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あさきゆめみし

自分のことを
自分であると
認識することさえ
おぼつかなくなってしまったあの人は
小さいころ
何になりたいと
思っていたのだろう

足が速かったらしい
そういったことを活かして
なんて、考えていたのだろうか

家業を継ぐ、それが、当然
というような環境だった
それ以外の選択が、なかった
疑問を持つことも、なかった

いや、疑問は
持っていたのかもしれない
その思いを隠し
家業に精を出していたのだろうか

そうすることで
本当に自分がやりたいのは
これなんだ、と
思うようにしていたのだろうか

本当の気持ちを
見ないように
していたのだろうか

あの人が、いま
懸命にしていることは
生きることだ

生きるため
口に運ばれてきた食べものを
がんばって食べる

ひと苦労なのだけれど
家のトイレにも
がんばって行く

そうやって、今日を
精一杯、生きている

明日も、あの人は
がんばって
生きていく

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