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2023年読んで良かった本(平安時代関連編)

まだ2024年が始まってまだ1ヶ月も経っていない!まだ2023年の振り返りをやってもいいはずだ!
というわけで、前回は2023年読んで良かった漫画について書きましたが、今回は書籍について書いておきたいと思います。書籍はいっぱいあるので、今回は中でも平安時代に関連する書籍に絞って書きたいと思います。
こうして目次を見てみると、今まで平安時代のことがずっとうっすら好きだったのによくも今の今までこんな大事な作品たちを読んでこなかったことよ…と思うばかりですね。2023年は本当に色々な作品に触れることができて良かったです!
(※一部、はてなブログに公開している内容と重複している部分があります。)


紫式部日記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典

源氏物語が大好きなのでこちらも読みたいと思っていたのですが、素晴らしかった!紫式部の自意識過剰気味なところや自尊心、生きづらさに共感できるところが多すぎる…! 一番共感したのは、帝の御輿が到着したときに帝にはほとんど目を向けず、御輿を担いで這いつくばる担ぎ手に注目して、あの人大変そう…でも私も女房の仕事ほんと苦労ばっかでつらい、私もあの人と同じだ…とか書いてるところ(笑)あの人私だ…からの突然の自分語り、仕事つらいアピ…私のTwitter(現X)かな???
最初は「女房の仕事やだ…」となっていた紫式部が、女房としてこうあるべきという理想を持って職場をこう変えていきたいといったことを述べ始めたりと、日記から見える紫式部の職業人としての成長みたいなのも良かった。日記から見える人の成長ってなんだか素敵だ。日記を書きたいなあと思いました。
ここからビギナーズ・クラシックシリーズの本を読んでいくことにしたのですが、このシリーズ、本の構成も、現代語訳・元の文章・解説という形で細かく解説がついていて良かったです!

とりかへばや物語 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典

女っぽい男君と男っぽい女君がそれぞれ男女逆転して育てられて…というお話。めちゃくちゃ面白かったです!けど、なかなかに「ええー!?」ってなる展開の連続。特に女君のことを男性だと思っている女君の友人・宰相の中将が最悪すぎる!女君の妻の四の君(女君は男のフリをしたまま女性と結婚している)を抱いて妊娠させたかと思えば、さらには女君が実は男ではなく女だったと知って妊娠させる!女女夫婦を揃って妊娠させるって…なんだこいつは!?という気持ちでずっと読んでいました(笑)ラストで宰相中将が女君は失踪したまま行方知れずになったと思い込んで袖を濡らして余生を送ってくれたことだけがすごい満足(笑)
女君と男君は途中で立場を入れ替えて本来の性別通りの役割に戻るのですが、女君側の苦悩は丁寧に描かれているのに対して男君側の話が少ないのが物足りなかった…。男君は女の姿をしているときは女として女主人の側に仕えて女主人を妊娠させてしまったり、女君と立場を入れ替えて男姿になった途端、女君が性的関係を抜きにした関係を築いてきた周囲の女性たち抱いたりしてなんか男女逆転を利用して周囲の女を抱きまくり!みたいなかんじでズルくない…!?性衝動・生殖機能の点についての男女の不均衡の話を書いてるのか…?と思ったりもした。何気に面白かったのが、女装の男君との関係性の兼ね合いか、女性の東宮が登場していたところ(しかも女官だと思っていた男君によって妊娠させられてしまう)。これって、よしながふみの男女逆転大奥ばりになかなか面白い設定じゃないですか…?なのに帝に男の子が生まれた途端サラッと出家してて残念…!もっと掘り下げて欲しかった!!
妊娠して宰相の中将の屋敷で宰相の中将を待つ生活を送るようになった女君が、男として生きていた頃には感じなかったが、男を待つ身になって相手を恨む心をに苦しめられるようになった、仏が女性を罪深い存在としたのはこのためなのだろう、というようなことを考えるシーンはかなり示唆深い気がしました。人を恨む心は女に特有なものではなく置かれた環境によるもの、ということですよね(解説にもありますが)?これは平安時代の物語としてはかなり画期的な考えな気がして、男女逆転モノの本作でこそ書けたことなんじゃないかな…?なんて思いました。
読んでて急展開の連続だったので驚きまくったのですが、女君の苦悩、女らしさ・男らしさと身体、女性の幸せとは?みたいなテーマについてかなり掘り下げて描いている感じがして良かったです。

和泉式部日記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典

和泉式部の恋人だった為尊親王が亡くなり、為尊親王の弟の敦道親王との恋が始まり…?という恋模様を綴った日記。一つの恋が始まってから一区切りつくまでの2人のやりとり、心の揺らぎ、駆け引き、決断、そういうものを丁寧に描いていて素敵だな。和泉式部の恋の手紙と和歌の素晴らしさに魅了された。ロマンチックでいじらしくて時に素直に恋を語ったり時に焦らしたりツンデレだったり、確かにこれは恋の名手…!
宮様もスマートでカッコいい。即興で連歌をするところ、和泉式部の手習いの5つの歌に宮様が即座に最初の言葉を合わせた5つの返歌をするところなんて特に素敵。
最後、私は宮様の家に迎えられ、正妻の方は出て行きました。みたいなかんじで終わるのがなかなか怖かった(笑)解説によると宮への世間の誤解・悪評を払拭するためにこの日記を書いたのではないかとされているけどこんな終わり方じゃ略奪愛に酔ってると取られても仕方ないような…!?
牛車の中でヤッちゃうとかいう衝撃的なシーンも印象に残りまくり(笑)世界最古のカーセッ◯スなんじゃない!?こんなことまで日記として文章に書いちゃうってちょっとすごいぞ和泉式部。

蜻蛉日記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典

一夫多妻の世で他にも妻を持つ夫を家で待つだけの女の苦しみ、夫への恨みつらみが詰まっていて全体的に鬱屈とした閉塞感が漂っている…。作者もなかなか強情な人で、素直になれば良いのにと思ってしまう場面もあるけど、夫・兼家は確かになかなか来ないし来たかと思ったら他の女のところへ行くために作者の家の前を素通りしたり、かと思えばいけしゃあしゃあと軽い感じで言い訳し、確かに許せなくても仕方ないか…。あと兼家って大河ドラマ「光る君へ」にも出てくる道長の父の、あの!?兼家はすごく社会と接している人であり、正妻の時姫も早々たるメンバーの母なのに作者の世界はただただ閉じられていて切ない。
全体的に、源氏物語って蜻蛉日記の影響を受けている部分が多いのかなと思ったりした。夫と別の女との子どもを養女として引き取ったら夫の弟が求婚してきて、養女はまだ幼いのでなんとか結婚を引き伸ばそうとしていたらそのうちに求婚してきた相手は別の人妻を盗み出して隠れる事件を起こしたから結婚は無しになったみたいなエピソード、いったい何!?物語より物語だな…。

更級日記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典

色々な日記文学を読んだけど、冴えないオタク女の私にはこの更級日記が一番身近なかんじで共感できる…!若い頃は物語にハマって信仰なんて無視、歳を重ねてそれを後悔…な様子が現代人でもわかるわかるって感じがして親近感が湧く。30代になってやっとちょっとしたときめく出会いがあるけど劇的に何か変わるでもないかんじとかもなんだかリアル。源氏物語で夕顔や浮舟といった中流階級から貴公子にみそめられるタイプのキャラクターに憧れているところも微笑ましい。当時って薫とかってやっぱ薫様素敵〜!みたいなキャラだったんですかね!?現代に生きる私の感覚で読むとかなりクズに見えるんだけど…!平安当時の源氏物語レビューもっと読みたいなあ。

源氏の男はみんなサイテー

これは本当にめちゃくちゃ面白かった!この本で大塚ひかりさんの源氏物語エッセイの大ファンになりました。
タイトルの通り源氏物語に登場する男たちに鋭い批判・ツッコミを入れていて、かなり痛快で面白いのですが、彼らはなぜそういう風になってしまったのか、親子関係、生育環境、時代背景から考察していて毒舌ツッコミ本というだけに留まらない深い内容でした。
光源氏や頭中将、薫や匂宮、夕霧や柏木などの主要登場人物だけでなく、朱雀帝、宇治の八の宮、髭黒、蛍宮、冷泉帝、玉鬘に言い寄ってきた大夫監、伊予介、浮舟の義父などなど、この手の話題で見ることがそんなに多くない気がするようなキャラクターに至るまで、出てくる男たちにことごとくツッコミを入れまくり、深く考察しているのも最高でした。(いやほんと、出てくる男出てくる男、みんな難アリなのよ…。)
そして一番共感したのは宇治十帖クライマックスへの解釈。浮舟が選択するラストに感じる女性にとっての救い、一方での薫の「僕って最後まで女には苦労させられるのよねー」と成長しない様子が気になってしょうがない、心配な気持ち、めっちゃわかる!と大きく頷きました。
他にも、男たちを語る上で紹介される当時の貴族や受領の金銭事情、政治的な背景、貴族・権力者同士の力関係などの背景知識も非常に勉強になる1冊でした。

平安人の心で源氏物語を読む

この本は本当に本当に源氏物語の副読本として素晴らしかったです!源氏物語の時代背景や背景知識がすごくわかりやすく解説されていて、理解が深まりました。
・天皇の子が源の姓を賜って臣下に降る意味
・光源氏は身分社会の敗者であること
・源氏物語が紫式部がこの物語を書いていた時代よりも100年近く前を舞台にした「時代小説」のような作品であること
・女房はどういう存在か、乳母とはどんな役割か…
など、源氏物語を通読しただけでは気づいてなかったことばかりで、源氏物語がますます面白く感じられました。
特に、この著者の方の解釈(主張)にあたるパートだと思いますが、紫式部が使える彰子の夫である、実在の一条天皇と中宮定子のエピソードと源氏物語をオーバーラッピングさせた解説が特に興味深く、説得力があって面白かったです!

嫉妬と階級の『源氏物語』

源氏の男はみんなサイテーでファンになった大塚ひかりさんの新しい御本!やっぱり素晴らしく面白かった。私も源氏物語を読んだ時に数ならぬ者=人として扱われないような者(主に召人)の存在にかなり面食らったので源氏物語が映し出す階級の格差についての考察は共感するところばかりでした。源氏物語全体を見渡したときに見えてくる「身分の低いヒロインが勝つ」や、「子供が親のリベンジをする」といった構造、宇治十帖の読み解きなど「なるほど!」と思うところが多くて全編うんうんとうなづきながら読めました。新しい視点も得られて、ますます源氏物語って面白いと思える1冊でした!

枕草子のたくらみ

清少納言が仕えた中宮定子と清少納言の絆、互いの信頼関係が美しすぎる!定子の人生は悲しみに満ちた悲劇的な人生だったのに、理想の皇后・定子の姿を描き続けた清少納言の定子への想い、カッコ良すぎるなあと思いました。清少納言には明け透けな物言いのパリピ的なイメージを持っていたけれど、和歌や容姿に自信がない側面もあって枕草子の中では常に自分を道化として描いていたと書かれていたのが意外でした。でも清少納言が自信満々な人物というわけでなかったからこそ、枕草子の「定子の身の回りで起こった悲劇、悲しいこと、定子サロンの凋落は一切書かず、素晴らしい部分だけを書く」というコンセプトに清少納言の強い意志を感じて感動する。
この世の悲しみ、理不尽を物語を通して書き続けた紫式部もすごいと思うけれど、清少納言の在り方もかっこいい!!真逆のアプローチで面白いなと思いました。

平安女子は、みんな必死で恋してた

イタリア人の著者による平安文学についてのエッセイ。WEB連載も好きだったので書籍でも読みました。
作者の鋭い視線と毒が冴え渡っててめちゃくちゃ面白い!ちょっと見方が意地悪すぎ!?と思うところもあるけど、クセになる。イザベラ流超訳も面白い!
特にお気に入りの章は蜻蛉日記。作者の藤原道綱母のことを「みっちゃん」と呼び、親しみを持ってみっちゃんの「うちの夫は最低!」をテーマとした苛烈な書き振りにツッコミまくり。思わずクスリときました。「とはずがたり」はこの本で初めて内容を知って読みたくなった!


以上、2023年読んで良かった本(平安時代編)でした。2024年は平安時代をテーマにした大河ドラマ・光る君へも始まり(2話まで見ましたがほんと〜〜〜〜〜〜に面白い)、ますます平安時代のことを勉強したいなという気持ちになっています!引き続き面白い本があればチェックしていきたいです。


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