見出し画像

逃げのアカウント

 10/23〜11/6の2週間、白黒-1グランプリという人力舎のお笑い賞レースに参加しておりました。

※詳細は以下の記事に記載しております

 僕らのネタ動画をご覧になっていただいた方々、ご協力本当にありがとうございました。

 結果はというと、6位で決勝進出ならずでした。
 (上位3組が決勝進出)

 動画を人より多く見てもらうのって難しいですね。自分自身何か結果を残していたり、人に見てもらう魅力がないと再生してもらうのは難しいなと実感しました。


 えー訴求力の話をする際に切り離せないのがSNSでありまして、約1年前まで私はSNSをやっておりませんでした。先に伝えておくと、私は芸人という職業についてはおりますがテレビに出ることに関しては全く興味がありません。正確に言うと漫才やコントを披露するネタ番組以外の番組(トーク・ロケ・クイズ番組など)に出演したいという思いが皆無であります。(そういう芸人は一定数いるはず。多分。)

 賞レースで優勝すること。それ以外に今は目標はありません。自分のイメージとして近いのは高校球児だと思っています。勝利以外の価値観を持ち合わせず、ただ強さを証明するために甲子園優勝を目指して戦う高校球児。その先のドラフト会議やプロとしての進路には全くもって興味がありません。ゆにばーすの川瀬さんがM-1優勝したら芸人引退して世界遺産を見て回りたいと言っていますがそれに近いものがあります。(あ、でも単独ツアーはしたいから川瀬さんより意志は弱い)

 SNSでいうと、好きな芸能人をフォローするプライベートアカウントは持っていましたが、別に呟きたいことなどないし、Aマッソも黒帯もSNSやってねぇからそっちのほうカッコよくね?というダセェ理由で芸人としてのアカウントは持っていませんでした。(私はカリスマが好きだ)

 しかしそんな折に転機が訪れます。約1年前、相方の結婚式に出席した時であります。同じテーブルについた相方の女友達に

 「え、なかちゃん(相方のあだ名)の相方さんなんですよね?え、YouTubeってやってます?」
 「あ、やってないです。」
 「え、じゃあTwitter(当時はイーロンマスクがしゃしゃり出てくる前)やってます?」
 「あ、やってないです。」
 「じゃあインスタは?」
 「やってないです。」
 「TikTokは?」
 「やってないです。」
 「え、どういうつもりですか?」

 祝いの場で初対面の女性に説教された。芸人の分際でSNSをやっていないことを説教された。後から聞いたらその女性は芸能人でないのに関わらずSNSで数万人のフォロワーがいるらしい。令和におけるSNSの重要性を熱弁された。

 まぁ適当に流しとけばいいかとその場はやり過ごしたが、結婚式の帰り際、別の女性に呼び止められ、

 「あ!なかちゃんの相方さんですよね?写真撮ってもらっていいですか?」
 「あ、全然いいですよ。」
 パシャッ
 「ありがとうございます!あ、ちなみにオサナイさんYouTubeやってます?」
 「あ、やってないです。」
 「あ、Twitterは?」
 「やってないです。」
 「え、インスタは?」
 「やってないです。」
 「TikTokは?」
 「やってないです。」
 「え、どういうつもりですか?」

 再び説教された。RPGの村人くらい画一的な文言で説教された。人前に出る職業についておきながらSNSをやっていないことがこんなに否定されることだと思っていなかった。その女性もSNSで多くのフォロワーを獲得しているらしい。私の知らない間にこの世ではインフルエンサーが増殖しその発言力を高めていた。

 帰宅した私はどうしたもんかと一晩悩んだが、Aマッソ・黒帯を見習いSNSを始めないというプライドと、今後も説教を食らうストレスを天秤にかけた結果、アカウントを立ち上げることにした。(所詮その程度のプライドである。ストレスを振り払いながらカリスマぶって生きていく精神力はない)

 そんな"逃げ"のアカウントを立ち上げ、これで将来の説教リスクは回避できたと安堵していると、数週間後再び次の説教が舞い込む。

 「告知のツイートしかしてないじゃん。それ以外のツイートもしないとダメだよ。」

 再度ストレスが襲って来る。「人気者になりたい。売れたい。チヤホヤされたい。芸人とはそういう人種であり、そうあるべきだ。その為の努力は怠るべからず。」そう言われている気がした。村のルールを押し付けられるたび、私は村から距離を置きたくなってしまう。自分の心の内を説明するのも面倒くさいので、心を無にしストレスを受け流した。

 つい先日もマネージャーから「ネタを磨くのもそうですけど知名度をあげないとダメですね。知名度があると笑ってもらいやすくなるんで。」と忠告された。ツイートラインに流れてくる芸人のツイートを見ると、ライブや収録があるたびに共演者と写真を撮り感謝の言葉と共にSNSに上げることでファンを獲得している人が多い(若手ライブシーンで人気ある芸人は大抵やってる)。それを見ると偉いなと思うと同時に自分にはできないなと思ってしまう。(そもそも人気者になりたいという欲がないからだと思う)

 正直まだ自分の中で折り合いがついていない。
 『テレビに出る為に』『人気を得る為に』SNSを活用することが必須ならば、今後も告知しかしないだろう。
 ただ『賞レースで勝つ為に』SNSを活用することが仮に必須ならば、告知以外のツイートをし始める可能性もある。

 急にSNSで人気者との写真を載せ始めたら、「こいつSNSに飲み込まれたな」と思ってもらいたい。とりあえず今日も逃げのアカウントで告知だけし、ネタを作ることにする。


わざわざ読んでいただいてありがとうございます。 あなたに読んでいただけただけで明日少し幸せに生きられます。