持ってやってきました。」

ー他に強みはあるか。

「デザインに強みがあります。二色での配色は食卓を彩るときに良い味を出すと考えています。」

供給についてはこれまでと変わらないことを強調

ーこれまでガラス製のポットであったところ、陶器に代わることで、紅茶供給に変化はあるか。

「それは供給の頻度のことですか?味のことですか?」

ー供給全般に関すること。とりわけ飲み方についての変化はあるか。

「『供給全般』が何を指すのかわかりませんが、頻度は変わらないと思います。」

ーでは飲み方は変わるか。

「飲み方はミルクティーしかないと聞いています。私が決めることではありませんが、歴史的、実務的に見て今後急にストレートで飲むということはまず無いのではないでしょうか。」

透明性「長い目で見て」

ー透明のガラスから、言葉を選ばずに言えば不透明な陶器に変わった。今後は飲みながら残量がわからないことになるが、その点、どのように残量を周知していくか。

「そのあたりは投機的に見ず、長期的な視座で見てもらえば、見えてくると思います。」

ー投機的、とはどういう意味か。

「短期のスパンではなく、長い目で見てほしいということです。紅茶の残量については、持ち上げたときの重さを確認することで推測っていただける他、蓋を開ければわかります。」

ー蓋は熱すぎないか。

「熱伝導性は金属ほどでは無いので問題なく持てると思います。」

コーヒーは不明

ーコーヒーを淹れる予定はあるか。

「すみません、よく聞こえませんでした。何を淹れると?」

ーコーヒーです。

『それを私は知りません。すみません。」

ー豆を煎って挽いた飲み物。

「豆ですか。見当もつきません。食器ではなく茶器なので。」

"1枚の格差"については明言避ける

ー現在、茶碗、スープ皿、ドンブリについては各1枚ずつしかない。それに対し、紅茶関連はティーカップ2個、ソーサー2枚であり、ポットの後任は今回のように即日決定された。通常の食器類が100均で購入したものであるのに対し、茶器は紅茶専門店。この"1枚の格差"問題についてどう考えるか。

「食器類のラインナップについてはお答えする立場にありませんので答えられません。」

紅茶は嗜好品ではなく「インフラ」と強調

ー紅茶は嗜好品かと思いますが、その関連に食事より多くの資金を投じることについてどのように考えるか。

予算の部分については、ティーポットが関知する部分ではありませんので答えられません。

ー紅茶は嗜好品であることは認めるか。

冒頭述べたとおり紅茶はインフラです。1日の活力は紅茶から。少なくとも我々茶器は人間の生活の基盤を支えている自負を持って職務にあたっています。

ー紅茶には人を動かし太らせるだけの栄養価はないが、それは嗜好品ということでは無いのか。

この場で嗜好品の定義について議論するつもりはありません。電気も水も人を太らせるものではないが当然にインフラとされているところ、紅茶も同様と考えます。

前任のように愛されるポットでありたい

ー最後に紅茶を待つ世界に対して改めてメッセージを。

「混沌とした世の中ですが、我々はいつ何時であれ紅茶を淹れます。ポットだけではなく、茶器であれば皆、どんな時でも必ず茶を淹れるでしょう。
故人曰く『願い望むところ必ず紅茶あり』と。
前任のガラス製チャッキー氏の如く愛されるティーポットであることができるよう、努力して参ります。
よろしくお願いいたします。」


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