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♯37 哲学対話を取り入れた道徳の授業 with 対話型AI 

 37回目となりました、天治郎です。今回のテーマは、「哲学対話を取り入れた道徳の授業 with 対話型AI」です。

(1)はじめに

 私は、道徳の授業に「哲学対話」を取り入れています。本年度は、その中に「対話型AI」を活用しています。

 道徳が教科化され、6年目となりました。どの学校でも、「考え、議論する道徳」へ、質、量ともに変換を図られていることででしょう。

 一方で、「考え、議論する道徳」とは、どのようなものでしょうか?「小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編」では、道徳教育において、「よりよく生きるために道徳的価値に向き合い、いかに生きるべきかを自ら考え続ける姿勢」を育成することが求められています。

 そして、道徳科では、授業の中で、「①道徳的諸価値について理解する」、「②自己を見つめる」、「③物事を多面的・多角的に考える」、「④自己の生き方について考えを深める」の4点を行うことによって、質的転換を図ることが求められています。

 つまり、「考え、議論する道徳」とは、「子どもが常に自己の生き方を見つめながら、みんなで多様な視点から話し合い、語り合うことを通して、自己のよりよい生き方を考えていく学習」と言えるでしょう。

(2)哲学対話と対話型AI

 他方、近年日本でも「哲学対話」を道徳の時間を中心に導入する学校が増えています。

 「哲学対話」は、答えのない問いに対してみんなでじっくり考えを深めるものです。道徳授業との親和性は、かなり高いといえます。「すぐに答えの出ない問題」、「思考力」、「自己を問い直す」、「納得解」、「誠実に価値に向き合う」といった点です。

 また、「哲学対話」は児童の問いに基づき対話するものであり、児童主体となって対話(ファシリテーターであり、ジェネレーターとして教師は関わる)するものです。

 さらに、教育現場でも「Copilot(Bing AI)」などの対話型AIの活用が話題になっています。対話型AIの特性に鑑みると、対話型AIを対話する一員、つまり、「協同探究者」と捉えることで、子どもたちにはない視点で議論が深められると考えました。心理的安全性の側面から考えれば、「話しやすさ」と「助け合い」の因子を高めることになるとも考えます。

(3)哲学対話を取り入れた道徳の授業づくり

 私はこれまでの実践を通して、哲学対話は方法論ではなく理念だと考えるようになりました。

 自由に考え、話し、お互いの意見を聞き合うことで、すぐに答えの出ない問いに対する自分なりの答えを見つける、こういった資質・能力は、今後の社会を生きる上で欠かせないものです。

 この資質・能力の育成は、心理的安全性が高い場であるからこそ成り立つものでもあります。

 岡島(2022)の立場に立ち、「問い」、「対話」、「終末」の3つの視点から授業を創っています。

 「問い」については、従来の道徳の授業とは違い、「教師が提示する教師主導の発問」ではなく、「児童が選び決め考えた問い」から議論をスタートすることとします。本当の意味で「考える」には、児童自らの問いが必要不可欠です。

 「対話」については、「教師が一つの答えや方向へ主導する対話」から、「児童自身が問い返し合う児童主体の対話」へと質的転換を図っています。そのため、これまでの授業を通して、問い返しのキーワードを意識できるようにしたり、問い返しをした児童を価値づけたりしてきました。

 「終末」については、「唯一解に主導し、教師の説話で締めくくる終末」から、「児童自身の納得解や暫定解と向き合う終末」へを意識し、自分なりの考えをまとめる時間をしっかり確保するようにしています。


3つの視点

(4)さいごに

最後までお読みいただき、ありがとうございます。次回に続きます。

【引用文献】
岡島幸恵(2022).小学校における哲学対話を取り入れた道徳授業の実践.哲学プラクティス.
文部科学省(2018).小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別の教科 道徳.廣済堂あかつき株式会社.

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